竹田小学校が理科について特に力を入れて研究しようとしたのは昨年度の4月からのことであった。兵庫県北部地区の研究会を控えているからと言うのが正直な理由だが,これを機に学校全体で理科を研究し,深く学んでいこうという空気が職員にはあった。そこで次のテーマをもとに研究を進めることにした。
主体的,協働的な学修により,児童自らが創り上げる授業の研究
-ICTと発表ボードを用いた,視覚化と共有化ができる理科授業-
自分たちで課題を考え,自分たちで実験を組み,結果を出し,考察をする。従来の検証型実験では無く,材料も自分たちで揃え,条件も設定するまさに主体的な関わりである。その際にICTもしくは発表ボードを用いて他班との比較・共有ができるようにしていく。そういった自分たちで創っていくという空気を盛り上げるためにも,校内の理科環境を整備し,常に「不思議だ」「調べたい」そう思える雰囲気作りを提案した。研究仮説として
学習環境を整備し,児童自らが主体的に課題を見つけ,取り組める授業を
展開すれば,科学的な見方,考え方ができる子が育ち,深い学びにつながる
を掲げ,全職員で取り組んだ。
職員室前の廊下は児童が一番よく通るところであるのと,管理が比較的しやすいので,ここを「サイエンスストリート」と名付け,季節や授業内容に応じた展示物を置くこととした。内容は以下の通りである。
裏庭のパノラマ写真と野草の実物
カブトムシ飼育中
モンシロチョウのサナギを展示し,羽化しそうな場合は教室に持ち帰り,リアルタイムに観察させる。
メダカクイズ
メダカ発眼卵 顕微鏡映像
科学クラブで作った簡単モーターの実機を展示し,誰でもすぐにモーターを作ることができる。
科学クラブで作った無限鏡を展示し,鏡とハーフミラーでLEDが無限に映る現象を体感できる。
次の外的環境の充実の内容であるが,裏庭の野草を16種類採取し,その名前や謂れなどを書いたカードと裏庭全体のパノラマ写真をサイエンスストリートに用意し,遊びに行ってみて見つけた野草があったら,指定のシールをパノラマ写真に貼る。シールが増えると自分も見つけたいと思う子が増えるようになる。
校内樹木のマッピング
月の満ち欠けと月齢
立体月齢早見盤
冬季は観察する生き物も少ないため,頭を使うT字パズルを2基置いて,子どもたちに挑戦させる。Tの文字をあしらった4ピースパズルをスチレンボードで製作し,「ホームベース型」「矢印型」「ロケット型」「三角屋根の家型」など12種類の形が組める。大人でも難しいこのT字パズルを何度も解いた子に賞品として進呈する。
野菜の花と実の階段掲示
春が中心であるが,教科書にあるような野草が多く咲いている裏庭で一つずつ同定し,その名前が言えるようにカードに書いて写真をつける。それが裏庭のどの位置にあるかをパノラマ写真で一覧にできるようにする。教員が同定できると野草観察に対して自信をもって行えるので,その回数も増える。
樹木の同定は野草に比べて難しく,専門家を招聘することにした。校内の樹木をお世話頂く樹木医にどの木は何という名前かを教えてもらい,写真や地図とともに記録する。樹木名を職員で小さく貼っていき,それを見て児童の代表がカードにしていく。カードはラミネートしておき,樹木に取り付けるとともに同じ物をサイエンスストリートにパノラマ写真とともに置く。これも指定のシールを貼ることで少しでも興味を持ってもらう。係の児童はiPadを持ち,樹木と葉の写真を撮り,調べた自分らもカードに載せる。さらにiPadを用いて,ウェブでその木のことを調べ,まとめてカードが完成。プリントアウトしてラミネート。パンチで穴を開け,紐を通して樹木に結わえる。
農園の整備
花と緑のふれあい教室
このように学校の内外の環境を理科的に整備することで,子どもたちは自然や科学に対し興味を持ち,授業で行う理科についても積極的に関わろうとし始めた。後編では子どもたちの好奇心を揺さぶる科学的なイベント(サイエンスフェスティバル)と,これらを踏まえた上での「自ら創り上げる理科授業」について述べていきたい(後編に続く)。