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算数

かたちづくりにおけるデジタル教科書の活用事例

いすみ市立太東小学校 佐久間 恵津子

1.はじめに

今日の教育では,自ら学び,自ら考えるなどの「生きる力」の育成が重要とされている。その中でも,ICTの活用技術は児童にとって身近で必要なものになっている。

文部科学省のGIGAスクール構想を受け,いすみ市でも令和3年度から児童向けの一人一台タブレット端末と,高速大容量の通信ネットワークが整備された。

そこで一人一台タブレット端末の効果的な活用方法を学び,今までの授業実践と算数のデジタル教科書を使ったICT活用技術の組み合わせによる授業実践を行うことで,児童の学習意欲と学力の向上につながると考えた。ICT技術を活用することで算数の授業を通して,一人一人の考えをリアルタイムで共有し,多様な意見にも触れられるなど,主体的・対話的で深い学びが実現できるようになると考える。

2.授業展開

(1)単元名「かたちづくり」

(2)本時の指導

①目標
点と点をつないでいろいろな形をつくることができる。 【知識及び技能】

②本単元の視点

視点1 デジタル教科書を活用した,学習意欲や学力の向上につながる学習指導。

視点2 一人一台タブレット端末を活用した,効果的な学習活動の進め方。

(ア)視点1について

  • 点と点をつなげる際に,定規などを使って丁寧に線を引くよう指導しても,上手に線を引くことのできる児童は多くない。上手に線が引けないことがストレスとなり,何度も線を引き直しているうちに活動への意欲が下がってしまうこともある。デジタル教科書の中にある点を打った用紙を活用することで,点と点を線でつなぐ際の失敗を減らし,形づくりの意欲を高めるとともに失敗した際も消去することが簡単なため,図形をつくる時間を保障することができると考える。
  • 出来上がった作品に名前を付けて保存することができるので,上位の児童にとっても新しい用紙に,新たな作品づくりに挑戦することができ,学習意欲の向上につながると考える。

(イ)視点2について

  • 一人一台タブレット端末を活用することで,筆記用具を使わずに図形をつくることができる。余計なものを使わないので,作品づくりに集中することができる。また,出来上がった作品に名前をつけて保存することができるので,保存した作品を大型モニターに映しだすことで作品を学級全体で共有しやすくなると考える。タブレット端末内に出来上がった作品から保存し,新しい用紙を使うことができるので,自分のペースで作品づくりに取り組むことができると考える。

(3)本時の展開

時配
形態
学習内容と学習活動 ○指導・支援 ◎評価 資料
2分
一斉
見いだす
1 問題場面を把握する。
問題文 てんとてんを せんで つないで,いろいろなかたちをつくりましょう。
  • ○教師がまずやって見せることで,点をつなぐ際の決まりとやってみたいという活動への意欲を高める。
  • ○点を打った用紙を提示し,
    教師が点を線でつないで,
    教科書にある形をつくる。
デジタル教科書
大型モニター
3分
一斉
個別
2 予想する。
  • 自分でつくりたい形を考える。

    <予想される児童の反応>

  • 楽しそう。やってみたい。
  • どうやるのかな。
  • わからない。どうしよう。
  • ○1人では,形をイメージしにくい児童には,山,旗,ダイヤなどつくりやすい形を見せ,イメージをもたせる。
つくりやすい形のヒントカード
5分
一斉
3 学習問題を設定する。

学習問題  てんを きめて せんで つないで かたちを つくろう。

20分
個別
自分で
取り組む
4 自力解決をする。
  • 点と点を結んで自分のつくりたい形
    をつくる。
  • <予想される児童の反応>

  • どんどんつくるぞ。
  • どうしよう。うまくつくれない。
  • ○早く終わった児童には,他の形を考えてみるように声をかける。
  • ○一人でじっくり考えたい児童に対しても時間を保障する。
  • ○一人で,形を考えられない児童には,簡単な形の例を見せながら一緒に考え,励ます。
  • タブレット端末
    デジタル教科書
    10分
    一斉
    広げ
    深める
    5 比較,検討をする。
    • 児童のつくった形を大型モニターに
      映して発表する。
    • 他にもいろいろな形をつくらせる。
    • 何をつくったのか,工夫したところは
      どこかなどを発表する。
    • <予想される児童の反応>

