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英語

ふるさと愛を育み相手意識を高める「主体的・対話的で深い学び」の外国語授業実践
~Blue sky elementary 6 Unit2&3アレンジ Welcome To 糸魚川 Project~

糸魚川市立糸魚川小学校 永島 悠一

1.はじめに

私のモットーは,自分たちの地域の魅力を伝えることを通して,地域の魅力に気付き,郷土への愛を深める所にある。Unit 2「Welcome to Japan」は,通常5月頃に取り組む。しかし,ALTは,糸魚川市に6年間住んでいた。既に糸魚川市のことをよく知っているので糸魚川市の魅力を伝えるには必然性が薄い。そこで2学期に来日する新任ALTの先生方をターゲットに決めた。糸魚川市のことをよく知っている児童と糸魚川市の魅力を知りたいALT,絶好の交流のチャンスである。本プロジェクトには,新任のALTに児童の糸魚川紹介を聞いて,糸魚川市での生活が楽しみになってほしいという願いを込めている。本記事では,Unit2&3をアレンジした「Welcome To 糸魚川 Project」について紹介する。

2.実践紹介

(1)単元名Unit2&3 Welcome to Itoigawa Project
新しいALTの先生方に糸魚川1日ツアーを紹介しよう

(2)単元のねらい

新任ALTに糸魚川の魅力を伝える交流活動を通して,郷土愛を深め,ふるさとの魅力を主体的に伝えようとする意欲と相手意識を高めること。

(3)単元計画

内  容
1 ALTからのリクエスト映像を観て,単元の見通しをもたせる。
*事前にALTに取材し,プロフィールを準備する。
2,3 町紹介をする表現を知る。(You can enjoy~. We have~)
友達とのやり取りを通して,言語材料に慣れ親しむ。
4,5 糸魚川の名物を調べる(ガイドブック,家族から聞いてくる)
発表準備(スライド,ホワイトボードなど)
名物紹介の発表練習をする
6
(本時)
交流会:ALT(7人)に糸魚川の魅力を知ってもらうために,糸魚川おすすめ一日ツアーを提案する。
7 単元の振り返り

【新任ALTからのメッセージビデオ】
Hello. Itoigawa elementary students.
My name is Tim. I'm from Iowa, USA.
I'm new to Itoigawa.
Please tell me good places.
I like to eat sushi and noodles.
I want to see beautiful nature.
I want to go on beautiful walks.
I'm good at science. I like map.
I'm looking forward to meeting you.
Thank you

(4)第6時の実践

○学習活動 ・予想される児童の反応 ○教師の支援 ◎評価<評価の方法>
導入5 ○ALTの自己紹介を聞く
〇学習の流れを知る
○本時の流れを示し,活動の見通しを持たせる。
展開30 

◎本時の課題
糸魚川の魅力を知ってもらうために,「おすすめの糸魚川1日ツアー」を紹介しよう。

○ALTに「糸魚川1日おすすめツアー」を紹介する。(前半)各班1回5分×2回行う。(①紹介②質問タイム)4人一班で8班想定。

○机間巡視をしながら,児童の工夫や良さを見つけほめる。交流の様子を画像や映像に残す。

発表例

○中間指導:前半交流してみて,工夫したこと,困ったことやわからなかったことを共有する。

・きれいな海って何て言えばいいかな→beautiful sea

・始めに好きなものか質問して興味を引いたよ

・リアクションをしてくれてうれしかった

○ALTに「糸魚川1日おすすめツアー」を紹介する。(後半)
各班1回5分×2回行う。(①紹介②質問タイム)

中間指導

前半の活動のよかったところ,工夫している事などを活動の様子を示しながら紹介する。
英語でなんて言うかわからなかった言葉はないか共有しクラスで考える。

◎食べ物・観光名所・行事・自然などの言い方や,糸魚川のことを紹介する言い方を用いて,自分の考えや気持ちを入れながら紹介している。【思考力・判断力・表現力等】

◎ALTや友達に糸魚川のことが伝わるように,進んで紹介しようとしている。【学びに向かう力,人間力等】

終末10  ○ALTから発表に関する感想を言ってもらう。
○本時のフィードバックを聞く

○振り返りシートを書く

○できるようになったことや頑張ったことなどを 振り返り,達成感をもてるようにする。

(5)主な手立て

児童はALTリクエスト(ALTの嗜好や興味が載ったもの)を基に糸魚川のお勧め1日ツアーを班ごとに観光パンフレットやインターネットを調べてALTが喜ぶ1日ツアーを準備してきた。台本通りではなく試行錯誤しながらALTと即興的なやりとりを経験させるために主に次の3つの手立てを講じた。

〇手立て1 糸魚川ALTリクエスト

夏休み中にALT全員からビデオレターを送ってもらった。

糸魚川ALTリクエスト

このリクエストには,ALTの自己紹介をはじめ,好きな物と糸魚川でやってみたいことが載っている。
児童は,ALTの嗜好を基におすすめするものを決めて,1日ツアープランを考えさせた。「A先生は,甘いものが好きだって言ってから,ケーキのおいしい中島菓子屋を紹介したいな」「M先生には自然とハイキングが好きらしいから,高浪の池でボートやBBQ,釣りをして一日楽しんでほしいな。最後にひすいの湯に入ってリラックスして完璧!」とALTが喜ばせたい気持ちで準備していいた。

