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英語

自然なかかわりを大切にした 外国語活動での教材や教具の工夫
「色と形であそぼう ~マイバタフライ作り~」

川崎市立苅宿小学校 豊竹 美喜子

1 はじめに(児童の実態)

本校は,本年4月より川崎市の「平成29・30年度 外国語活動研究推進校」に指定され,研究を開始した。

研究のテーマは

「発信しよう,受け止めよう,伝えたい気もち ~あたたかい雰囲気を大切にした関わりの工夫~ 」

それは,

  1. 英語について苦手意識を持たせないように,間違えてもそれが当然であるという環境作りをしたい。
  2. 普段から英語を使って人と関われるようになってほしい。

という教師の思いからテーマを取り上げ,研究を進めている。

第1,2学年で年間10時間,第3,4学年で年間35時間,第5,6学年で年間70時間の配当で外国語活動を行う予定である。

報告者が担当している第3学年の学級においても,研究テーマを念頭に置いて,子どもたち同士が自然に相手を意識しながら関われるような活動や教材について工夫して授業を進める中で,6月には「色と形であそばう ~マイバタフライ作り~」を実践した。以下,その報告である。

2 授業実践 「色と形であそぼう ~マイバタフライ作り~」

(1)児童の実態と単元について

学級の児童の実態やアンケートの結果から,多くの児童が外国語活動の時間を楽しみにし,英語を話せるようになりたいという前向きな気もちであることが分かった。反面,英語に対して苦手意識のある児童が学級の37%であった。そこからグループやペアでの活動を多く取り入れながら,お互いのよさに目を向け,安心して英語に親しめるような活動を進めたいと考えた。また,子ども達同士が自然にかかわれるような活動の工夫に視点をおいて計画を立てた。

本単元では,色や形を扱っているため,普段の生活の中でも聞いたり,言ったりしたことのある身近な語彙が多く,児童も不安感をもたずに取り組めると考えた。身近な言葉だからこそ,英語と日本語で使う音の違いにも気が付けるようによく聞かせ,その違いに気付かせたかった。

絵本 “A Beautiful Butterfly” は,理科でモンシロチョウの育ちを学習していること,扱っている語彙が日本語の中にあることや繰り返しの表現が多いことから,子ども達が内容を捉えやすい。また,絵本からつなげてマイバタフライ作りをすることで単元を通して,お互いの好きな色や形を知る活動を設定し,友だちの新たな一面に目を向けるきっかけにしたいと考えた。

(2)指導の計画(4時間)

◆目標・○活動
1
  • ◆色の言い方を知り,ゲームの中で楽しみながら使う。
  • ○キャラクターあてクイズをする。
  • ○色の言い方を知る。
  • ○色の言い方を使ってゲームをする。
  • ○絵本の読み聞かせを聞く。
2
  • ◆色や形の言い方に興味をもち,色や形に関する語句をゲームの中で楽しみながら使う。
  • ○友だちとのやりとりの中で,マイバタフライを好きな色で塗る。
  • ○形の言い方を知る。
  • ○フィンガータッチングゲームをする。
3
  • ◆色や形の言い方を用いて,マイバタフライに必要な材料を集める。
  • ○教師の作ったマイバタフライ当てクイズをする。
  • ○色や形の言い方を復習する。
  • ○やりとりの中で好きな色や形カードをもらう。
4
  • ◆色や形の言い方を用いて自分が作ったマイバタフライを紹介する。
  • ○マイバタフライ作りをする。
  • ○マイバタフライの紹介をする。

言語材料

主な語彙

color, red, green, blue, yellow, pink, black, white, brown, orange, purple, gray
circle, triangle, square, star, heart
This is~. This is my butterfly.

主な表現

What color do you like? / I like ~.
~, please.
Here you are. / Thank you.


児童が作成したマイバタフライ

(3)活動の工夫と児童の反応

<1時間目>

〇キャラクターあてクイズ
<活動の工夫>
  • パワーポイントを使って,テレビに子ども達の好きなキャラクターの色を一色ずつ出していった。色を言いながら,何のキャラクターか問題を出した。
  • 何度も繰り返し単語を聞かせたり,発音したりするようにした。
  • 活動で扱う色を全て取り込めるように,問題に出すキャラクターを事前に選んだ。
<児童の反応>
  • 子ども達の好きなキャラクターを扱うことで興味をもち,積極的な姿勢で取り組んでいた。
〇色の言い方を使ったゲーム

