2年
地域のよさを生かし,子どもの思いを育む生活科学習の設定
〜2年生 「レッツゴー! 町たんけん」の学習を通して〜
茨城県日立市立日高小学校
小野瀬 貴子

1.テーマについて

1 テーマについて 2年生の生活科は,1年生での学校や家庭を主とした身近な環境から発展し,地域へと視野を広げた学習をめざしている。

 日高小学校の学区において地域の環境に視点をおいてみると,海や山に囲まれた自然豊かな特徴のある地域であり,地域の方々も学校教育に関心をもち,協力的である。

 学習の構成を工夫し場の設定をして,地域の方々の協力を得ることができれば,子どもたちは地域のもつよさに気づくことができて,思いを広げながら主体的に学習することができるであろうと考えた。

 そこで,3年生の「総合的な学習の時間」との関連を図りながら,環境・人材・地域との連携など,この地域のもつよさを生かして,子どもたちの興味関心を引き出し,子どもの思いを育むことができるような授業の構成を工夫していくことにした。

 「子どもの思いを育む」とは,地域の自然や人々と主体的に関わり,そのよさを感じ取る感性や,主体的に活動しようとする意欲を育てることと考える。探検活動を通して,見つけたり調べたりしたことを,表現したり自分たちの生活に生かしたりすることができる力を育てることによって,子どもたちが,自分たちの住む地域に愛着がもてるような学習にしたいと考え,このテーマを設定した。

テーマにせまるための手立て


2.目標

 ○ 自分の生活の場である地域に関心をもち,地域の人々や様々な場所に親しみをもって関わったり,友達と協力して探検したりすることができる。
(生活への関心・意欲・態度)
   
 ○ 地域の人々や様々な場所と適切に関わり,探検で発見したことや気づいたことについて,自分らしい方法で表現することができる。
(活動や体験についての思考・表現)
   
 ○ 地域の自然や人々,公共施設などの様子や自分たちとの関わりに気づき,自分の地域のよさに気づくことができる。
(身近な環境や自分についての気づき)

3.単元設定にあたって

(1) 児童の実態
   
   子どもたちは,1年生の時に下校班を組み,方面ごとに下校していた。色別で分けていることから,地区名よりも色で通学路を認識し,方面を区別している。そこで,色別に地域を表示してどれくらい,地域について知っているか身近な場所をあげて,アンケート調査をしてみた。その結果から,子どもたちは,家と学校のまわりのことは知っているが,地域全体については知らない場所があることがわかった。また,生き物がいる所や公園,行ったことがない場所に関心をもっていることがわかった。そこで,グループ探検をする前に,共通体験として主な特徴のある地域を全員で見学する活動を組み入れることにした。
   
(2) 学校・地域・PTAとの連携
   
1 サポート委員会との連携
   
   本校では,PTA活動として学年にサポート委員長が1名ずつ配属されている。学年からの依頼を受けると,学年の保護者全員へ協力を呼びかけ,サポートの体制を整えることになっている。今回の依頼では,25名の保護者の協力があり,小人数でグループを編制し,探検することができた。
   
2 学校・PTA・交通安全母の会との情報交換
   
 
交通安全母の会
   
   交通安全母の会では,毎年,通学路を歩いたり保護者からのアンケートを集計して通学路において危険な場所を調べ,資料を作成している。
   
 
PTA教育環境委員会
   
   教育環境部では,学区の危険箇所などについてのアンケートをとり,地図に表して,各家庭に配布している。
   
 
学校安全部
   
   交通安全母の会からの情報及び家庭訪問時の聞きとりをもとに,地区を歩き危険箇所を点検している。それぞれの情報を交換しあいながら,安全面に配慮している。
   
3 地域の協力
   
 
日高自治会
   
   日高地区自治会長さんが学校評議員になっている。地域の様々な情報を知っていて,協力をしていただくことが多い。自治会で作成した日高地区マップは探検計画や地図の準備に大変参考になっている。
   
 
日高公民館
   
   昔,日高小学校だった所にあり,校門や遊具など名残のあるものが見られる。
ここで,本を借りる子やグラウンドで遊ぶ子が多く,子どもたちにとっては身近な施設でもある。3年生での社会科見学や総合的な学習の時間,また,1年生での昔の遊びで使う用具など,協力をいただくことが多い。
   
 
ゆりの木通り商店会
   
   日高学区の中にある小学校から小木津駅までの直線道路沿いの商店街である。商店会の会長さんやゆりの木保存会の会長さんは,「生活科」や「総合的な学習の時間」の調べ学習等に協力的で,見学やインタビューなどに快く応じてくださる。
   
