本校は平成25年度より文部科学省の研究開発学校の指定を受け,小学校英語を教科化し,「話す」「聞く」だけでなく,「読む」「書く」を含めた英語の初歩的運用能力の育成を目指している。とりわけ,北海道教育大学の附属小・中学校8校が連携し,発達段階に応じたカリキュラム編成や教材・授業開発に取り組んでいるところである。
現在,小学校英語の授業は,低学年で17時間,中・高学年で35時間を充てている。低学年では語彙数を増やすために単語を中心に取り組み,中学年では短いフレーズを用いてコミュニケーション活動を行っている。また,高学年では,自分自身や相手に尋ねてみたいことなど,授業で学習した長めのセンテンスを用いて交流している。
教科化により時数が増えたことで,各学年で年度当初に「あいさつ」を扱うなど,繰り返し取り組むことができ,積極的にコミュニケーションをとろうとする児童が増えているという実態がある。研究面では,「想創の学びを築く」をテーマに,児童の想像力と創造力を大切にした問題解決的な学習の在り方を英語の学習において模索している。
第4学年 「どこにありますか?」
場所を尋ねる表現 “Where is ~?” を使ったコミュニケーションを学習する。物が置いてある場所を尋ねたり答えたりする中で,場所を表す前置詞の大切さに気づくことができるようにする。
“Where is the coin?” “It’s in[on/under] ~.” / “Here it is.”
本単元は4時間扱いで以下のように活動を構成した。
本時の板書と大まかな流れを以下に示す。
授業の導入は,絵本Where’s Spot? の読み聞かせから始めた。母犬が子犬を探すというわかりやすいストーリーの中に,さまざまな前置詞と家具や動物が出てくる。大型絵本を使用して読み聞かせをしたり,電子黒板を使用して児童と声を出して読み進めたりしながら,英語の音に慣れさせていった。初め,児童は家具や動物などの名詞に意識を向けていたが,絵や文を比較していくと,前置詞の使い方にも目を向けていく様子が見られた。絵本にはない場面をあえて提示し,児童に「この時のSpotの位置はinと言ったらよいかな? underと言ったらよいかな?」と考えさせ,inは「中」,underは「下」などの大体の意味をおさえた。また,絵本にはないonを提示し,表現に広がりをもたせた。児童は「onは上」と簡単に答えるが,「どうしてそんなことがわかるの?」と問い返し,前置詞の意味をより実感を伴って考えることができるようにした。
Eric Hill, Where’s Spot?, Warne, 2003
さらに,「教室の中でペアになりコイン探しゲームをする」という活動Ⅱにつながる内容として次のような学習も行った。
<対話例>
A: Where is the pencil?
B: Here it is.
A: Thank you.
授業の後半では “Where is the coin?” というコイン探しゲームをするが,その際,活動Ⅰのように,尋ねられた時に “Here it is.” と答えては場所が特定できないことから, “It’s on the desk.” や “It’s under the blackboard.” などのフレーズの必要性を実感させ,確かめておく。次に,下のようなピクチャーカードをたくさん用意し,場所を特定する表現を確認させておく。
“It’s on the desk.” のカード
“It’s on the piano.” のカード
ゲームに使ったコイン
最後に,あらかじめ教師が教室内のさまざまな場所に隠しておいたコインを,隣同士がペアになって探す “Where is the coin?” ゲームを行わせる。ゲームでは,ペアの一方にコインの隠し場所を示すピクチャーカードを渡し,その内容に沿って “Where is the coin?” “It’s on the desk.” などとやりとりをしながら,コイン探しを行わせるようにした。
“under the blackboard”は,ここだよ
<対話例>
A: Where is the coin?
B: (カードを見て)It’s on the desk.
A: (教室内の机の上を探す。Bのところにコインを持ってきて)Here it is.
B: Yes. That’s right. / No, sorry.
終わったら,もう一方の児童に別のカードを渡し,同様の活動を行わせた。
この活動のよさは,自分が英語で伝えたことが相手の行動によって伝わったかどうかを確かめられるということである。児童の様子を見ていると,ペアの子が探すのをよく見て「黒板は合っているよ!」「でも,inだから中だよ!」などと話している姿があった。初めの絵本の読み聞かせや活動Ⅰで身に付けた知識を,活動を通して習得していくという展開は一般化もしやすく,児童の実態によく合っていたと言える。
ちなみに,その後の活動では,コインとは別のピクチャーカードを用意し,「宝探しゲームをしよう」という活動を行った。ここでは,グループ内で宝物を隠す役割と探す役割を分担し,児童が主体となって,活動を進めるようにした。活動Ⅱまでの経験から,楽しみながら物の場所を尋ねる表現に慣れ親しむことができた。
英語の活動というと,教師側から「このような活動をしよう」と投げかけ,活動をさせることが多い。しかし,児童にとって考えたくなるような仕掛けや仕組みをつくって,問題解決的な学習を行うことが重要であるということが明らかになった。今後もこのような学習を積み上げていきたい。また,授業後の児童の感想から,何度も同じような活動を繰り返すことで,自信を持って友達とコミュニケーションがとれたこともわかった。発達段階に応じ,学習内容がスパイラルに扱われるようなカリキュラム・授業づくりを考えていきたいと思う。
※本実践は本校の小学校英語担当,佐々木歩教諭の指導案をもとに実践を行い,再構成して記録化したものである。