小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
算数

計算結果を日常生活に結び付けて考える
~第3学年「あまりのあるわり算」~

入間市立藤沢北小学校 梶岡 千晶

1.はじめに

令和3年度全国学力・学習状況調査では,問題場面の数量の関係について着目し,除法が用いられる場面を理解したり,除法の結果の意味を解釈したりすることができるかを見る問題が出題された。(4「除法と小数を用いた倍」)(1)は,示された除法の結果について,日常生活の場面に即して判断することができるかどうかを見る問題で,正答率は83.1%であった。主な誤答は,「3」と解答するもので,6.6%である。出題は,イラストがあって問題場面が想像しやすくなっている。
式の「23÷6」だけでなく,計算結果の「3あまり5」という結果が書かれている状態での正答率が83.1%である。余りのボール5個を箱に入れるために,もう1箱必要になるという除法の結果の意味の解釈が不十分な児童が存在するといえる。計算結果をもとに,用いられている数の意味や式の意味,答えの意味などを日常生活の問題に関連づけることに課題があるといえるだろう。

2.学習指導要領より

A(4)除法
(4)除法に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)除法の意味について理解し,それが用いられる場合について知ること。また,余りについて知ること。
(イ)除法が用いられる場面を式に表したり,式を読み取ったりすること。
(ウ)除法と乗法や減法との関係について理解すること。
(エ)除数と商が共に1位数である除法の計算が確実にできること。
(オ)簡単な場合について,除数が1位数で商が2位数の除法の計算の仕方を知ること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア)数量の関係に着目し,計算の意味や計算の仕方を考えたり,計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに,その性質を活用して,計算を工夫したり計算の確かめをしたりすること。

(イ)数量の関係に着目し,計算を日常生活に生かすこと。

学習指導要領解説には,「計算の仕方を形式的に知るだけでなく,除法の計算の仕方を主体的に考えたり,計算に関して成り立つ性質を見いだし,その性質を計算の工夫や確かめに活用するとともに,日常生活に生かす態度を育むことが大切である。」と述べられている。そして,数学的活動として「日常生活におけるできごとを算数と結び付けて考えたり処理したりする活動を通して,算数を学ぶよさを実感できるようにすることが大切である。」と述べられている。以上のことから,単元を通して,計算の結果を振り返り,形式的でなく意味を考えて処理する力を育むことが求められている。

3.指導の改善案と実践の目的

児童が,計算結果をもとに,用いられている数の意味や式の意味,答えの意味などを日常生活の問題に関連づけられるようにするためには,単元を通して図と式を関連づけることを指導していく。さらに,本時では具体物を用いて,操作しながら考えられるようにする。児童が問題解決の中で,余りをどう捉えるかを見て,余りについての概念を広げる場面でどのような考え方をするのか分析していく。

4.実際の指導

①問題場面を捉え,立式する

ボールが23個あります。1箱にボールを4個ずつ入れていきます。全部のボールを入れるには,何箱あればよいですか。

C:23÷4=5あまり3

T:合っているね

C:そうなんだけど,余っちゃいけない

T:えーって言っている人は何?

C:「箱は何箱あればいいですか」ってなって,「5あまり3」ってなって,どう答えにしたらいいんだろう

C:何で箱が余るの?ボールが余るんでしょ

C:問題に「全部のボールを入れるには」ってあるから,余っちゃダメ

C:あー,うん。余っちゃダメ

②課題を持ち,見通しを立てる

T:課題を考えていこう

C:余りをなくす方法を考えよう?

T:余りをなくすかもわからないよ

C:余りをどうするか

余りをどうするか考えて,答えを出そう。

T:これでやったら自分が考えられそうかなって見通し立ててみて

C:えー,難しい,無理

T:いつも困ったとき,何しているの?

C:みんなと話し合っている

T:みんなと話し合っているけど,できるところから手を付けないと。自分ができることは何なの?

