6年
立体図形についての基礎的なものの見方を育てる操作活動       
愛知県A小学校

1.はじめに

 図形領域は平成10年の学習指導要領で内容が大きく削減された。現行の中学校数学の授業内容,授業時数を考えると,具体的な操作活動の時間を充分にとることはなかなか難しいと思われる。それだけに,小学校において具体的な操作活動を充分に行い,立体図形に対する基本的なものの見方や感覚を身につけられるよう指導することが大切である。

 立体についての基礎的なものの見方とは次のようなものであると考えた実践することにした。

(1) 形を認識して,その特徴をとらえることができる。
(2) 立体を組み立てたり,展開する見通しを持つことができる。
(3) 立体をいろいろな観点から見ることができる。

2.単元名 6年生「立体」


3.単元の目標

関心・意欲・態度
  立方体や直方体及び三角柱などの角柱ならびに円柱を身の回りから見つけることができる。操作活動などを通して立体の性質を進んで調べたりすることができる。
数学的な考え方
  立方体や直方体を点,線,面の構成要素から分析的にとらえ,それを基に立体図形を構成することができる。
表現・処理
  立方体や直方体について,意味や性質,構成要素やそれらの位置関係がわかり見取図や展開図を書くことができる。
知識・理解
  三角柱,四角柱などの角柱及び円柱の構成要素について意欲的に調べ,これらの立体図形の意味がわかる。


4.指導計画(11時間完了)

目標 おもな学習活動
直方体と立方体の特徴を理解する。 身の回りのいろいろな箱,様々な立体模型を観察し仲間わけをすることを通して,単元の課題をとらえる。直方体と立方体の面の形,面,辺,頂点の数についての特徴や性質をまとめる。
直方体や立方体の見取り図の書き方を理解する。 直方体を観察して,見取り図を書く。
見取り図の書き方を理解する。
直方体の展開図を書く 3種類以上の直方体の展開図をかき,辺と辺,頂点と頂点の重なりを予想して記入し,実際に組み立てて確認する。
立方体の展開図を書き,辺と辺,頂点と頂点の重なり方を確認する。 6枚の正方形を組み合わせて様々な立方体の展開図を作り,辺と辺,頂点と頂点の重なりを予想して記入し,実際に組み立てて確認する。
面と面の平行,垂直の関係を理解する。 直方体の面と面の関係を調べる。
直方体の見取り図,展開図に面と面の関係をまとめる。
辺と辺の平行,垂直の関係を理解する。 直方体の辺と辺の関係を調べる。
直方体の見取り図,展開図に辺と辺の関係をまとめる。
面と辺の平行や垂直の関係を理解する。 直方体の面と辺の関係を調べる。
直方体の見取り図,展開図に面と面,辺と辺の関係をまとめる
練習  
身の回りから角柱・円柱探しをする。 身の回りの立体に目を向け,底面の形・側面の形・位置関係を調べることにより角柱・円柱を理解する。
10 確かめ道場 展開図,見取り図についての練習問題を解く
11 習熟度別課題学習
基礎 立方体の展開図を使い,面と面,面と辺,辺と辺の位置関係について整理する。
発展 円柱や角錐,円錐の展開図をかき立体を作る。

5.授業の実際(第4時)

1 学習課題をつかむ。

次の展開図で立方体をつくることができるでしょうか? ※四角形はすべて正方形

C1 できると思う
C2 なんか変…?
挙手による反応
できる7人,できない13人,判断できない6人
C3 1枚多すぎる,からおかしい。
T 立方体は正方形の面が6つありました。(具体物を見せ確認する。)だからどれかが余分ですね。余分なのはどれでしょう。
C4 一番右の正方形。
C5 一番左のでもいいかも…。

2 立方体の展開図をかく。

6枚の正方形を使って立方体の展開図をつくって確かめてみましょう。

T まずノートに予想図をできるだけたくさん書くようにしよう。予想図ができたら6枚の正方形をはり合わせて確かめてみよう。時間は10分です。
(A子の様子)

予想図を4種類かき,その後具体物で確かめる。
具体物を使い,他の展開図を考える。
(B男の様子)

予想図がかけない。具体物を使って考える。黒板の図から1枚取ればいいとアドバイスされ2種類考えた。
その後位置をずらしながら4種類つくることができた。
     
(C子)

8種類の予想図を書き,具体物を使い確かめる。11種類あることをアドバイスされ考えるが時間切れ。
  (D男)

予想図がかけない。何種類も並べてつくっているが展開図にならない。
Tの補助で,具体物の並べ方を展開図に2種類まとめることができた。
T できた展開図を黒板に発表してください。
(磁石を使って6枚の正方形を並べて発表する。)
T 自分のノートにないものをノートに書きましょう。
C6 向きが違っても,同じと考えてもいいですか?
T いい質問です!C6さんが質問したように展開図では,向きを変えたり,裏返しにして重なるときは,同じものとして考えます。そうすると,立方体の展開図は11種類あることが分かっています。プリントにまとめたので配布します。
C7 へー,ホントかな?

3 立方体の展開図の練習課題。

プリントの展開図が本当に立方体になるかどうかを確かめます。ます,重なる辺と辺に同じ色をぬって立方体になるかどうかを考えてみましょう。

 半数程度ができたところで授業時間が終わってしまい,残りは家庭学習の課題とした。



6.授業を終えて

 条件をかえる課題を導入に使ったが児童の反応はよかったように思う。しかしその分だけ時間がかかってしまい,4時間目の授業実践では最後が時間切れになってしまった。どの子も家で,きちんと確認をしてくることができた。6枚の正方形のカードを使って具体的に操作させたのは,立体にたいする感覚を養うのには有効だったと感じている。いつもはあまり算数に興味示さない児童も一生懸命に取り組むことができていた。


7.おわりに

 基本的にどの時間も「予想」→「具体物での操作活動」→「言葉・図によるまとめ」という流れを大切にした。第3時,4時で使った6枚の正方形カードの展開図はいつもノートにはさんでおき,空間における位置関係を確認する時に利用した。

 しかし,「予想」→「具体物での操作活動」には意欲的に取り組むが,「言葉・図によるまとめ」の場面では意欲が低下するように感じられた。今後は,言葉や図にまとめることの良さを児童自身が感じられるような授業展開を工夫し,実践に取り組んでいきたい。

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