1.はじめに
子どもたちが大人になったとき,「分数のわり算の計算の仕方を友だちと考えた」と記憶のどこかに残るような授業をしたいなあと考えながら研究を進めました。計算の仕方を教えてできるようにするのではなく,自分で数理を獲得する喜びを伝えることが私たち教師の役割ではないでしょうか。本実践では,児童が主体的に問題解決ができるようにするための教材研究と,自らの考え方を説明し合って理解を深めるグループ学習について提案します。
2.児童が主体的に問題解決に生かすことのできる算数的活動のあり方
| <学習問題> |
| 3 |
m2のかべをぬるのに,ペンキを |
1 |
d 使いました。1d では何m2ぬれるでしょう。 |
| 5 |
3 |
|
|
|
|
|
| (1) |
3 |
÷ |
1 |
の計算の仕方をどう考えるか |
| 5 |
3 |
6社の教科書全てを比較し,単元を通した指導のあり方について,線分図・面積図・計算の扱い方に焦点を当てて教材研究を進めた。それぞれの教科書の意図するところも理解でき,図(半具体物)と計算(形式的な処理)とのつながりをどう見いだしていくかの過程を比較することは,この単元の教材観を深めることにつながった。5学年までの図の扱い方も含めて考慮し,啓林館の扱っている面積図と計算のきまりを採用することにした。
| ★ |
3 |
÷ |
1 |
の計算を面積図で考えるとどうなるの? |
| 5 |
3 |
| |
|
|
|
|
|
 |
       |
 |
 |
| ・ |
「ぬれる面積」を面積図,「ペンキの量」を下の線分図で表す |
| ・ |
下の線分図で1d のところまで面積図をぬる |
| → |
1m2を5×1個(分母)に分けたうちの1つ分が3×3個(分子) |
|
 |
 |
 |
 |
|
| 面積図をくり返しかくことにより,そのよさを実感していく児童 |
|
|
 |
 |
 |
 |
わる数の逆数をかけてわる数を1にする方法
この方法を使えるようにするために「積が1になる分数」を時間をかけてていねいに扱った。 |
 |
 |
 |
 |
|
(2)面積図と計算のきまりの扱いと単元展開
| |
| <H16年度までの単元展開> |
|
|
|
|
 |
|
|
 |
 |
 |
 |
面積図と計算のきまりによる追究→計算のきまりのよさに流れる児童 |
 |
 |
 |
 |
|
|
|
|
|
| 教科書では… |
 |
| 3 |
÷ |
1 |
(分数÷単位分数)→面積図と計算のきまり |
| 5 |
3 |
|
| |
| 3 |
÷ |
2 |
(分数÷分数)→計算のきまりのみ |
| 5 |
3 |
|
|
(3)H16年度の授業から見えてきたこと
| H16年度,習熟度別学習で…( |
3 |
÷ |
1 |
の追究) |
| 5 |
3 |
|
|
「どんどんコース」
面積図と計算のきまりから選択して追究
→共通点に着目して統合 |
|
「じっくりコース」
計算のきまりに重点をおいて追究 |
|
|
|
|
| ・ |
| 「 |
3 |
m2×3」と「 |
1 |
m2が3×3個分」は違う考え方だと感じている児童の姿 |
| 5 |
5 |
|
| ・ |
| 3 |
÷ |
2 |
の計算の仕方も面積図で追究しようとする児童の姿 |
| 5 |
3 |
|
| ・ |
| 学習感想の記述から面積図のよさを感じている児童の姿 |
|
| |
| 「計算のきまりで求める方法はむずかしかった。一番やりやすいのは面積図」 |
|
|
|
|
| 「分数のわり算では面積図による追究はむずかしいのではないか」という研究会等での声に迷いながらも,児童の姿から面積図の必要性を強く感じる |
| 均等に分けた少人数学習で(どの児童にも必要であれば), |
3 |
÷ |
2 |
まで |
| 5 |
3 |
| 面積図と計算のきまりを扱いたい |
|
|
| <面積図を必要とした児童の数(H17年度の追究の様子)> |
|
|