C:式

C:たし算

C:図でできそう

C:確かに図でできそう

③余りの処理について考える

児童のノート①

C:もう1つボールがあればいいのにな
C:全部のボール入れなきゃいけないなんてできないよ,こんなの

T:もし,「どうしよう」って思っている人は,どの「どうしよう」って思っていることをノートに書くのもいいよね。これが困ってるとか,ここまではいけたんだけどとか,これがわかんないって書くのも大事だよね

児童のノート②

C:1つ半分に切っちゃえば

C:みんなでやりたい

C:難しい

C:余っちゃいけないんでしょう

C:1個たせばいけるんだけど,3個しかないから

T:グループでやりたい?みんなでやりたい?

C:みんな

④考えを共有する
T:(児童のかいた図をモニターで表示)図がかけている人が何人かいて,これは一緒かな?

児童のノート③

C:同じ

C:ああ,同じ

C:向きが違うだけ

T:他の人,どういう意味か説明してくれませんか

C:5つ箱があって,さらに3つある。でもあとここに1つあればいいけど,ええと,3つだから,箱には入れられない

C:そうそうそうそう

C:(拍手)

T:拍手している人は誰?こんな感じなの?意味わかるの?

C:俺がそれ

T:こんな人もいたよ

児童のノート④

C:あー

T:困ったね,ちょっとやってみようか

C:やってみたい

C:あーたしかに。やってみる方がいいかも

T:じゃあ,ボールもってきた方がいい?

C:いいよ,いいよ,黒板に貼れないよ

T:ボールじゃないと考えられないんじゃないの?

C:でもさぁ

T:必要だったら取りに行くよ

C:本当のボールじゃなくても別に考えられる

(磁石と紙の箱を使って,実際に操作をしてみる)

1つずつ箱に入れて,4つ入ったら次の箱に入れていく。
20個入れ終わった後

C:ボールが片付いてきた

C:もう終わりじゃん

T:まだ散らかっているよ

C:でも4個ずつ・・・

C:けど,放置していくわけにはいかない

C:ただ箱に入れないだけで

C:手で持つ

T:箱のこと聞いているのに?

C:これを,今は,3個だけど,3個の箱を作っちゃう

T:3個の箱を作っちゃう?作ってみていいよ

C:作れんの

C:4個の箱に3個入れる
(箱に3個入れる)

C:式と違う

T:じゃあ,普段の生活でそういうことってないのかな?「4個の箱に」って言ってくれたよ

C:だから余ってもいいからとりあえずみたいな

C:とりあえず入れちゃう

C:例えば,お菓子が4個ずつ入っている箱があって,1つ食べたら4個ずつの箱なのに3個しか入ってないから,でもそういうときはあるから,さっきのは正しいと思う

C:意味わかった

T:分かった人はいるの?

C:お菓子が最初から入っていて,4個入りのお菓子があったときに,1つ食べたら4個ずつ入っているのに3個になる

T:あとそういう時ある?

C:ある

T:一度に4人しか入れないサウナで,満タンで1人出たら次の人が入る

C:あー

C:その瞬間だけあれか

T:4人は入れるサウナは4人入っているわけではないんだ?

C:そうそうそうそうそう

T:そういうときもあるのか

C:1人のときもある

C:3人がいて,2つのベットがあって,2つあるのに3人で入ったら,1人落ちちゃう。落ちちゃうじゃなくて,1人入れなくなる

C:それもともとじゃん

T:なんか通じた人もいる。いろんな話が出たけど,戻るよ。このときはどうなの?ボールが23個あります
1箱にボールを4個ずつ入れていきます。お手伝いしてくれて,箱を持っている人誰?みんなで数えてみるよ

C:1,2,3,4,5

T:「5」はどこかに出てきている?

C:式の答え

C:あ

C:余りの前

T:全部のボールを入れるには?箱は何箱あるの?

