| 自己目標を持ち,創造的な学びのできる子どもをめざして | |
鳥取県八頭郡八東町立八東小学校 高木 政寛 |
1.はじめに 自らの学びの中で,いままでに自分の中にはなかった新しいものの発見や既習の経験,アイディアを生かして新しいものを作り出す喜びを子どもたちに味わわせたいと考えている。 このような未知のものを発見し作り出す創造的な思考は,自分の目標を持ち,ねばり強く解決にあたる活動や振り返りをして,さらなる新しい目標へと向かう学びの活動の中にみられると考えている。そこで,今回,これらの活動に視点をあて,自己目標と自己評価を取り入れた学習過程と教材の開発に取り組んで,実践を試みた。 2.自己評価を取り入れた学習過程 1単位時間の学習過程を次のように細分化し,創造的に学ぶ学習過程を考えてみた。
(1)問題の再構成と自己目標の意識化 特に,問題把握の段階で学習課題を明確にし,自己目標を持って,自力解決へと進む段階,比較検討の段階における実践と授業後の子どもの感想を紹介したい。 3.単元について 4年生では「資料を落ちや重なりがないよう項目に整理して表にまとめること」について学習してきている。本単元は,その発展教材である。ここでは,さらに起こりうるすべての場合を適切な観点を決めて,分類・整理し,順序よく書きあげる能力や図,表などを用いて処理する能力の育成,そして,そのよさへの気づきをねらっている。
また,これらの活動を通して,論理的な考え,単純化,記号化の考え,多面的な考えなどの数学的な考え方の育成も重視している。本単元を,子どもの創造的な活動を伴った,問題解決の1つの機会としてとらえ大切に扱っていきたい。指導にあたっては,結果として何通りの場合があるかを形式的な計算で求めさせるのではなく,結果に至るまでの思考の過程を大切にしていきたいと考えた。 ●指導計画(総8時間) 第1次 場合の数の調べ方
第1時 ならべ方(カード,リレー) 第2次 いろいろな場合を考えて ※第1次では教科書の教材の配列と変えて授業を行った。 ●本時のねらい 固定された2本の平行線と垂直に交わる5本の直線によってできる長方形をすべて列挙し,その場合の数を求めることができる。 4.指導の実際 (1)問題把握の段階 問題把握の段階は文意を理解することが第1であることはいうまでもない。しかし,真の問題把握を考えてみるとき,ここでは,「何が問題なのか」「なぜこの問題を考えるのか」と自らに問い,問題を自分の問題としてとらえ直す活動へと進めておく必要がある。 それは,疑問の解決や新しい問題を解決していく数学的なアイディアや解決の方法等の獲得,そして,問題に即した条件間の関係をつかむなど数学的な活動を期待できる段階だからである。教材との出会いやこうした活動の中に,創造的な思考が生まれると考えている。
【自己目標の様相】
(2)解決の検討の段階
解決の検討は個人による検討と集団による検討が考えられよう。ここでは集団による検討(自己解決の意識化,よさの気づき)について考えてみたい。
(3)子どもの自己目標に対する感想(自己評価) 自己目標を持ち,自己評価を行うことによって,自ら学ぼうとする意欲や学びの実感がノートの感想に見られるようになってきた。
5.おわりに 子どもの問題を解決していくときの着想を大切にし,それを深め,関連づけて考えていく授業を試みた。「サッカーの対戦」「かんづめの組み合わせ」などのように,即,組み合わせにつながる教材に比べ,今回の問題は,長方形を作るための2本の直線の組を見つけることにまず気づかなければ,組み合わせの問題とはならない。その点で,問題把握の段階での子どもの「なぜ考えるのか」「何が問題なのか」を問い,思考し,問題を再構成する場を作り出すことができた。また,自己目標をしっかりと持たせることで,自己評価の中にも次時の(仮)目標や課題設定が見られるようになってきた。 思考の連続と学び方の習得を考えるとき,今後の課題として,自己目標→自己評価→自己目標のサイクルを授業の中にいかに組み入れるか,過去の評価でなく,子ども自身にとって未来への評価としての自己評価をさらに考えていきたい。
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