学習指導要領では,理科の学習において,自然に親しみ,見通しをもって観察・実験を行うことを通して,問題解決の力を育成することが重視されている。また,「主体的に問題解決しようとする態度」を養うためには,実感を伴った理解を図ることが大切であり,児童自身が自然事象に直接関わる体験活動の充実が求められている。
しかし,天文分野の学習は,夜間の観察が必要となることや,天候,地域環境などの条件に左右されやすいことから,継続的な観察機会を十分に確保することが難しい。加えて,授業では教科書や映像資料による学習が中心となりやすく,児童が実際の星空に触れる体験が不足しがちである。そのため,天体の動きや宇宙の広がりについて,実感を伴って理解することに課題を感じていた。
そこで,本実践では,星空観望会を実施し,実際の星空や天体を観察する体験を通して,児童が理科学習と実体験を結び付けながら学び,天体への興味・関心を高められるようにした。また,望遠鏡による直接観望に加えて電視観望も取り入れることで,多くの児童が天体の特徴を共有しやすい環境を整え,宇宙の広がりや天体の美しさを実感できるよう工夫した。
本校では令和6年度より星空観望会を始め,年に2回,夏と冬に開催している。主に,4年生及び6年生の児童とその家族を対象としているが,近隣小学校の教職員や地域の方にも広く呼びかけ,参加者を募っている。これまでの実施内容は以下の通りである。
開催場所:本校グラウンド
開催時刻:夏…19:00~20:30
冬…18:00~19:30
| 実施日 | 対象 | 参加人数 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 令和6年8月9日(金) | 4年生児童と家族 | 55人(4年児童20人) | 星空解説,星座早見の使い方,望遠鏡での観望(月,ミザール,アルビレオなど) |
| 令和7年1月24日(金) | 4年生児童と家族 | 66人(4年児童21人) | 星空解説,望遠鏡での観望(木星,火星,シリウス,ベテルギウス,オリオン大星雲など) |
| 令和7年8月1日(金) | 6年生児童と家族 | 47人(6年児童15人) | 星空解説,望遠鏡での観望(月・月面X,金星,アルビレオなど) |
| 令和8年1月23日(金) | 6年生児童と家族 | 41人(6年児童14人) | 星空解説,電視観望(月,木星,プレアデス星団,オリオン大星雲),望遠鏡での観望(月,木星,シリウスなど) |
幸いどの日程も天候に恵まれ,延期や中止になることなく実施できた。
小学校理科における天文分野は,「地球」領域の内容として位置付けられている。第4学年では,「月と星」の学習において,月や星の位置の変化について観察し,時間の経過に伴う動きについて学習する。また,第6学年では,月の形の変化や太陽との位置関係,星の特徴や動きについて学習し,観察を通して自然の規則性を見いだすことが求められている。
そこで,理科の学習とのつながりを考慮し,
の4点を意識した観望会を企画することとした。
実施するにあたって,次のような手順で準備を進めた。
① 実施日の決定,現地下見,対象天体の選定
可能な限り上弦の月(月齢7)から満月(月齢15)の間で候補日を選び,学校や地域の行事の兼ね合いも見て最終決定した。また,特別な天文現象が予報されている時には,それらも考慮して実施日を選んだ。
対象天体はその時期に見えている恒星,惑星,星雲,星団などを天文シミュレーションソフトや天文年鑑等を用いて調べ,導入の容易なものを中心に複数選定した。現地の下見を行った際,観測可能高度にあるか,遮蔽となる建物がないかなどの確認を行い,対象天体を絞り込んでいった。
(ステラナビゲータ12 シミュレーション画面)
② 実施要項の作成,スタッフの協力依頼
実施要項は,機材の配置や当日の流れ,児童の動線,安全面での配慮なども考えながら作成していった。同時に運営に必要なスタッフの人数が明確化されるので,校内や校外の人材に協力依頼をし,必要人数の確保を行った。
③ 案内文書,申込フォームの作成,配付
案内文書は実施日の1ヵ月前を目途に対象学年の児童に配付した。申し込みはGoogleのFormsを利用することで,管理しやすく便利であった。
④ 当日配付資料の作成
実施日当日の星図や月の解説,天文現象の紹介等をまとめた配付資料の作成を行った。事後アンケートのQRコードも載せ,参加者の意見集約にも活用した。
⑤ 機材,道具等の準備,点検
理科室に保管してある望遠鏡や星座早見盤は動作や安全性に問題がないか,事前に確認を行った。その他の機材(個人持ちの望遠鏡や双眼鏡等)についても,当日までに持ち込み,空き教室で組み立てを行った。
⑥ 実施最終判断
当日の16:00を最終判断とした。雨天の場合は中止,晴天および曇天の場合は実施の判断とした。曇天の場合は,晴れ間を狙って臨機応変に対応することとした。また,中止の場合は学校安全メールで保護者に周知し,外部スタッフには個別に連絡を行う流れとした。
最初に,「今日の星空」の解説を行った。
次に,「星座を探そう」の活動を行った。対象学年が4年生の時には,「星座早見盤を使ってみよう」も同時に行った。
望遠鏡を自由に操作できるスペースや手作り望遠鏡を覗けるスペースを設けた。
最後は,「望遠鏡をのぞいてみよう」で自由観望タイムをとった。
第4回(令和8年1月23日)の観望会では,電視観望も行い,星雲や星団の観望にも挑戦した。
(参加者の感想)
〇児童
〇保護者
夜間の活動であるため,安全面への配慮を最大限行う必要がある。保護者にも理解していただいた上で次のような配慮を講じた。
これまで4回の観望会を実施したが,どの回も概ね好評だった。参加者の感想からも,実際の星空を観望しながら,有意義な時間を過ごすことができたことがわかった。中でも,望遠鏡をのぞくことが初めての参加者が多く,非常に価値ある経験になったようだった。また,星座早見盤の使い方を実際の星空を見ながら説明できたことで,星座早見盤の便利さや細かな操作方法も理解してもらえたようだった。観望会後の理科の学習では,天文分野を扱う際に観望会の経験を想起する児童も見られ,単元との関連付けを図ることができた。観察の機会を設定しにくい天文分野を,実体験を通して深めることができている姿が見られた。観望会を実施してみて印象的だったのが,保護者の反応である。子どもたち以上に驚き,楽しみながら会に参加していただけた。次回開催を望む声も保護者の方々から多く寄せられ,励みになっている。
一方で,安全面の確保が課題として挙げられる。先に書いたような内容で対策を講じているが,決して十分とは言えない。人数が増え,年齢層も幅広くなっていることから,様々な事態を想定して,今後も安全面の確保に努めていく必要があると考えられる。
しかし,その労力を差し引いてもあまりあるほどの魅力が星空観望会にはあり,今後も続けていく価値のある取り組みであると感じている。
星空観望会は,現在のところ本校が単独で行っている活動である。理科担当の集まりでも,「観望会を実施してみたいが,そのやり方がわからない」や「機材がない」などの悩みを聞くことがある。神崎郡は小規模であるがゆえ連携を取りやすい。その強みを生かし,今後は他校の教員とも協力し,出張星空観望会なども計画していきたい。そして,子どもにも大人にも星空の魅力を伝えていきたい。