1.はじめに

平成23年度から,小学校で学習する図形領域の内容が大幅に増える。図形領域では,手を使う学習が有効と考えられる。図形の構成要素を意識させながら意味のある活動をさせるためには,子どもが興味を持って取り組ませるようにさせることが必要である。1年生の子どもたちが楽しく活動を継続させていくために,「かたちのくにのおはなし」を進めるという形で単元を構成し,「おはなし」の主人公になって挑戦状を解いたり,「おはなし」の中の秘密の鍵を自分で作ったりすることで,主体的に学習を進めていくことにした。

第1時間目では,直角二等辺三角形の色板を用いて,いろいろな形をつくったり,その形を観察したりする「かたちのくにをつくろう」をする。ここでは,自分の思いを出させるように自由に作らせたい。

第2時間目では,色板を「回す・ずらす・裏返す」という操作や言葉を使って「いろいた4まいのかぎをつくろう」をする。色板を動かす活動を通して,図形の特徴をとらえさせる。

第3時間目では,影絵を見て,同じ形をつくったり,形の中に色板が何枚あるか,どんな形があるかを見つける「かげえのちょうせんじょうをといてみよう」をする。友だちと一緒に楽しんで活動する中で,図形についての感覚を豊かにしていきたい。このような活動において,自分のつくったクイズを出題するだけではなく,友だちのつくった形のよいところや工夫したところ,また,自分の作品や問題と比べての共通点や相違点などを見つける力も高めることで,図形に対する感覚が豊かになっていくと考えている。

生活の中の遊びが学習につながり,また,次の遊びを生み出すような楽しい授業展開で子どもたちの図形に対する感覚を豊かにしていきたい。このような子ども主体の活動を通して,見通しをもち,筋道立てて考える能力や態度を育てていきたいと考えている。

2.児童の実態

1年生の子どもたちは,積み木や箱を積んだり並べたり,折り紙を折ったり重ね合わせたりする活動や遊びが大好きである。これらの経験を生かしながら身の回りにある平面図形や立体図形を使って,活動することを多く取り入れて学習を進めていきたいと考えた。

これまでに子どもたちは,「いろいろな かたち」の単元で,身の回りの空き箱や空き缶を使って,「ロボット」や「電車」などを作ったり「タワーゲーム」や「ボーリング」「形あてクイズ」などの活動を通して,立体の特徴や機能などをまとめ,構成要素に着目する学習をした。次に「かたちを うつして」の単元では積み木や箱の面を写し取り,その形をもとに身の回りのものを絵に表す「絵描き遊び」を行い,平面図形に親しむ経験をしてきた。ただし,2つの単元でも,子どもの生活経験の違いから,活動に大きく差が出てきていた。そこで,本単元では,どの子にも十分に時間を与えて楽しみながら操作させ,図形の構成力を伸ばすとともに,図形に対する関心を深めるようにしたい。こうした活動を行いながら,図形についての基礎となる経験を豊かにするとともに,図形についての感覚を豊かにしていきたいと考えている。

       

3.実践

実践例1「かたちのくにをつくろう」

『悪魔によって壊された「かたちのくに」を作るために,色板を使い,いろいろなものを作ろう』と課題を与え,学習をスタートさせた。「色板を重ねずに並べる」と条件を与えて学習を始めた。最初は枚数を決めてかたちを作らせたが,授業の後半では,「自由な枚数で作りたい。」と声が上がり,子どもたちに自由に作らせてみた。

【子どもが自由に作った作品】

実践例2「いろいた4まいのかぎをさがそう」

あくまにつかまった王子を助け出すために,いろいた4枚をへんしんさせて上のような5つの鍵を作らせた。

あくまをたおすためのかげえのちょうせんじょうをつくろう

実践例3「かげえのちょうせんじょうをといてみよう」

子どもたちが作った「かげえのちょうせんじょう」を自分たちで解いてみる。下の写真の形の外枠だけを提示し,中にどんな形で,いくつの色板が入っているかを,自分たちで実際に色板を当てはめながら確かめていった。

【隣同士で問題を出し合う子ども】

4.おわりに

今回の実践では,子どもが「学習する」とは,「考えること」と捉え,「考える」ためには活動が必要と仮定した。そのために単元全体を通して「かたちのくにのおはなし」を使い,子どもの興味を持続させるようにした。毎時間出される「おはなし」に関わる問題を子どもたちはわくわくしながら心待ちにしていた。そして,問題が出されると,「おはなし」の中に入り込み,自分が主人公として活動した。子どもたちは活動に夢中になった。夢中になったとき,子どもたちは本当に集中し,「学習する」楽しさを味わうことができた。この楽しさがさらに学習していこうとする意欲につながっている。