5年
論理的思考力をはぐくむ指導の工夫     
〜「面積」の指導を通して〜     
山形県東田川郡藤島町立長沼小学校
三部 信
1.はじめに

 生きてはたらく学力を身につけるためには,一人ひとりの主体的な取り組みと,子ども同士によるコミュニケーション活動を通すことが大切である。知識を単に伝達するのではなく,みんなで話し合って合意を作り上げていく学習のために,自分の考えを確かに表現し伝達すること,他者からのメッセージを受け取り理解できることが必要である。この表現・理解の力を論理的思考力と考え,その育成をめざして,授業を構成した。

2.論理的思考力を育成するために

単元名「面積」

(1) 解決の意欲を持たせる単元の構成
 社会で学習した「京浜工業地帯」の埋め立て地と「庄内空港」の面積を比べることを目標に単元を設定した。埋め立て地・空港にある様々な図形の面積の求め方を考えながら単元を進めていく。

(2) 思考をたすけ,既習を生かす壁面掲示
 既習の「知識」「ストラテジー」,単元での「本時の位置」を明らかにすることにより,児童の解決に向けた思考を促す。
 「知っている形になおす」という単元を通したストラテジーを獲得させるために,壁面掲示に強調しておく。

(3) 思考を促し,個性を表すコンピュータによる操作的活動
 コンピュータを使用することにより,
 
巧緻によらずイメージ通りに自分の思考を表現できる。
やり直しがスピーディー
仕上がりが美しい
着色,線の種類など,個性を表現しやすい
以上により,思考が明確に伝わりやすい
という利点がある。

(4) 互いの思考を明確につかむインフォーマルなコミュニケーション
 コンピュータを使用して,自分の思考を表現する際に,ペアの友人と話をすることにより,自分の考えをより確実なものとすることができる。
 他のコンピュータの画面を見ることで同じ概念に対して色々な表現があることを実感することができる。OHPシートにプリントアウトして提示し,発表する。

(5) よりよい考えを求める視点を明確にした練り合い
 教室の前面に「パワーアップ算数」を掲示し,統合したり構造化したりするための視点を与える。「算数のよさ」や練り合いの過程をマニュアル化して掲示することにより,話し合いの視点があきらかになる。練り合う視点を明確にすることで,よりよい方法や考えを指向する態度が育つ。

指導計画(総時数12時間)

 第1次 三角形の面積(5時間)
 第2次 四角形の面積(3時間)…2/3本時
 第3次 面積の求め方の工夫(4時間)

3.実際の指導から

本時の目標  
 
平行四辺形の求積方法を考え,公式にまとめることができる。
課題提示  
 
平行四辺形の面積の求め方を考えよう
解決の見通し  
 
この平行四辺形の面積の求め方を考えるのに今までの考え方で何か使えそうなものはありますか。
C1ぼくは「ずらす」だと思います。
C2わたしは「知っている形になおす」だと思います。
「知っている形になおす」のに「ずらす」という具体的なやり方を1つ出してもらいました。他にあるかな。
C3「三角形になおす」といいと思います。
C4「2つに分ける」といいと思います。

自力解決

T 今日もパソコンを使ってやります。平行四辺形にマス目が必要な人は,黄色のフロッピーを,マス目なんかいらないという人は水色のフロッピーを使って下さい。
最初にみんなAの方でやってみましょう。1つできたら色々な方法でやってみましょう。
  (各自,ペアを組んでフロッピーに記憶された基本図形を呼び出して操作活動をする)

話し合う

C5ぼくは,まず,2つの三角形に分けて,
6×5÷2=15
下の三角形も 6×5÷2=15
15+15=30  答え 30cm2
となりました。(図1)
C6 ぼくは,まず,平行四辺形に対角線を入れて三角形にして,底辺×高さ÷2 をして三角形が2つなので,×2をしました。(図2)
C7ぼくたちは平行四辺形を切り取って,貼りつけて長方形にして 6×5=30  答え 30cm2 になりました。(図3)
4つのチームから発表してもらいました。みんな同じ答えになっています。さて,同じなのは答えだけでしょうか。
C8どれも6×5の式でなりたっていることだと思います。
C9ぼくは,底辺×高さ が共通しているように思いました。
まとめて言える人はいないかな。
C10底辺×高さ をすれば平行四辺形の面積がわかると思います。


4.まとめと今後の課題

 
単元を通した課題設定をしたり,他教科や日常生活と関連づけた単元構成をすることにより児童は必要感をもって学習に取り組み,この意欲が論理的思考の原動力になった。


絵,図,式などの思考の表現に1人ひとりの個性やよさが表れてきた。


インフォーマルなコミュニケーションにより,全員が答えに行き着くことができた。 また,発表する前に自分の考えの正当性を確認できることで自信を持って表現できた。


共通性や考えのよさを視点に話し合いができるようになってきた。


「算数のよさ」を全員が実感できる時間を設け,「よさ」の視点を深めていきたい。


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