<ゲームの内容>
  • ①担任がグループを作る人数を指示する。
  • ②指示された人数で集まる。
  • ③順番に自分の名札のリボンとカードの色を言い,それ以外のメンバーが復唱する。
  • ④全員言い終わったら座る。
<活動の工夫>
  • 名札は4月のあいさつの活動で作成した。
  • 自分の好きな色のリボンと画用紙を選んで作った名札を使うことで,たくさんの色にふれるようにする。
  • ゲームのやり方は児童と実演しながら説明する。
  • お互いに声をかけ合ってたくさんの友だちとかかわれるように伝えた。
<児童の反応>
  • 自分の好きな色で作った名札を大切にしながら,意欲的に色を口にしていた。
  • 一人ずつ色を言い,その後に全員で復唱することでよく聞き,よく言おうとしていた。
  • 教師から働きかけないと,同じ友だちと繰り返しグループを組もうとする様子が見られた。
  • 正しい発音を忘れてしまう様子も見られた。
〇絵本の読み聞かせ “A Beautiful Butterfly”

<児童の振り返りから>
  • 日本語と似ている言い方を見つけた。
  • 日本語と同じ言葉でも言い方が違う。
  • 英語だと「ピーンク」とのばす感じで言う。
  • 英語の言い方は音と音がまざっていることに気が付いた。
  • オレンジの「オ」の言い方がちがった。
  • 英語はリズムがあった。
<活動の工夫>
  • 子ども達に問いかけながら,“A Beautiful Butterfly”を読み,絵本に興味が向くようにする。
  • 最後のページのちょうの色を教師が色を塗ったものを用意する。自分の好きな色や形を使って,自分だけのマイバタフライを作っていくことを最後に伝え,次時につなげるようにした。
<児童の反応>
  • 読み聞かせを聞きながら,知っている色や果物の英語を楽しそうに口にしていた。
  • 自分だけのマイバタフライが作れることをとても楽しみにしていた。

<3時間目>

〇友だちとのやりとりの中で好きな色や形をもらう

<児童の振り返りから>
  • スターの「ス」は歯の間から空気を出す感じに言えば上手に言える。
  • 日本語の「ス」と英語の「S」の言い方が違う。
  • 最後の一文字がほとんど消えていることがある。
  • ALTの先生の口を見ながら言いました。
<活動の工夫>
  • マイバタフライを仕上げるためのcircle, triangle, square, star, heartの5つの形を9色で用意する。
  • 一人ひとりがランダムに色や形の材料をもち,やりとりをする中で,必要な材料をもらっていく。
  • 相手の欲しいものを持っていなかった場合には ”I’m sorry.”と言うことも練習し,自然なやりとりができるようにした。
<児童の反応>
  • ほしいものをもらうためにいろいろな友だちに自分から積極的に声をかけていた。
  • 言い方が分からなそうな様子が見られる場合はALTと担任で支援をした。

<4時間目>

〇マイバタフライの紹介

<児童の振り返り>
  • 練習を頑張ったので,形を英語で上手に言えました。
  • はずかしかったけど,大きな声で上手に言えました。
  • たくさん言うときは“~,~,~,and~”ということが分かった。
<活動の工夫>
  • ALTや担任の実演をみて,マイバタフライの紹介のやり方を知らせた。
  • グループの友だちと繰り返し練習する時間を作り,自信がもてるようにした。初めての英語での発表なので失敗してもよいことを伝えた。
<児童の反応>
  • とても緊張した様子だったが,マイバタフライを発表することができ,自信につながったようだった。
  • 友だちのマイバタフライのよさをみつけて伝えている児童もいた。

3 おわりに(成果と課題)

この単元では,マイバタフライの紹介を活動のゴールに置くことで,子ども達も目標をもち活動していた。また,友だちとのかかわりを楽しむ様子も見られた。

1時間目は,音の違いについてよく気が付いて練習していた。担任として,音の違いを言葉で説明することを求めてしまったが,違いを感覚的に感じられていれば十分であったと思われる。英語での発音をたくさん聞く中で,ALTの口をよく見ることや,音の違いに耳を傾けることの良さにも気づき,前向きに活動する姿が見られるようになった。このような姿勢を身につけて高学年へとつなげていきたい。3年生ということもあり,時間が経つと忘れてしまうこともあるが,子どもなりの気づきや感覚のするどさを大切にして,これからも外国語活動の時間を進めていきたいと考えている。

外国語の教科化へ向けての準備は誰もが初めてで先が見えず,不安で失敗することも多々ある。そんな中でも,職員一同で力を合わせて研修,授業実践や協議を重ね,教員自身も少しずつ自信と力をつけていけるよう取り組んでいきたい。

参考文献
絵本 APRICOT “A Beautiful Butterfly”