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「もっとまちの人となかよくなろう」 |
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栃木県佐野市立三好小学校 鈴木 理恵 |
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本校は,地域の教育力を取り入れることによって,人や自然,地域社会とのかかわりを実感し学びを深めていく生活科を展開してきている。自分の考えや思いを伝え合い,児童が主体になって活動できる学習を目指してきた。児童には,活動を通して様々な人とかかわり,自分たちで課題を調べたり解決したりしていこうとする力が徐々に育ってきている。
ここでは,生活科のこれまでの研究の成果を生かすとともに,児童の気付きの質を高め,学びをさらに深めていくためにどのような支援をしていったらよいかを考えながら実践したことを発表したい。
もっとまちの人となかよくなろう(21時間)
地域の人たちとのかかわりを積極的に深めたり,公共物や公共施設を安全に,気をつけて正しく利用したりして,地域の人や場所への愛着を深め,人々と適切に接することや地域で安全に楽しく生活することができる。
本単元の活動は,6月に学習した「わたしのまちをたんけんしよう」から継続・発展するものである。子どもたちは,春の町探検や夏休みの体験を通して自分の生活圏である地域の様子が分かり,人や場所とのかかわりを広げてきている。それにつれて「今度は○○に行きたい」「○○をしてみたい」「○○の人と話をしてみたい」など,地域とのかかわりの姿を具体的に思い描くようになってきた。
そこで,こうした児童の思いをふまえ,「もっと地域のことが知りたい」「○○さんと話がしたい」といった明瞭な目的意識をもって,主体的に地域にかかわっていく活動を設定し,前回の町探検より,かかわりに一層の広がりや深まりが見られるようにしたいと考えた。教師の願いや思いを込め,「もっとなかよくなってこよう」「つっこんだ質問をしてこよう」と子どもたちの気持ちが高まるような支援をしたい。子どもたちは,かかわりを通して愛着のある人や場所を増やし,地域での生活をよりよいものにしていこうとする態度を育んでいくと考えられる。
第1次 | なつのまちでしたことをおしえあおう | (3時間) |
第2次 | まちにいくけいかくをたてよう | (3時間) |
第3次 | もっとまちのひとたちとなかよくなろう | (3時間) |
第4次 | まちのげん気をさがしにいこう | (4時間) |
第5次 | まちのやさしさをさがしにいこう | (4時間) |
第6次 | まちのすてきをおしえあおう | (4時間) |
生活科においては,児童が自分の思いや願いをしっかりもつことが重要である。そして,教師が一人一人の思いや願いに寄り添うことで,一人一人の気付きを促し,気付きが質的に高まることによって,活動や体験がさらに充実していく。そこで,気付きの質を高めるために,指導にあたって次のことに配慮した。
○5月〜6月に実施した「わたしのまちをたんけんしよう」との連続性を図る。
「わたしのまちをたんけんしよう」「もっとまちの人たちとなかよくなろう」の両単元ともに大きく分けて「計画」「実施」「まとめと発表」という3つの流れで授業をつくりあげてきた。そこで,「わたしのまちをたんけんしよう」での実践の様子からさらに気付きの質を高めるための指導の工夫や支援の在り方を考え,「もっとまちの人たちとなかよくなろう」の授業づくりを構想した。
支援にあたっては,「計画」「実施」「まとめと発表」という授業形態の連続性だけではなく,子どもたちの内面でのつながりを特に重視した。初めのかかわりで感じたこと,驚いたこと,不思議に思ったことなどをグループやクラス全体で話し合い,さらに「もっと詳しく調べてみたい」「今度はこんなことを聞いてみたい」という新たな意欲,願いをもって2回目の探検に向かうことができるよう,意識の流れの中での連続性を図ることに努めた。
○意図的に「気付きの価値付け」を行う。
気付きの質が高まった様子を見逃さずに「気付きの価値付け」を行うようにした。児童が何気なく発した言葉やつぶやき,会話などに耳を傾け,「それはこういうことだよね。」「そんなことに気付くことができたんだね。」と意図的に声を掛けることで,児童は自分の気付きに価値を見いだし自信を深めることができる。
○言葉や絵,発表などによる表現活動を重視する。
特に国語科での言語活動を充実させる指導と関連させ,見付ける,比べる,たとえる,などの学習活動を工夫する。各学習場面に「ことば」を意識して取り入れ表現することで活動を振り返り,学習活動に多様な広がりを生み出すことができる。
○体験したことや調べたことを伝え合う場を多く設定する。
自分が発見したことと友達が発見したことを比べ,似ているところや違うところに気付くことで,自分がさらに調べたいことや聞きたいことが生まれ,次の活動に生かすことができる。
○情報や資料の提供に努める。
児童の話し合いの様子やまとめる活動の様子を観察し,足りない情報や活動を深めるために必要な資料などを多く集めて,児童が活用できるような場づくりをする。
9月の探検に向けての支援の手立て
子どもの変容
9月の探検に向けての支援の手立て
子どもの変容
9月の探検に向けての支援の手立て
子どもの変容
○連続性を意識し,単元構成を同じようにしたことにより,子どもたちにも活動の連続性の意識付けがなされた。その結果先行経験が生かされ,子どもにとって次の活動の見通しが立ち,新たな意欲や願いをもって2回目の探検に向かうことができ,活動の質や気付きの質を高めることにつながった。
○意図的に気付きの価値付けを行ったことにより,何気なく発したつぶやきも,改めて考えてみると大切なポイントになっていることを発見・自覚することもあり,気付きの質の高まりがみられた。
○生活ファイルや探検メモ,以前の2年生の計画を参考にするなど,情報活用能力が身についた。また,自分の記録してきた探検メモの中から,大切な情報や伝えたいことを選び出し利用していくこともできるようになった。
○2回の町探検を通して,人とかかわろうとする態度が育まれた。地域の人とかかわろうとする気持ちが芽生え,今まで生まれ育ってきたふるさとを愛する心も同時に生まれてきている。また,友達とかかわろうとする気持ちも芽生えた。話し合いをして意見を交換したり,発表に対して感想を伝え合うこともできるようになってきた。
○気付きが深まったことにより,「〜を伝えたい」「〜を知ってほしい」という子どもの思いが高まった。また,まとめや発表の過程を通して表現内容が深まり,多様な表現方法が身についた。まとめていく過程や発表会では一人一人が自分に合った役割を見つけて生き生きと活動した。
○毎時間の活動に夢中になるあまり,振り返りが不十分になり,子どもたち自身が自分の成長の実感を得られていなかったように感じる。今後は,成長を実感できるよう振り返りの活動を工夫し充実させたい。そうすることにより,子どもたちに自信が生まれ,さらなる成長へとつながると考える。