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必ず成り立つのかを考えて,判断できる児童の育成
〜帰納的や演繹的に考える力を高める指導の工夫〜 |
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1.はじめに 私が考える「必ず成り立つのかを考えて,判断できる児童」とは,きまり(定理や性質,公式など)に出会ったとき,必ず成り立つのかと考え,いくつかの具体例について調べたり(帰納的な考え),既習内容を基に説明したり(演繹的な考え)して,そのきまりが正しいかどうかを判断できる児童である。例えば,5年生の「四角形の内角の和」についての学習場面では,下のような児童の姿である。 2.教材観 私は,これまで算数のきまりを学習するときは,「どうしてそうなるの」という問いを大切にしてきた。というのも,この発問によって,きまりが正しいかどうかを説明することができるようになると考えたからである。しかし,「こういうやり方をすれば答えが出るから」や「教科書に載っているから」などという不十分な説明をする児童が多かった。 そこで,正しいかどうかを説明するには,帰納的や演繹的に考える力を高める指導が必要であると考えた。その指導に必要なことは,児童がきまりに出会ったとき,すべての場合において必ず成り立つのかという視点をもつことができるようにすることである。 そこで,私は平成20年度から,児童がきまりを見つけて確かめていく学習展開を考え,それを「ひみつ学習」と名付け研究を進めてきた。 3.指導計画 (1)年間計画 平成22年度の実践計画を下のような表にして,どんな力をつけさせたいかを明確にしておく。 (2)ひみつ学習の流れ ○『「ひみつ」って何』では,算数で学習するきまりを「ひみつ」という言葉に置き換えることを伝える。(第1回目のみ行う) ○『ひみつを見つける』では,操作活動を通して,ひみつを見つけさせる。 ○『ルール作り』では,必ず成り立つのかを判断できるルールを考えさせる。(第1回目の他,必要に応じて行う) ○『ひみつを確かめる』では,作ったルールで,見つけたひみつが必ず成り立つのかを判断させる。 4.授業の実際 (1)実践例1 単元 5年「整数の見方」(本時2・3/3) @本時のねらい ○「ひみつ」とは何かを理解し,自分たちで必ず成り立つのかを判断できるルール(帰納的な考えを基にしたルールと演繹的な考えを基にしたルール)を作ることができる。 ○偶数,奇数の和の性質を見つけて確かめることができる。 A実践の様子
(2)実践例2 単元 5年「面積」(平行四辺形の面積) @本時のねらい ○平行四辺形の面積を求める公式を理解することができる。 A実践の様子
5.成果と課題 ひみつ学習によって,きまりを見つけたとき,それを単に受け入れるのではなく,必ず成り立つのかを考える児童が育つことが分かった。また,帰納的な考えや演繹的な考えで,判断することができるようになってきた。しかし,2つの課題が明らかになった。
そこで,今までのひみつ学習の流れに,帰納的な考えと演繹的な考えのよさを話し合い,残りのひみつ,または,条件を変えたひみつを,自分がよいと考えるルールで確かめる場面『ルールのよさを考えよう』を加える。そして,すべての場合において必ず成り立つことが判断できる演繹的な考えのよさを理解できるようにする。また,『ひみつを確かめる』では,「どんなことが分かればよいのか」や「分かっていることを基にして考えよう」という発問の工夫によって,演繹的な考えで必要な既習内容に自分で見つけることができるようにする。 |