〇手立て2 ホワイトボードとタブレットを活用した発表

児童はホワイトボードに「朝→昼ごはん→午後→夕方」に区切った1日ツアーの流れを示し,タブレットでお勧めの食べ物や観光名所の画像を見せて紹介した。主なお勧めツアーとして「高浪の池1日プラン①ボートに乗る→②BBQ→③ゴルフ&釣り→④ひすいの湯&重寿司」「①谷村美術館→②あさひ楼ラーメン→③ひすい海岸→④DENKA工場の夜のライトアップ」などであった。自然が大好きなALTに自然の中でいろんなことをして楽しめるツアーや地元住民だからこそ知っているDENKA工場のライトアップなど,自分たちの生活経験を基に良いと思う糸魚川の魅力を提案していた。

糸魚川おすすめ1日ツアーホワイトボード

〇手立て3 中間指導

3つ目の手立ては前半の発表後の中間指導である。交流会の流れは「前半2回紹介→中間指導→後半2回紹介」とした。中間指導では,前半の交流のよかったところ,工夫している事を活動の様子を示しながら紹介した。「You can eat delicious ramen. Do you like ramen? I like 醤油ラーメン」と自分の好きなものを言ったり,ALTに好きか質問したりして即興的なやりとりを楽しんでいた。さらに,英語で何て言うか分からなかった言葉はないか共有しクラス全体で考えた。「露天風呂って英語でなんて言いますか」と声が挙がった。「中(inside)の反対は外だから,outside bathって言えば伝わると思います。」と他の児童から発言があり解決できた。おかげで後半では,相手を意識してやり取りする姿勢と前半伝えられなかった英語を自分の英語で言い換える姿が増えた。

中間指導の板書

(6)考察

ALTとの交流会後に児童にアンケートを実施した。5段階の質問に対して,「とてもはい・はい」と肯定的に回答した結果は次のようになった。英語学習とコミュニケーションに関しては,「(ALTに糸魚川のお勧めを伝える交流活動によって,)もっと英語を勉強したいと思いましたか ?(79.5%)」「外国の人ともっとつながりたい(コミュニケーションしたい)と思いましたか?(76.5%)」と約8割近くの児童から肯定的な回答をした。
児童の感想に「英語は得意じゃなかったけれど糸魚川1日おすすめツアーのおかげで英語が好きになりました。もっと外国の人と話したい!観光客の人とコミュニケーションを取りたいと感じました。どう表現すれば伝わるかどうしたら行きたくなるかを考えながらやるのが楽しかったです。」と英語でコミュニケーションする楽しさを感じていた。「最初は緊張してうまく話せなかったけど,だんだん話していくにつれて途中からは,上手く話せなかったのが,だんだんと話せるようになってきて楽しく,うれしくなってきました。また,このような機会があればうまく話せるようになりたいです。」と粘り強くやり取りする姿が見られた。以上のことから交流学習が「英語学習」「コミュニケーション」の動機付けが図られたと考えられる。
ふるさと愛(自文化理解)については,「ALTに糸魚川のお勧めを伝える交流活動によって,糸魚川についてもっと知りたいと思いましたか?(79.5%)」「糸魚川の魅力をもっと発信したいと思いましたか?(79.5%)」と約8割以上の児童が肯定的な回答をした。
「糸魚川の町の魅力を知ってもらうために,糸魚川の町のPRがもっとできるとしたら,どこへどんな人へPRしたいですか?」の質問には,主に他都道府県の人(54.5%)外国人観光客(54.5%) 海外の小学生(42.4%)と半数以上の児童が国内外の人へ糸魚川の魅力をPRしたいと回答した。
感想では「糸魚川のお勧めの所をALTの先生方にたくさん知ってもらえてそして紹介したお店や温泉に行ってもらえてうれしかったです。」とALTがお勧めの場所に実際に訪れてくれたことに交流の達成感を感じていた。この結果から,町の魅力を伝え合うALTとの対面交流がふるさとの魅力を知りたい意欲につながり,自分たちの町の魅力をもっと発信したい動機付けが高まったことが分かった。

3.おわりに

初めての大勢の外国の人達との対面での交流だった。練習の段階では,やる気があまり上がっていなかった児童も,いざALTを目の前にし,すぐに英語が伝わることもあったが,なかなか伝わらない場面も見られた。伝わらない経験が「本当に伝わるために自分はどうすべきか」を考える絶好の機会となった。なかなか伝わらないからこそ,思考が促され試行錯誤する。その経験を経て,相手意識は高まると感じた。「失敗したこともあったけどALTの先生に糸魚川の沢山の魅力を伝えられたような気がしたから良かったと思いました。分からない英語も教えてもらいながらやることで新しい発見をしたのでこれからの英語の授業に生かしていきたいです。」と伝わらない経験を糧に相手をより意識しようとする姿が見られた。

「ALTの先生たちと話したことで外国人と話すのは楽しいということを学びました。話す時はドキドキするけど楽しく話してくれるALTのおかげで違う国の人と話す楽しさを知りました。」のように今後も児童が夢中になれる「目的,場面,状況」を設定し,より相手意識を高められるように更なる外国語学習の発展に取り組んでいきたい。