C:6つ

C:3個

⑤まとめる

T:じゃあ,答えを出そうって言ってたけど,答えは何箱になるの?

C:6箱

C:5箱

C:6だよ

T:理由言って

C:「4個ずつ入れていきます」だから,「入れます」じゃないから,ボールが23個あるのは分かっているけど
4個ずつ入れるとどうなるかまだ分かんないから,6箱

C:(拍手)

T:自分の言葉で言える人

C:4個ずつ入れてた箱が5箱で,それと別に3個入った箱が1つあって,箱は同じだから,箱は6箱です。

T:難しいね。ここ(黒板上)には「6」って出てきてないけど,この余り3は図で言ったら,このままじゃ,箱は5箱だよねどうやったら6箱になるの?

C:余りの3に,余りの3を作ればいい。箱に入れればいい。

T:じゃあ,自分の入れてみて

⑥問題場面を捉え,立式する

T:じゃあ,ボールじゃなくてもできるんじゃない?

C:うん

お楽しみ券が30枚あります。4枚で1回くじびきができます。くじびきは何回できますか。

T:式

C:30÷4です

T:答えみんなで

C:7あまり2

T:じゃあ,さっきやったように答えだしてください

児童のノート⑤

児童のノート⑤

⑦問題の答えがどうなるのか話し合う

T:くじびきは何回できるんですか

C:7回

C:だって,さっきと違って4回でできる。4枚で

T:さっきの振り返るよ。囲って,ここも囲って,8回じゃないの

C:だってさー,4枚で,4枚でだから4枚

T:さっき囲んだんじゃないの

C:4枚で1回できるから,2枚だと1回はできません

C:あー

C:0回はできるけど

C:ボールは箱とかだから,箱とかだと物だけど,お楽しみ券とかは,人がしているやつだから,とりあえずは人の場合だと起きないけど,物の場合はとりあえずができるところが違う

T:問題によって違うってこと?

C:聞いていることは同じでも,そういうくじびきと箱だと,4枚で1回しかできない。でも2枚余っちゃう。
で,ボールは,4個ずつ入れて3個余るから,4個ずつの箱に入れちゃえばいいけど,2枚だったらくじびきはできないから,同じ・・・同じことを聞かれてても,答えは答えは変わると思います。

⑧まとめる

T:じゃあ,一緒にまとめていくか。今日は「余りをどうするか考える」だったけど,こっちは余りどうしたの?

C:余りを入れちゃった

T:余りを入れて考えたのね

C:けどこっちは

T:こっちはどういう風に考えたの?

C:余らせた

C:4枚で1枚だから,箱とかに入れるわけじゃないから2枚は

T:何って書こう?「余りをどうするか」だから,余りをどうしたか書かなきゃ

C:余らせた

C:関係ない

T:あー,余りを考えないってこと?

C:そうそうそうそう。関係なくする。

T:難しいね。それまとめられますか?

C:余りの分を考えないときと考える時がある

問題によって,余りの分を考えるときと考えない時がある

⑨本時のふりかえりをする

C:今日の問題はとても難しかったです。その理由は,余りを入れて考えるってこととか余りの分を考えないってこととか,いろいろ余りのかけ算でも種類があるんだなと思いました

C:ボールのときに,いつも考えていた余りを,余りを出すという考えとは別に,余りを出さずに箱に入れるという考えが今まではありませんでした

児童のノート⑥

5.板書

6.実践の分析

7.おわりに

今回は,図と式を関連づけることを指導してきた。児童が図をかくことはできたが,図と式や図と計算結果を関連させるところまでは達していなかった。「5あまり3」の「5」とは「箱が5箱」という意味で,「3」はボールが「3個」というところも丁寧におさえる必要がある。今後は他学年・他単元でも,形式的に出した計算結果を振り返り,日常生活のできごとと結び付けて処理することができる力を育成する算数指導をしていきたい。

【引用・参考文献】