子ども達は,英語を学ぶことで新しい言葉や表現を知り,それを使って自分の気持ちや考えを伝えたり相手のことを知ったりすることができるようになるなど自分の成長を感じるときに喜びを感じている。また,子ども達の成長した姿を見ることが教師の喜びでもある。
子ども達が主体的に学んだ英語を使って表現しようと取り組むためには,コミュニケーションを行う目的・場面・状況を明確にした必然性のある言語活動を行うことが大切である。熊本紹介の授業で取り組んだことを紹介したい。
子ども達が主体的に学習に取り組めるようにするために,単元のゴールの設定は大切である。
本単元では,本校のALTに協力してもらい,熊本に行きたいと思っているイギリスの家族に下のようなビデオメッセージを送ってもらった。
第1時に,ALTに家族を紹介してもらい,家族からのビデオメッセージを子ども達に見せた。子ども達はそのメッセージを真剣に聞き,熊本のいいところを伝えたいという気持ちを高めていた。
【ALTの家族からのビデオメッセージ】
Hello! My name is Alan. I live in England.
I want to come to Kumamoto.
Can you tell me about Kumamoto?
Are there any castles there?
Is there a park in Kumamoto? Do you go to the park? ・・・・
I eat lots of fish and chips! What do you eat in Kumamoto?
Kumamoto must be a very nice place. Goodbye!
その後,単元のゴールを子ども達と話し合い,「ALTの家族に熊本の魅力を紹介するために,ビデオメッセージを作ろう。」と設定した。また,そのために必要な学習活動をバックワードデザインで計画することにより,子ども達が相手意識,目的意識を持って毎時間の学習に取り組めるようにした。
自分たちの「ふるさと熊本を再発見しよう」というサブテーマも設けて,10のグループに分かれ,県内の市町村の魅力を伝えることにした。
【学習計画】8時間扱い | |
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1 | 単元のゴール,学習計画 施設や建物の言い方 |
2 | 町にあるものやないものの言い方 |
3 | 各地でできることの言い方 |
4,5 | 紹介の準備 |
6 | 紹介の練習 |
7,8 | ビデオメッセージ作り 学習の振り返り |
①Small Talk
授業の始めにSmall Talkを行い,自分のことを実際にやりとりすることにより,楽しい雰囲気をつくるとともに,コミュニケーションへの自信や意欲を高めている。
トピックは本時につながる既習表現が使える内容を取り上げることにしている。
本時のトピックは,「日本でどこに行きたいか」にし,HRTとJTEでモデルトークをした。
その後,Why?の後にどんな表現が使えるかを子ども達に考えさせた。ペアで話をさせ,言いたくても言えなかった表現を全員で考えたり,Do you like ~? Do you know ~? I like ~. What ~ do you like? などの表現を使うと話が広がることを確認したりして,ペアを替えて再度話をさせた。相手の言ったことを繰り返したり,反応したり質問し合ったりしながら楽しそうに話をする姿が見られた。
②本時のめあての設定
子ども達は,前時までに,グループ毎に担当する市の魅力について調べ,そこにあるもの,できること,感想をWe have~. You can ~ .It’s ~. を使ってワークシートに書いていた。本時は,「紹介の練習」の計画になっていたが,「どんな練習をしたらよいか」を子ども達に投げかけ,前時の子どもの振り返りを紹介した。
【子どもの前時の振り返りより】
これらの振り返りから,「ALTの家族が熊本に行きたくなるように,紹介の仕方を工夫しよう」とめあてを設定した。
③紹介の仕方の工夫を考える
「では,どんな工夫をしたら行きたいと思ってもらえるか」と子ども達に問い,考えさせた。「スマイル,アイコンタクト,クリアボイス,ジェスチャー,写真を活かす」などの工夫は出てきたが,私が本時でねらっている「既習表現を使った工夫」は子ども達から出てくるのは難しいと思ったので,私が作成した町紹介ビデオを見せた。どんな表現の工夫をしていたか気づかせるために字幕をつけたものを再度見せた。
【町紹介ビデオの一部】
子ども達は,上のような既習の表現を入れて,相手に尋ねたり,呼びかけたり,自分の気持ちを伝えたりしている工夫に気づくことができた。また,「相手に尋ねたり呼びかけたりする表現を入れると,直接やりとりはできないが相手に自分事として聞いてもらえる」「自分の経験や感想を入れるとその魅力に説得力がある。」とこれらの表現を入れた方がよい理由についても考えることができた。
④グループで表現の工夫を考え,紹介の練習をする。
グループで話し合い,前時に作った紹介の文に相手を意識した表現を付け加えたり,工夫して練習したりした。
⑤紹介の練習と中間評価
2グループずつで紹介を見合い,アドバイスをし合った後,全体で1グループの発表を見てよさを共有した。
聞いていた子ども達から,「クリアボイスで聞き取りやすかった」「Please visit Kumamoto City!など呼びかけの言葉を入れていたので行きたい気持ちになった」などという感想が出された。
⑥本時の学習を振り返る
【子どもの振り返りより】
第7,8時に,各班で協力してビデオメッセージを作成した。自分の紹介の録画を見直したり,友達とアドバイスをし合ったりして,納得するまで撮り直しをしてよりよくしようと自己調整する姿が見られた。撮った動画と写真を合成してタイトルなどを入れ,編集も意欲的に行っていた。
各班のビデオメッセージを1つにまとめてALTの家族に送り,見てもらった。
家族からの感想を聞いて,子ども達は目標を達成できたことを嬉しそうにしていた。
単元のゴール,毎時間のゴールを子どもの言葉や振り返りを活かして設定することにより,子ども達は単元のゴールを意識しながら,毎時間の学習に意欲を持って取り組むことができた。相手意識,目的意識,必然性のある言語活動の大切さを改めて感じた。今後も,目的・場面・状況を考えて,適切な英語を使って表現を工夫することができる子ども達を育てていきたい。
また,この学習を通して,子ども達はふるさと熊本の魅力を再認識することができたと思う。将来においても学んだ表現や伝え方を工夫して,さらに新たに学んだ表現も使って再構築しながら熊本の魅力を紹介していってもらいたいと思う。