小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

iPadを活用した自宅学習
~休校中におけるオンライン英語学習~

近畿大学附属小学校 宮崎 慶子

1.はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大による突然の休校により,授業がストップしてしまうという初めての経験に,子ども,保護者,教員間に混乱が起こりました。子ども達の学びを止めないためにはどうしたらいいのか,自分にできることは何か,気づいたら同僚とともに動画の撮影を始めていました。
本校(近畿大学附属小学校)の5・6年生は,1人1台iPadを個人持ちしています。休校措置が取られてすぐ,途中で終わってしまった授業の続きを撮影し,オリジナルの課題とともに子ども達へ送りました。普段からロイロノート・スクールを使用し,動画の配信,ワークシートのやりとりなどをオンライン上で行っていたことが功を奏し,休校中も子ども達とのつながりを感じながら授業を進めていくことができました。
また,iPadを個人持ちしていない学年においては,4月に入ってから,担任とZoomを使った朝の会を実施したり,各教科からYouTubeにて限定公開での動画配信を行ったり,ロイロノート・スクールでの課題をチェックして返却したりと,子ども達とのつながりを大切にしながらオンライン学習を進めることにしました。

2.実践事例

① 授業動画配信とロイロノート・スクールによるやりとり

休校中の3月は,5年生では,休校の影響により終えることのできなかった「道案内」の単元をオンライン学習に移行しました。子ども達には,ただ動画を見るだけでなく,「go straight, turn right, turn left」などのターゲットセンテンスを練習する動画とともに,オリジナルクイズを配信しました。クイズの内容は,ネイティブの先生による英語の道案内を聞いて,地図上の4つの記号から出発し,7つのアルファベットを集め,集めた文字を並び替えて単語をつくるというものです。
そして,その答えの単語の絵を描いて提出させました。この問題の答えは,モンスターでした。子ども達は,それぞれオリジナルのモンスターを描き,単語を書いて送ってきました。
リスニングが難しくて,なかなか単語が完成しない子どもがいたり,単語の並び替えが上手くいかない子どもがいたりしました。普段の授業ではすぐそばに行きサポートすることができるのに,オンラインではできない。そんな難しさもありました。
しかし,ヒントの音声を吹き込んで返却したり,励ましのコメントを送ったりするなど,子ども達に寄り添いながら学習を進めていきました。学校で会えなくても,このように子ども達とつながり,保護者からも安心の声をいただきました。

4月に入ると,6年生では,新しく来られたネイティブの先生に,啓林館の教科書『Blue Sky elementary 6』Unit2 Welcome to Japan.で学んだ表現を使って,おすすめの「日本の食べ物」と「場所」をワークシートに記入し,音声を吹き込んで紹介するという課題を出しました。
事前に,子ども達にしっかりと相手意識を持たせるために,アメリカ出身のJason先生からのビデオレターを配信し,Jason先生がおすすすめの「アメリカの食べ物」と「場所」を先に紹介しました。
Jason先生が紹介したのは,スナック菓子のHot Cheetos Limeでした。見たことのない色と味のお菓子にびっくりしながらも,子ども達は「今度は自分たちの番だ!」と意気込んで紹介したいものを調べてワークシートに記入し,音声を吹き込んで送ってきました。中には,画像を貼り付けて提出をしてくれた子どももいました。様々な工夫を凝らし,自分の言いたいことを伝えることができました。

② オリジナル英語番組をYouTube(限定公開)で配信

今年度,休校期間中に全校児童へ向けて,英語科の教員で"Kinsho English Palace"と題したテレビ番組を制作し,週に1回10分~15分の動画を配信しました。
動画の内容は,英語科の教員,担任の先生,子ども達が日頃学校でお世話になっている守衛さんやお掃除の方などが,英語を使っての様々なクイズに挑戦するというものです。
全学年が対象ということで,レベルが徐々に上がるよう,Episodeごとに少しずつ難易度を上げたり,単元の中で高学年に向けたChallengeコーナーを設けたりするなど内容を工夫し,子ども達が見て飽きないように,何度でも見たくなるような内容を検討し,打ち合わせを重ねて動画の撮影を行いました。

③ Zoomを使った台湾の小学校とのオンライン授業

本校では,昨年度より台湾の小学校と交流をしています。今回は休校期間中に,6年生の希望者と台湾の小学校の英語の授業をZoomで繋ぎ,合同オンライン授業を行いました。休校中のため,子ども達は自宅から参加しました。参加希望者には,事前に中国語でのあいさつや,英語での自己紹介の練習動画を送り,質問してみたいことを募集しました。時間の都合上,全員が自己紹介はできませんでしたが,簡単なクイズと自己紹介を含めて約30分交流しました。
「自己紹介したい人?」という現地の先生の問いかけに,パッと手を挙げ堂々と自己紹介をする子どもがたくさんいました。初めて海外の同年代の子と話す子どもも多く,自分の話す英語が伝わると,みんなとても喜んでいました。

3.おわりに

今回の臨時休校措置に伴い,インフラやICT環境の大切さが明確になり,普段の授業や課題,学びの姿を見直すきっかけになりました。困難な状況の中,ピンチをチャンスに変えようと,本校ではZoomを使用し教員研修を行ったり,子ども達が参加できるオンラインイベントを開催したりと,様々な挑戦をしました。休校中でも,「こんなことができる」「あんなこともできる」と知恵を絞り,教師自身が探究心を持って取り組むことの大切さを感じました。そして,「学校でしかできない学びとは何か?」すべてがオンラインでできるようになっても,学校が存在する意味を考えるようになりました。特に英語という教科は,人と人とのつながり,コミュニケーションが大切です。相手の伝えようとする事を読み取ったり,相手に伝わるように伝え方を工夫したり,子ども達はリアルな場である教室で,友達や先生達と関わりながらそれらを学んでいきます。
今回の経験から,学校で学ぶ楽しさ,オンラインではできない学び,友達と一緒だからこそ深まる授業を意識して,日々の授業デザインに取り組んでいきたいと思いました。さらに,予測不可能な事態に陥っても,自ら課題を見つけ,自ら学び,考え,判断して行動できる子どもを育てると共に,我々教師も最適解を求める姿勢で授業デザインを構築する機会となりました。