4年
ティーム・ティーチングによる効果的な算数授業の展開を目指して
−「べつべつに,いっしょに」の指導を通して−
鳥取県米子市立福米東小学校
福村隆司
干村隆司
1.はじめに

T・T指導の重点として,次の3点を考えてきた。

(1)個々の子どもの思考に合った活動をさせる。
 ・問題解決に向けて,自分独自の考えを大切にしていく。
 ・つまずきを持ったり,すぐに解決したりする子どもに対して,充実した学習ができるようにする。
 
(2)机間指導を効果的に行い,個々の考え方に応じた指導をしていく。
 ・2人の教師が連携をとりながら実態把握に努め,個に応じた指導を行っていく。
 
(3)発展・練り上げの活動が意欲的に行われるようにする。
 ・個々の考えや解法を発表し合い,吟味,検討することで,よりよい方法を見いださせる。

2.単元展開の構想

(1)指導計画(総時数4時間)

 第1次  a×c+b×cの問題をいろいろに考えて解くこと
 第2次  a×c+b×cの問題をまとまりを考えて解くこと(本時)
 第3次  a÷c+b÷cの問題をまとまりを考えて解くこと
 第4次  a×c−b×cの問題をまとまりを考えて解くこと

(2)授業でのポイント

授業の展開について
 算数の学習については,(1)問題提示 (2)課題把握 (3)見通し (4)自力解決 (5)話し合い活動 (6)練習問題 (7)まとめというように思考の流れ(手順)を組んでいる。特に(3),(4)については,個別学習,小集団学習を考えている。(場合によっては(3)は一斉学習で行う)
 2人の教師がいるために個別学習を重視しているが,方法の見通しが同じ児童やつまずきが見られる児童がいる場合は,小集団学習を行うことが多い。
 
児童の思いや考えに応じた活動の支援について
 個に応じた指導を行うには,T1,T2のきめ細かい指導の共通理解が必要であることは言うまでもない。本単元では,主に一斉指導を行う教師T1と主に個別指導,小集団指導を行う教師T2(担任)が互いに協力し合って指導にあたることにした。
 単元ごとにT1とT2は代わるようにしている。今回T2を担任にしたのは,少数の児童のつぶやきを全体のものとして広げたり,全体の考えを個に返したり,適切な言葉かけ,励まし,助言,ゆさぶりなどを与えたりするなど,担任の方が各児童の特性を十分に把握しており,授業がスムーズに展開できやすいと考えたからである。
発表や練り上げ場面の活性化について
 本単元では,児童が自分の考えをもとに問題解決にあたり,問題点を克服しながら粘り強く解決していこうとする態度の育成を大切にしていきたい。練り上げ場面では,T1が話し合いを進め,T2はゆさぶりや補助発問を考えていく。時には軌道修正をしながら,話し合いが活発に行われるようにしていきたい。

3.授業の実態

(1)問題提示

ひろし君のサッカーチームでは,1組5500円のユニホームを11組,1足3500円のシューズを11足買うことにしました。代金は,全部でいくらになるでしょう。

 T1 昨日はジュース代とプリン代とをべつべつに求めるやり方と1組にして1人分を考えたやり方を勉強したね。

(2)課題把握

 T2 ユニホーム1組とはどういうことですか。
 C1 ユニホームの上と下を合わせて1組だと思います。
(Tが図を示し,1組,1足の意味を押さえる)
 T1 方法の見通しを考えてみよう。
 C2 買う数が同じというところに目をつければいいと思います。
 C3 買う数が同じだから,ユニホーム1組とシューズ1足の値段をたして11をかければいい。
 C4 昨日の問題と同じで,5500円と3500円をたすと,ちょうど1人分の値段になります。
 T2 今までに習ったやり方をもとにして考えるというのは,すばらしいことだね。

(4)自力解決

 T1 考え方を線分図や絵で表して,問題を解きましょう。
(机間指導を行い,数分経ってから)
 T2 どうすればいいか,迷っている人は前に出て一緒に考えましょう。
(5人の児童を集めて,図を使いながら1人分いくらになるか考えさせる)
(5)話し合い活動

 C5 11組と11足の11に目をつけ1人分の値段を出して,11人いるから11をかけました。
(5500+3500)×11=99000  99000円
 C6 ユニホームを11組買ったから,5500×11=60500
シューズを11足買ったから,3500×11=38500
両方で,60500+38500=99000  99000円
 C7 1人分を求めると9000円,全部で 9000円×11=99000円
 T1 これらの3つの考え方を比べて気づくことはありませんか
 C8 C5とC7の考え方は似ている。
 C9 C5は5500+3500をかっこを使って,1つの式にして計算している。
 C10 C5とC7はまとめた式で,C6はばらばらにして後でたしているから,べつべつのやり方です。
 T2 どちらのやり方が考えやすいですか。
 C11 まとめた方が楽です。
 C12 まとめてやった方が簡単だし,一行で書ける。でもC6のやり方も大切だと思います。
両方とも大切にすればいい。

(6)まとめ

 T1 どちらのやり方もいいですね。特に今日の学習では,11という数に目をつけてまとめるという考え方ができるといいね。
 T2 もし,11組,11足ではなく,10組と7足ならどのように考えますか。
 C13 まとめた考え方が使えない。
 T1 そうだね。同じ数の時はまとめた考え方でできるけど,同じ数でない時はべつべつの考え方でいけばいいですね。
 C14 やっぱり,どちらの考え方も大切だ。

4.まとめと今後の課題

解法を見つける段階では,絵,関係図,線分図,などの自分の自由な発想で考えることができる児童が増えつつある。個に対してのT・Tによる綿密な指導の成果と考えたい。
 
T2の役割は,児童にとってよき理解者,指導者であるとともに,ゆさぶりをかけたり,問題を投げかけたりしながら,直接児童にはたらきかけていく大きな砦とも考えていきたい。
 
T1,T2の役割分担の明確化が必要である。個に対しての支援は,自分一人で問題を解くことが難しい児童にとっては,大きな支えになっているが,全体に対するはたらきかけや時間の使い方の工夫など,T・Tについて今後研究を深めていきたい。
 
<参考文献> 楽しい算数の授業「ティーム・ティーチングによる算数授業の活性化」明治図書


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