小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
算数

問いを持ち,主体的に問題解決する算数科学習
~ICTを活用した情報活用能力の育成~

(元)堺市立南八下小学校 田中 俊行

1.はじめに

この実践記録は,私が3月まで在職していた堺市立南八下小学校における実践例である。
南八下小学校は堺市からGIGAスクール構想の実現に向けた研究校の指定を受け,2年になる。学校独自で1年生から6年生までの「情報活用スキル指導系統表」を作成し,本学級の児童らのICT端末の活用スキルを入学当初から育ててきた。本実践はその3学期の実践である。

本単元では,児童が問題場面の意味を読み取り,図に表して数量の関係を理解し,式に表すとともに,その場面を図で表すことの良さが実感できるよう単元計画を立てる。
第1次では,児童が図の有要性をより実感できるように,問題文にある数値だけでは解決することが難しい問題を扱う。図で表すことで,式を立てることができ,課題解決しやすくなったという経験を経て,より正しく課題を解決するために『わかりやすい図をかくには,どうすればいいのだろう』という単元を通した課題『大きな問い』を立てる。

第2次では,大きな問いにある『わかりやすい図』とはどのような図かを意識しながら学習を進めていく。①順序数を含む場面の問題②異種のものの数量を含む問題③求大・求小の場面の問題のそれぞれの場面について数量関係が明確になる図を考えて,学習を進めていく。

2.個別最適化の授業を目指して

学級には,『自力解決ができる児童と難しい児童』がいる。そこで,ICT端末の活用を通して,自力解決の支援を行う。本実践では,学習支援ソフトSKYMENU Class(Sky株式会社)のアプリ『みんなの作品』を常に公開状態にし,自力解決ができた児童から自分の考えを公開しておく。『自力解決が難しい児童』は,他の児童の考えを見ながら,ヒントを得ることで問題解決に向かうことができる。また,『自力解決ができる児童』は,自分の書いた図がわかりやすい図になっているかを,他の児童の図と比較して考える。そして,自分の考えをもう一度再構築することで,より深い学びにつなげていく。

『みんなの作品』を活用することで,自力解決できる児童や難しい児童も,自分とまわりの児童との思考をつなぐことで個別の課題に応じた学習を進めて,主体的な問題解決を促す。

3.単元について

(1)大きな問いの扱い

単元を通して,大きな問い『わかりやすい図をかくには,どうすればいいのだろう』について解決するためのポイントを見つけていく。見つけたポイントは教室に掲示したり,児童一人ひとりのタブレット内に蓄積していったりする。

(2)情報活用能力の育成

本単元では,毎時間の課題に対してわかりやすい図をかくために,ICT端末を活用し,みんなの考えから課題解決に向けたヒントを得ていく。他の児童の考えは,児童一人ひとりにとって自分の問いを解決するための情報となる。たくさんある情報の中から,解決の見通しをもち,自分に必要な情報を集め,整理,分析し,自分の考えを表現することで情報活用能力を育成する。

(3)単元計画

主な学習内容 ICT活用
1 ・単元の見通しを持ち,学習課題をつかむ。
Aさんの前に3人,Aさんの後ろに4人並んでいます。全員で何人並んでいますか?

大問い わかりやすい図をかくためには,どうすればいいのだろう。

2 ・問題にあった図をかき,図をもとに式を立てて考える。

①Aさんは,前から6番目。Aさんの後ろに3人います。みんなで何人?

②子どもたちが11人並んでいます。Aさんは前から5番目。Aさんの後ろは何人?

4人がいすに座っています。いすは,あと6脚あります。いすは全部で何脚?
風船が12個あります。7人の子どもに1個ずつあげると,風船は何個残りますか。
バスケットボールは5人でします。サッカーはバスケットボールより6人多いです。サッカーは何人でしますか。
青いいろがみは7枚。赤いいろがみは青いいろがみより4枚少ない。赤いいろがみは何枚?

SKYMENU Class「発表ノート」

「みんなの作品」

4.本時について

(1)本時の目標

2つの違う種類の数を同じ数に置きかえて問題を解くことができる。

(2)展開

学習展開 評価規準・方法

・課題をつかむ

4人がいすに座っています。いすは,あと6脚あります。いすは全部で何脚?
問い わかりやすい図をかくためには,どうすればいいのだろう。

・解決の見通しをもつ

・自分の考えをもつ

・「みんなの作品」で考えを交流する(レベルアップタイム)
→自分の考えと他の児童の考えをタブレット上に並べ,みんなの考えを知り,よりよく課題を解決するためのヒントを得る。

・自分の考えを深める

・自分の考えを説明する。

・全体で考えを交流し,黒板に『今日の1番わかりやすい図』を完成させる。

・本時の学習をふりかえる

SKYMENU Class「発表ノート」

「みんなの作品」
(思考・判断・表現)

・2つの数量の関係をとらえ,式と図で表している。

【発表ノート】

5.実践のまとめ

実践を終えて,児童の学習後の感想には,図の有用性を感じるものがたくさん見られた。児童一人ひとりが問いをもち,ICT端末を活用することで主体的に学習を進め,みんなの考えを知り,その上で自分の考えを再構築することで学びを深めることができた。より主体的で深い学びを生むためには,紛れもなくICT端末の活用は必要不可欠であり,たくさんある情報の中から自分にとって必要な情報を集め,整理,分析し,表現することが情報活用能力の育成につながると考える。

【参考文献】

・小学館(2021).「みんなの教育技術 小1算数「ずをつかってかんがえよう」指導アイデア(5/6時)《図を描いて,答えや式を考えよう》」.2023年3月31日

・文部科学省(2020).『学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力の育成<体系表例とカリキュラム・マネジメントモデルの活用>』