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英語

グローバルな未来を生きる子供たちのために

はつしば学園小学校 東野 邦子

1.はじめに

はつしば学園小学校は,2023年度に創立20周年を迎え,2025年度からは,校名も「利晶学園小学校」に生まれ変わります。伝統のある小学校ではありませんが,その分,改革や変化に対してのハードルが低く,英語教育についてもどんどん進化しています。

教材の採択や授業時間,授業展開も含め,毎年見直し,良いと思ったものは躊躇せず取り入れ,変化を恐れず,むしろ積極的に変わっていきながら向上しようとしています。

まだまだ,発展途上ですが,英語教育から国際教育へと舵を切り,より明確に英語を学ぶ意味を教える側が問い続けています。本校での英語教育が,25年後の社会に出てから一人の大人になった子供たちの自信や生活を支えていくことが「はつ小」の願いです。

2.変化するはつ小の英語教育

創立時から,これからの時代を生き抜くには,「英語」が必須と学校の方針を定め,1年生から2時間の英語教育を実施していました。当初,外部業者に委託して業者のシステムを使いつつ,徐々に本校独自の教育を模索する中,ついに,7年前「GrapeSEED」の導入とともに,学校主体で英語教育に取り組む体制を構築し,その後,習熟度別へと進化させたことで,英語経験者やインターナショナルスクール出身の児童の入学が増えています。

2年前からは,検定教科書に加え「English Code」(アメリカ)の使用,1年前から「Weblio Study」を本格導入,今年度から,更に「Weblio Study」の内容の精査と授業形態の見直しをかけました。

現在は,「楽しい,話せる英語」から,より高度で,25年後を見据えて高校入試や大学入試につながる「ライティング力」や「文法力」,更に国際社会で自国の文化を身に付けて,真のグローバルな人材としての素養をいかにつけるかが課題となっています。

(1)低学年英語

「GrapeSEED」で「英語が楽しい!」「英語が好き!」が目標です。

今年度から,5人のネイティブ教員が3クラス5展開の習熟度クラスを担当し,同時展開をすることで,担任も学年全部の児童の英語への取り組みを把握できるようにしました。日本人の先生のサポートで,初めて英語に触れる子どもたちも,英語嫌いになることがないよう丁寧にフォローしています。

英語が身近にあるものだという認識は,幼いほど自然に体得できるはずです。そこで今年度からは,図工の授業を英語で実施しています。今後更に感覚的な教科での導入を考えています。

実際の授業では,「GrapeSEED」を通じて,歌ったり踊ったり,子どもたちが楽みながら取り組めるような展開を心がけています。また,1年生から「GrapeSEED」のフォノグラムカードを使って音と文字が結びつくように練習しています。2年生からはフォニックスのワークシートやWriterを使って短い単語を音を聞いて書けるように練習しています。

(2)中学年英語

低学年英語で実施した「GrapeSEED」を進める一方で,iPadを使用した「Weblio Study」を2年前から新たに導入しています。低学年の楽しい英語と並行して,英語検定の全員受験をはじめ,読み書きにも目を向け,本格的な英語学習の礎づくりを意識しています。また,スタートラインが違うだけでなく,習熟速度も差がついてくるこの時期に「個別最適化学習」を取り入れることによって,低学年からの学習の成果を存分に引き出したいと考えています。

具体的には,週2回,ネイティブ教員による「GrapeSEED」で,フォニックスのワークシートやWriterを使い,楽しむだけでなく,長文を読んだり短い文を書いたりしています。フォニックスの基本を一通り学習し,定期的にチェックテストを行うことによって定着を図っています。また,週1回,「Weblio Study」を使用し,英検対策にも力を入れています。「Weblio Study」では,英検級別の課題を通じて,音読やシャドーイング,ディクテーションのトレーニングを行い,4技能全ての力を伸ばすことを意識しています。

(3)高学年英語

いよいよ高学年になると,これまでの英語教育の集大成です。「GrapeSEED」を終え,本格的に中学教育・高校入試・大学入試・社会で通用する英語(コミュニケーション力)への橋渡しを意識しています。

中学生になった時の学習定期テスト対策・高校入試・大学入試のため,「読む」「書く」「聞く」の文法や語彙力をも視野に入れたきっちりとした英語を大切にしています。

また,分析の結果「書く」が弱い傾向を受け,今年度から「AIライティング」を導入しました。

社会に出てからの生きた英語のため,昨年からWeblioでは「CONVERSATION」でマンツーマンの英会話を海外と繋いで行い,コミュニケーション力を含む英語力を鍛えています。また4年生から全員参加で行うレシテーションコンテストは,高学年でいよいよ本格的になります。外部から審査員を招き,人前で発表する自信を育み,実際に外国人と対峙しても,物おじしないで,存分に力を発揮できる鍛錬の機会を設けています。 

英語学習が,4年を超えるこの時期,2年前からはアメリカの教科書「English Code」を使い,単に英語の理解から更に進んだ「知的好奇心」を育てるツールの一つとしての英語を意識することも始めています。

ネイティブ教員による「English Code」のレッスンの他,「Weblio Study」「Weblio英会話」,検定教科書「Blue Sky」の授業をバランスよく行っています。「English Code」と検定教科書「Blue Sky」,「Weblio Study」を相互的に学ぶことにより,英検対策をはじめ,楽しいだけの英語で終わらないはつ小英語教育として,小さいころから英語学習を始めた子どもが,中学校以降の英語学習や英語活動で苦労することのない英語を心がけています。

<Blue Sky授業実践例>

Blue Sky elementary ⑤(5年生)p.12-13を使用。

3.国際教育の一環としての英語教育

近年,世間ではAIの台頭が,大きく取りざたされ,実用化も加速度的に進んでいることを肌で感じる機会が増えました。英語も日常の観光や買い物程度なら機械がこなすこともいよいよ現実味を帯びてきました。児童が社会に出る頃は,もはやそれが常識になっていることでしょう。そんな中で,真のグローバル化とは何か,英語を学ぶ意味は何か,改めて問い直さなければならない時が来たと感じています。

そこで,英語教育を国際教育の一翼を担うものとして位置づけ,自国の文化,今住んでいる国の文化をよく知り,発信する。他国の文化や価値観を知る。自国の文化や伝統を誇りにできるような教育の必要性を感じています。

そこで今年度から,従来大切にしてきた本校のお箏や和太鼓に加え,茶道と華道を1年生から必修としました。

「英語を学ぶ」から,「英語を通して広い視野を持つ」教育へとはつ小の英語教育が今,進化しています。

4.おわりに

21世紀に入って,この世界の変化は大きく,またそのスピードも速くなっています。未来を生きる私たちの大切な子どもたちのために,何ができるかを日々考えています。

情報があふれ,その情報も玉石混淆である以上,本物を見極める力が必要になってきます。情報に踊らされない確かな学力ももちろん大切ですし,思考の基礎となる母国語も今後ますます重要になってくるでしょう。

そして,世界がこれだけ小さく身近になっている以上,世界言語である「英語」の習得は,もはや,必須です。柔軟な小さいころから,英語を体得することは,ある程度大きくなってからの学習とは違った効果が必ずあると信じてはじめた本校の英語教育は,今では本校の教育の柱の一つに育ってきています。

これからも20年の積み上げを大切にしつつ,かつ進取の気鋭を忘れることなく,時代に合わせて変化していきたいと思っています。