5年

学ぶ楽しさを味わう授業
〜5年「同じものに目をつけて」での実践〜  
福井県敦賀市立中央小学校
矢尾 克彦

1.はじめに

 授業における様々な「学ぶ楽しさ」の中でも,特に次の2つの楽しさを意識して授業を行っている。

1 仲間と学ぶ楽しさ…友達や自分の考えのよさを感じる
2 考えを追究する楽しさ…
「だったら,こんな事が考えられるのではないかな」
「もし,こうだったら,こうなるのではないかな」等と感じる

 このような楽しさを実感できるように,1時間を次のような授業過程で行った。

課題把握 本時の課題をみつける時間
自力解決 自分の力で解決する時間
練り上げ 考えを出し合い,自他の考えのよさを感じる時間
評価問題 学習したことを確認する時間
振り返り 学びを振り返り,新たな学びの目標をみつける時間


2.単元名

 「同じものに目をつけて」


3.単元の目標

 相殺や置き換えの考え方を使って問題を解決することができる。


4.単元の評価規準

関心意欲態度 数学的な考え方 表現・処理 知識・理解
相殺や置き換えの考え方を使って解く思考法のよさがわかり,すすんで活用しようとする。 複雑な数量関係の問題を,相殺や置き換えの考え方を使って解くことができる。 相殺や置き換えの考え方を使って問題を解くことができる。 相殺や置き換えの考え方を理解する。


5.本時の指導(追究 第2時)

目標 学習活動
相殺の考え方を使って問題を解くことができ,相殺の考え方のよさが分かる。 相殺の考え方を使って問題を解く
やや複雑な数量関係の問題を,置き換えの考え方を使って解くことができ,置き換えの考え方のよさが分かる。 置き換えの考え方を使って問題を解く


6.指導の工夫(第2時)

1 問題設定の工夫
考えを引き出す
ジェットコースターに乗ります。おとな1人分の料金は,子どもの2倍です。
おとな2人分と子ども2人分の料金を合わせると,2,400円になるそうです。
おとな1人分と子ども1人分の料金は,それぞれ何円ですか。

 子どもにもおとなにも置き換えやすい数値に設定した。

2 練り上げでの発問の工夫
追究の意欲を高める

 自力解決では,子どもをおとなに置き換えて考えたり,おとなを子どもに置き換えて考えることが予想される。「もし,子どもがおとなの3倍なら」などと,条件を様々に変えて考えさせることで,考えを追求する楽しさを味わわせていきたい。

3 評価問題での工夫
追究の意欲を高める

 本時の確認の問題だけではなく,下のような置き換えの工夫が多様にできる問題も評価問題に組み入れることで,授業後も,置き換えの考えをさらに追究していけるようにしていきたい。

 ケーキを買います。ケーキ(大)はケーキ(中)の3倍の値段,ケーキ(中)はケーキ(小)の2倍の値段です。大を2個,中を3個,小を6個買うと,1,200円でした。大・中・小それぞれいくらでしょう。


7.授業の実際

1 自力解決の様子
考えA 2,400円は子ども6人分 考えB 2,400円はおとな3人分

2 練り上げの様子
T1: 「Aの図から,分かることをいいましょう。」
C1: 「おとなを子どもで表しています。」
C2: 「おとな1人は子ども2人分だから,おとな2人は子ども4人分になります。」
C3: 「だから,子ども6人分が2,400円になります。」
C4: 「ということは,子どもが2,400÷6で400円,おとながその2倍の800円ということになります。」
T2: 「おとなを子どもに置き換えたんだね。Bのほうはどうかな?」
C5: 「Aと逆で,子どもをおとなに置き換えていると思います。」(うん,なるほど)
C6: 「つまり,おとな3人分が2,400円だから,おとな1人分は800円です。」
C7: 「(AでもBでも)どちらでも解けると思います。」
T3: 「どちらでもいい。なるほど。別の場合でもそうかな?だれか思い浮かびますか?」…(挙手なし)
もし,大人が子どもの3倍なら…子ども2人では大人1人に置き換えられない
T4: 「もし,おとなが子どもの3倍?っていうとこともあるかもしれないね。」(うん)
C8: 「だったら,Bのように子どもに置き換えた方がいい。」(同じ)
C9: :「なぜかというと,Aの考えのようにおとなを子どもに置き換えると,これで3人,これで3人となって,3×2+2で子ども8人分になります。でも,Bのように子どもをおとなに置き換えようとしようとしても子ども3人でおとな1人なので,置き換えれない。」(そう,そう)
T5: 「置き換えられない場合も出てくるんだね。」(うん)


8.授業をおえて

3つの工夫は,次の面で効果があった。

 練り上げでは,考えBを理解したり,ABの考えの有用性を考えていくなかで,「なるほど」という言葉や,子どもたちの納得した顔,うなずきをたくさん引き出すことができ,仲間と学ぶ楽しさを感じている様子がうかがえた。

 評価問題では,様々な置き換えを行い,よりよい置き換えをしていこうとする姿が見られた。

 ケーキを買います。ケーキ(大)はケーキ(中)の3倍の値段,ケーキ(中)はケーキ(小)の2倍の値段です。大を2個,中を3個,小を6個買うと,1,200円でした。大・中・小それぞれいくらでしょう。

1)小に置き換え 2)大に置き換え 3)中に置き換え

 (小)(大)に置き換える子が多かったが,(中)に置き換える子がいることに気づきはじめると,「なるほど,(中)でも置き換えられるな」と,今までと違う置き換えをしようとしたり,さらに,別の置き換えの問題をつくったりと,考えを追究する楽しさを味わっている様子がみられた。2つの工夫点に対しては,それぞれ効果があったと感じている。

 しかし,まだまだ子どもたちに力をつけていかなければならないと感じる場面も多々あった。

 例えば,「でも,置き換えられるときは,子どもをおとなに置き換えた方が,少ない数で置き換えられるから,便利なのではないか?」と便利さを考えたり,「もし,おとなが子どもの4倍だったら…」と,いろんな場合を,自分から考えたりする子になってほしい。

 また,次の評価問題においては,置き換えた場合,小数になることに抵抗があることが感じ取れた。

 ジェットコースターに乗りました。おとな2人,子ども3人で2,800円でした。子どもの料金はおとなの料金の半額です。ジェットコースターの料金は,おとな,子ども,それぞれの1人分の料金はいくらでしょう。

 おとな3.5人分で2,800円と考えた子もいたが,子ども7人分が2,800円という解き方が多かった。
練り上げの時に,「3人の時には大人に置き換えることができない。」で終わるのではなく,「どういう場合だったら,おとなに置き換えることができるかな?」という発問をして,小数にしても置き換えて解決していけることを確認していけばよかったのではないかと思う。

 状況に合わせてよりよい解き方を見つけていくことを楽しめるように,子どもに考えさせる発問をもっともっと工夫していかなければならないと感じた。

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