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算数

6年 統計的探究プロセスを生かした授業づくり
~カリキュラム・マネジメントにより児童の目的意識を引き出す~

宇部市立原小学校 村上 大樹

1.授業づくりに向けて

現行の学習指導要領において,「データの活用」領域が新設された。本領域の実践に向けて,学習指導要領解説算数編で示されている以下の3つのねらいを確認した。

  • ①目的に応じてデータを集めて分類整理し,適切なグラフに表したり,代表値などを求めたりするとともに,統計的な問題解決の方法について知ること
  • ②データのもつ特徴や傾向を把握し,問題に対して自分なりの結論を出したり,その結論の妥当性について批判的に考察したりすること
  • ③統計的な問題解決のよさに気付き,データやその分析結果を生活や学習に活用しようとする態度を身に付けること

①のねらいにある「統計的な問題解決の方法」について学習指導要領等で確認すると,「問題(Problem)-計画(Plan)-データ(Data)-分析(Analysis)-結論(Conclusion)」という探究プロセス(以下,PPDACサイクルと称する)であることが分かる。このプロセスを紹介する文献も多く見られた(資料1)。

【資料1】

また,②のねらいにある「妥当性について批判的に考察したりする」ことについて,柗本(2019)は,「自己や他者の思考一つひとつを『本当に正しいのかな?』と批判的に検討する」ことと述べている。

さらに,③のねらいにある「データやその分析結果を生活や学習に活用しようとする態度」を育むためには,カリキュラム・マネジメントの視点が不可欠であると考えた。算数と他教科を結び付け,算数科で学んだことを実際の学校生活に生かす場面をつくることで,児童に学習の必要感をもたせることができるのではないかと考えた。

以上の事を踏まえ,以下の点を意識して授業づくりを行うことで,単元を通して目的意識が継続し,目的に応じてそれぞれの表やグラフの特徴を生かそうとする児童の姿を引き出すことができると考え,実践に臨んだ。

【授業づくりのポイント】

・総合的な学習の時間を軸とした単元構成
・PPDACサイクルの活用 
・様々な表やグラフの活用
・批判的考察につながる振り返り

2.単元構成について

本校は,毎年10月に学校運営協議会において地域の方々と共に「原っ子宣言」を話し合って作成している。「原っ子宣言」とは,①あいさつ,②家庭学習,③メディアとの関わり,の3点について目標を定めたものである。この学校運営協議会に向けて,総合的な学習の時間と算数科の単元を貫くめあてを以下のように設定した。算数科においては,児童自身のメディア利用時間の特徴を捉えるだけでなく,「その特徴が地域の方々に最も伝わる表やグラフを選択すること」をゴールとした。

総合的な学習の時間「原小をよりよくしていくには」

全校のみんなに、よりよいメディアとの付き合い方を提案しよう

算数科「資料の整理」

原っ子宣言で提案するために、原っ子のメディアの時間を調べよりよい方法で伝えよう

単元構成のイメージ(資料2)のように,総合的な学習の時間と算数科の単元「資料の整理」を関連付け,学校運営協議会の熟議に向けて,PPDACサイクルの過程を横断的に経験しながら学習を進めていくこととした。そして,単元を通した振り返りの視点として,「地域の方々に示す一番よいデータの示し方は,この方法でよいのかな?」という問いを毎時間設定した。この振り返りの視点をもたせることで,児童の批判的考察を引き出すことができると考えたためである。

【資料2】

3.授業の実際

(1)第1時 導入「子どもの問題意識を引き出す」

導入では,メディアとの関わり方について児童自身が問題意識をもつことが必要だと考えた。そこで,放課後の時間の使い方をワークシートを用いて振り返る活動を設定した。

【ワークシート(放課後の時間)】

「一番長い時間を使っている過ごし方」を問いかけたところ,多様な過ごし方が出される中で,メディアに関すること(ゲーム,動画視聴など)を発表した児童が多いことに気付くことができた。これにより,メディアの時間の長さへの問題意識を生み出すことができた。

ここでPPDACサイクルを紹介し,学校運営協議会で「原っ子宣言」について話し合う見通しを伝えた上で,総合的な学習の時間と算数のめあてを児童と共に話し合って決定した。

【第1時(導入)の板書】

(2)第2時~第5時「それぞれの表・グラフで分析する。」

第2時から第5時にかけて,最高・最低の値,平均値,最頻値,中央値(代表値),ドットプロット,度数分布表,柱状グラフ(ヒストグラム)を学習する中で,「地域の方々に示す一番よいデータの示し方はどの方法かな。」という視点で振り返りを行った。以下は,それぞれの数値や表,グラフに対する児童の振り返りである。