    • 自分の作品の発表が出来てうれしい。
    • 自分でもつくってみたいな。
    • すごいな。

  • ○全員ができていることを確認してから何人か指名して,つくった作品について発表させる。同じ形を考えた児童を挙手で確認する。
  • ○全員が成就感や達成感を得られ,自信をもって発表できるよう,まずは全員に形を考えられたことを認め,称賛する。
  • ○出来上がった作品をお互いに見合ったり,工夫したところ,よいところを話し合ったりして,図形を構成する力を伸ばす。
  • ◎点と点をつないでいろいろな形をつくることができる。
  • 【知識・技能】
    (デジタル教科書)

  • ○作品づくりに消極的な児童からも意欲を引き出すためにつくりやすい作品を考えた児童から指名し,発表する。
  • タブレット端末
    デジタル教科書
    大型モニター
    3分
    一斉
    まとめ
    あげる
    6 まとめる。
    まとめ てんを つなぐと かたちを
    つくることが できた。
    ノート
    2分
    一斉
    7 ふり返りをする。
    • 点をつないで,形をつくることができた。

    3.実践の成果

    (1)デジタル教科書を活用した,学習意欲や学力の向上につながる学習指導について

    事前のアンケート結果から,タブレット端末によるデジタル教科書を活用した授業に意欲的な児童の実態を生かして,デジタル教科書の特性を生かせる「かたちづくり」の単元で活用した。

    デジタル教科書の中にある点を打った用紙を活用することで,点と点を線でつなぐ際の失敗を減らし,形づくりの意欲を高め,最後まで集中して作品づくりに取り組むことができた。また,失敗した際も消去することが簡単なため,図形をつくる時間を多く確保することができた。

    出来上がった作品に名前を付けて保存することができるので,上位の児童にとっても手持ち無沙汰になることなく,新しい用紙に,新たな作品づくりに挑戦することができ,学習意欲の向上につながった。また,デジタル教科書を活用することで,教師の授業の準備の負担が大幅に軽減された。

    授業後半の発表では,児童全員が自分の作品を発表した。その際全員が,自分の作品の構成要素について発表することができた。

    作図の苦手な児童も積極的に活動する姿が見られた。

    自分の作品を大型モニターに映して発表することができた。

    デジタル教科書を活用することで教員の負担が軽減された。

    (2)一人一台タブレット端末を活用した効果的な学習活動の進め方について

    一人一台タブレット端末を活用することで,筆記用具を使わずに図形をつくることができた。余計なものを使わないので,作品づくりに集中することができる。また,タブレット端末に,出来上がった作品に名前をつけて保存することができるので,児童の個々のペースで集中を切らせることなく作品づくりに取り組むことができた。

    デジタル教科書と一人一台タブレット端末を活用することにより,個々の作品が端末内に記録されるので評価がしやすくなったり,タブレット端末から大型モニターへ簡単に画像を送ることができたりするので,小学一年生でも操作がしやすく,発表もスムーズに行うことができた。また,大型モニターに表示された友達の作品からヒントを得て更なる作品づくりの意欲が刺激され,休み時間に作品づくりへ取り組む児童の姿が見られた。

    一度に4人分の作品を見せることができる大型モニター。

    モニターに大きく映し出された作品を見ながらの発表。

    机上をシンプルにできたことで集中力を高めることができた。

    【参考文献】

    清水 静海,根上 生也,寺垣内 政一,矢部 敏昭.『わくわくさんすう1指導書 第2部 詳説』.啓林館