 
ふるさとひたかマップ   ふるさとひたかマップ
   
(3) 1学年の「生活科」と3学年の「総合的な学習の時間」との関連
   
  [1年] こうえんで
あそぼう
[2年] レッツゴー!
町たんけん
[3年] 見つけよう,
知らせよう,日高の町
関心
意欲
態度
ルールやマナーを守って工夫しながら仲よく遊ぶことができる力。
礼儀正しく,マナーやルールを守って,地域の自然や人々に親しみをもって関わることができる力。
地域と関わり,自分にできることを実践しようとする力。
思考
それぞれの公園で見つけた植物や生き物,施設などの違いを比べることができる力。
自分の好きな場所や人との関わりを深めるために,めあてや見通しをもって自分なりの方法で取り組むことができる力。
いろいろな調べ方を知り,調べることができる力。
友だちと話し合い,協力しあいながら,自分たちで見通しを立て,学習を進めることができる力。
表現
遊んで楽しかったことを絵や文にかいて表現することができる力。
探検を通して,発見したことを思い思いの方法で伝えることができる力。
学習の過程や結果を自分なりにまとめ分かりやすく発表することができる力。
気づき
遊びを通して,いろいろな施設があり多くの人が利用していることに気づくことができる力。
探検を通して,地域の自然や人,友だちのよさに気づくことができる力。
地域に関心をもち,自分なりの課題を見つけることができる力。
友達の発表に対し,自分なりの考えを持ったり,自分を振り返ったりできる力。
   
(4) 探検場所の設定
   
   (1)から(3)をもとにして,地域の特徴が把握でき,効果的に学習が深められる場所について検討した。昨年度までは,商店街を中心に町探検をしてきたが,今年度は,1年生の内容を発展させ,さらに3年生の社会科や総合的な学習の時間へとつなげるために,子どもたちにとって身近な公園を中心にして,地域の特徴の違いがわかる場所を選んだ。また,児童の実態調査から,全員が,共通体験をもつ見学時間も設定することにした。
   
 
南 静 公 園
海の見える公園。畑がある。6号国道の様子。 歩道橋などの設備がある。日高電線工場がある。社宅が多い。ゲートボール場がある。
 
宿 東 公 園
ゆりの木通りを通る。駅のそばにあり,電車が見える。保育園の子どもたちが遊びに来る。
 
小 木 津 駅
学区にある駅である。
 
小木津児童公園
社宅に囲まれている。畑が多い。どんぐりの木がたくさんある。遊具が多い。
 
おおさく 公園
学校の近くにあり,東方面。団地の中にある。桜の木に囲まれている。
 
やけやま 公園
学校の近くにあり,西方面。幼稚園,公民館,神社がある。道沿いにお地蔵さんが見られる。近くにザリガニの住む池がある。
 
松ヶ丘水田方面
広々とした水田。四季の変化が捉えやすい。おたまじゃくしやざりがになどが見られる。
 
日 高 公 民 館
昔,日高小学校だった場所にあり,その名残が発見できる興味深い施設である。様々なカルチャークラブがあり,地域の人が利用している。


4.活動計画(20時間取り扱い) 省略

5.評価計画 省略

6.授業の実際

 小単元 「町をたんけんしよう」
   
(1)活動の流れ
   
 
 ○ 自分が住む地域について教え合ったことを方面ごとに振り返る。
   
 ○ 全員で,各方面の地域の様子を見学する。(共通体験)
   
 ○ 探検したい方面を決め,グループごとに探検の計画をたてる。
   
 ○ グループごとに「日高学区」の探検をする。
見学したい場所に行き,様子を見たり説明を聞いたりする。(各グループ1方面)
   
 ○ 探検して発見したことやわかったことをまとめる。
   
 ○ お世話になった方にお礼の手紙を書く。
   
(2)計画・準備
   
<活動の予定> は児童の活動
下見
サポート委員依頼
共通体験
グループ決定
探検場所へ依頼
サポート委員との打ち合わせ
グループ別探検
まとめ
お礼状・あいさつ
<探検の班編制と役割分担>
 
 サポート委員さんたちとの打ち合わせでは,資料をもとに,安全面や活動内容,めあてなどについて確認をし,担当割り当てを決めた。
 
<準備資料>
 
 ワークシート
 地図(全体地図・方面別地図)
 
<掲示コーナーの設置>
 
 日高学区の全体地図を学年掲示コーナーに設置し,見学後の発見カードや子どもたちからの情報を掲示した。各学級でも,同じ地図を掲示し,絵やカードで,発見したこを積み重ねていくようにした。
   
学年掲示コーナー
   
(3)活動の様子と子どもの思い
 
 活動の様子と子どもの思い(1) 南静公園,宿東公園,小木津駅
 活動の様子と子どもの思い(2) 小木津児童公園,松ヶ丘水田方面,日高公民館
   

7.成果と課題

 地域の協力,PTAの連携を図ることにより,たくさんの協力をいただくことができ,子どもたちは,自分が興味・関心をもった場所を思いにそって探検することができた。

 班に分かれて探検する前に共通体験の時間を設定したことにより,探検の時には,主体的にめあてにそった活動ができた。サポート委員の方もインタビューなどのきっかけづくりなど,学習の主旨をよく理解した上でサポートしてくださった。

 また,学習カード,全体地図や方面別の地図を準備したことにより,方面ごとの違いが分かり,発見したことを記録する力が育った。「次は,こんなことを発見してこよう。」「まだ,行ってみたい所があるよ。」と子どもたちの思いもふくらんだ。

 今後の課題として,次の単元である「生きものをそだてよう」を「町たんけん」に組み入れた単元計画を作成したいと考えている。

前へ 次へ


閉じる