値・表・グラフ 児童のふり返り ●肯定的意見 ▲否定的・限定的意見
最高・最低
  • ▲最高と最低の値だけでは,他の人の(全体の)時間が分からないよ。
平均値
  • ▲一人ひとりのメディアの時間や,どこの時間帯の人が多いのかが分かりにくいな。
ドットプロット
  • ●どの時間帯の人が多いかがよく分かるから使えそうだよ。
  • ▲全校の目標を話し合うということは,全校のデータをまとめる必要があるよね。それって大変そう…
度数分布表
  • ●メディアの時間が長い人と短い人の違いが数値ですぐに分かるよ。
  • ●階級で分けているから,「180分以上」のところを特に伝えればいいと思うよ。
  • ▲細かい数字は分かるけど,どの階級が多いかを見てすぐに分かるグラフにした方が,話し合いに使えると思うよ。
柱状グラフ
  • ●どの時間帯の人が多いのか一目で分かるから,ドットプロットや度数分布表よりも使いやすいと思う。
  • ●高さで数値が分かるし,一目で人数の多さが分かるからいい。
  • ▲全体の人数が違うときに,それぞれの学年のちらばりは分かるけど,その時間帯の人の「割合」は分かりにくいよ。

(3)第6時「目的に応じたグラフの選択と新たな課題意識」

第6時には,第5時までの振り返りをもとに,本単元で扱ったものだけでなく,既習のグラフ(棒グラフ・折れ線グラフ・帯グラフ・円グラフ)も提示し,学校運営協議会での最適なデータの示し方について話し合った。児童が注目し,議論が深まった順に以下に示す。

①折れ線グラフ

②棒グラフ

③ドットプロット

④柱状グラフ

⑤レーダーチャート

ある児童の経験に基づき,レーダーチャートの提案がなされた。優れた提案であったが,児童から以下のような指摘があり,目的に沿っているかを話し合った。

⑥帯・円グラフ

この話し合いにより,最終的な候補は,「ドットプロット」「柱状グラフ」「帯・円グラフ」に絞られた。

しかし,ここである児童が「先生,全校のみんなに提案するのに,6年生のデータだけでは足りないよ。」という意見が出された。この発言を捉え,次時から「PPDACサイクルの2回転目(全校データを対象とした計画)」へとつなげていった。

(4)第7~8時「全校児童のデータを分析しよう。」

第7,8時は,全校児童のデータを分析する活動を行った。ただし,全校児童(1~6年)では分析対象のデータ数が膨大になること,また低学年のデータは信頼性に不安があることを考慮し,6月の「メディアコントロール週間」に収集した4・5・6年生のデータを分析対象とすることに決定した。

児童は,第6時で最終候補となった「ドットプロット」「柱状グラフ」「帯・円グラフ」の3つのグループに分かれ分析を試みた。

4・5・6年生のデータをまとめる際,児童は「平均値」や「最頻値」に注目した。各学年の特徴を比較する中で,「6年生のメディア利用時間が最も長く,学年が上がるにつれてメディアに関わる時間が増えるのではないか」という仮説が生まれた。そこから「中学1年生のデータも調べたい」という発言も見られた。PPDACサイクルに沿って問題解決を図る中で,児童自らが「新たな問い(Problem)」を生み出すという,統計的探究プロセスの本質的な姿が見られた瞬間であった。

(5)第9時「批判的考察に基づく結論の話し合いと発信」

第9時には,各グループで分析した結果を持ち寄り,学校運営協議会でどの方法を用いて提案するかを最終決定する話し合いを行った。それぞれのグラフの特徴を対比させながら,「地域の方々にとって最も分かりやすい示し方はどれか」を批判的に考察する姿が見られた。

協議の結果,「対象人数が異なっていても割合を使えば各学年の特徴を比較できる。」「帯グラフを縦に並べることで,学年間の傾向の違いが視覚的に捉えやすい。」という理由から,「帯グラフ」に決定した。

実際の学校運営協議会では,この帯グラフを用いて地域の方々に向けてメディア利用の特徴を堂々と発表し,真剣に熟議を交わす児童の姿が見られた。

(6)単元を通した振り返り

4.本実践の成果と課題

【成果】

【課題】

【引用・参考文献】