2018年7月22日に2020年度開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコットの名前が「ミライトワ」と「ソメイティ」と公表された。いやがおうにも雰囲気は盛り上がってきているこの時期,小学校英語は2年間の移行期を経て2020年度から3,4年生は「外国語活動」,5,6年生は「教科外国語」が完全実施される。オリンピック・パラリンピックの盛り上がりとともに小学校英語への取り組みも本格化してきている。多くの外国人と日本各地,自分達の住む地域で今まで以上に出会うようになるであろう。英語がより身近になりより必要性が高まってくると予想できる。
現在多くの小学校では,「Hi,friends!」,「We Can!」,「Let's Try!」等を使って授業を進めていると思う。しかしながらこれらの教材は当然ながら内容が一般的で児童が住む地域に必ずしも合っているとはいえない。そこで,児童の住む町を教材にし英語が児童の日常生活に密接に結びついているような単元構成が必要と考え,本実践を行った。
なお,本題材である横芝光町は英語教育に特別な研究指定はないが,町として英語教育に力を入れており,町内小学校7校にすべてALT(合計4人)を配置し,全授業を担任とALTのTTによる指導が行われている。
英語で伝えよう,マイタウン ~Oh, my Yokoshibahikari!~
6時間扱い
回 | 主な内容 | 時配 |
---|---|---|
1 | 横芝光町にはどんな名所や名物があるだろう。 | 1時間 |
2 | 横芝光町を詳しく知ろう。※ふるさとカルタ | 2時間 |
3 | 横芝光町を紹介しよう。※ふるさとスゴロク,ふるさとマップ | 2時間 |
4 | 3年生を招待して発表会をしよう。 | 1時間 |
cherry blossoms, elementary school, junior high school, nursery school, hospital, library, leek,
fire station, post office, town hall, airport, bridge, station, restaurant
What is this? It's ~~. What do you like Yokoshibahikari? I like cherry blossoms.
本単元は高学年対象に作成した。ここでは5年生(男子10名,女子9名計19名)の学級で行った実践を紹介する。アンケート結果では,「英語がすき」(84.2%),「英語が話せるようになりたい」(89.5%),「ゲームやクイズがすき」(94.7%),「みんなの前で発表するのがすき」(36.8%),「横芝光町がすき」(89.5%),「横芝光町のことをよく知っている」(57.9%)であった。英語に関する関心は高いが人前で発表することを苦手としていること,自分たちの住む町をあまり知らないということがうかがえる。英語で自分達の住む町を紹介することはとても意味のある活動と考える。
ゲームが好きな児童にとって特にカルタは人気が高い。自分達の町である横芝光町にあるものをABC順に26ヶ所を選び作成した。 活動の始めでは,作成した26枚を紹介し英語での言い方を確認した。慣れ親しませるためにポインティングゲームやフライスワッターゲームやスリーヒントクイズなどを行った。こうした活動を十分に行い,横芝光町カルタを行った。
児童 | What do you like YOKOSHIBAHIKARI? |
教師 | I like KURIYAMA river. |
3~4人のグループになり行う。お手つきは1回休み,とったカードは手元に裏返しで置く等いくつかの約束事を決めておく。ゲームの最後には一番多くカードをとった児童を賞賛した。
Hi,friends!の前に使われていた「英語ノート」にある「スネークアンドラダース」をもとに作成した。サイコロをふり出た目のところにある画像について,他の児童が「What is this?」と質問する。該当児童は「It's a post office.」と答え次の児童の番となる。該当児童が答えがわからなかったら他の児童から英語でヒントをもらい,できるだけ答えられるようにする。どうしてもわからなかったときは1回休みとなる等のルールを決めておく。
町の観光マップをベースに作成した。
施設や名所が町のどこにあるか,意外と児童は知らないことが多い。地図上でどこに何があるかを確認し道案内の学習へとつなげた。これは,「Hi,friends!2 Lesson5 Turn right. 道案内をしよう」の学習にもつながる。
仮想の町ではなく自分達の町を案内するのだから児童の関心も高まる。例えば,自分たちの学校をスタート(You are here.)とし,Where is Yokoshiba station? Go straight. Turn left.等と案内していくのである。実際の観光マップなので曲がった道も多く案内も大変だが児童は興味をもって取り組んでいた。
学習のまとめとして3年生を授業に招待して発表会を行った。2~3名の小グループにわけ,町の中から一つの場所を選び英語で紹介する活動である。クイズ形式にしたり特徴をまとめて発表したりと自由に考えさせた。習っていない単語も和英辞典を使い積極的に調べる姿も見られた。
「Little tern」
My name is S. My name is A.
This is Little tern.
It's a bird.
It's black and white.
You can Kidohama beach.
ALTコメント「You can see Kidohama beachと言ったほうがいいよ。」
発表ではALTに審査員をしてもらい,発表ごとにコメントをもらうようにした。
本学級にはフィリピンからの帰国子女が1名在籍しておりかなり英語が堪能でやさしすぎるといっているが,他学年と一緒に活動することによりいい意味での緊張感をもつことができている。
単元終了後の児童の感想をみると,郷土の学習に84%の児童が肯定的であった。
外国語活動で自分たちの住む町を紹介することで英語の学習だけではなく郷土を知ることにもつながっている。カルタ・スゴロク・マップと3つの教材を取り上げたことでそれぞれのよさがみえてきた。実態や興味関心に応じて使い分けていくのがよいと思う。
本活動の関連をみると,We Can!2 Unit4「I like my town. 自分たちの町・地域」,Hi,friends!2 Lesson4「Turn right. 道案内をしよう」,Let's Try! 2 Unit8 「This is my favorite place. お気に入りの場所をしょうかいしよう」等とつながる。英語が児童にとってより身近に感じられ,英語を実際に使ってみたくなるような気持ちにさせる単元構成を考えたとき,郷土を紹介する活動は有効ではないだろうか。今後は,意欲を重視したことでやや文法や語彙の使い方の指導に課題が残ったので修正をしていきたいと思う。