|
|
|
|
 |
(H16年は1名) |
|
|
|
|
|
|
|
 |
| (H16年は5名) |
|
|
|
|
3.自分の考え方を説明し合うことにより理解を深めるグループ学習
グループ学習のめあて
グループみんなが「わかる」「できる」
〜みんなが先生でもあり,先生は学ぶ人でもある〜 |
| <めあて> |
・ |
自分の考え方を友だちに説明することによって,よりわかるようにしよう。 |
| |
・ |
友だちの考え方を聞いて,そのよさを学ぼう。 |
| |
・ |
いろいろな考え方のちがいに気づこう。 |
|
|
| |
グループ学習を取り入れた1時間の学習の流れ

|
|
|
 |
 |
 |
 |
| 参考になる考えはメモをする。 |
| ・ |
何がわかればいいのか。 |
| ・ |
今までの学習で使えそうなことは何か。 |
|
|
 |
 |
 |
|
 |
 |
 |
 |
|
 |
 |
 |
 |
とにかく自分で考える。
説明や理由も考えておく。
友だちの様子も気にかけながら |
 |
 |
 |
 |
|
 |
|
 |
 |
|
|
 |
 |
 |
 |
まとめ(ここが大事)
→赤ペンで記入 |
| ・ |
よくわかったこと |
| ・ |
つけ加えた方がよいこと |
| ・ |
訂正したいこと |
| ・ |
発見したこと |
|
|
 |
 |
 |
|
 |
 |
 |
|
|
|
|
|
 |
 |
 |
 |
| さらにパワーアップするチャンス! |
| ・ |
考え方を比べよう(同じところ・よいところ) |
| ・ |
ポイントを自分の言葉で書く |
|
|
 |
 |
 |
|
| |
 |
|
| |
|
 |
 |
 |
 |
| ・ |
わかったこと |
| ・ |
疑問に思ったこと |
| ・ |
よかった友だちの考え |
| ・ |
発見したこと |
|
 |
 |
 |
 |
|
| |
 |
| |
|
|
|
4.授業の実際
|
| <個人追究> |
| 面積図で追究を始めたK児に,教師が線分図の目盛りに着目する助言をすることにより,自分の力で解決することができた。 |
| 1 |
d で |
3 |
m2だから |
3 |
×3 |
| 3 |
5 |
5 |
|
| 「 |
1 |
m2が9こで |
9 |
m2」と書き加える |
| 5 |
5 |
|
|
|
| <グループ追究> |
| K |
; |
| えっとねえ, |
1 |
d で |
3 |
あって,ここまで |
3 |
が3つ分あるから, |
3 |
×3。 |
| 3 |
5 |
5 |
5 |
|
|
|
 |
 |
 |
 |
計算のきまりで個人追究をしたN児が,
K児の面積図の説明を聞いて理解を深めていく。 |
 |
 |
 |
 |
|
|
| N |
; |
| (赤で「 |
3 |
m2が3つ」と書く。図の色をぬってあるマスの縦に3,横に…) |
| 5 |
|
|
|
|
|
| <個人追究> |
|
|
|
 |
|
| 同じく面積図で追究を始めたN児「ここが |
1 |
」 |
| 10 |
|
|
 |
 |
 |
 |
前時,K児の追究によって理解が深まったN児のつぶやきが,K児の追究を深める |
 |
 |
 |
 |
|
 |
|
|
 |
 |
| 1m2の中のマスを数える。両手で |
1 |
m2を囲む |
| 10 |
|
|
|
|
|
| 「1あたり量を求めるためには,分子でわって単位分数を求め,分母をかけて1にする」という分数のわり算の意味を理解した記述 |
|
 |
 |
       |
 |
 |
K児学習感想の記述;
5分の3m2を2でわる→10分の3m2
10分の3m2の3倍→10分の9m2
分子でわって分母をかけるということがわかった。 |
 |
 |
 |
 |
|
|
|
【考察】 ÷ の追究において,面積図で追究したK児がグループ追究で説明することにより,計算のきまりで追究したN児も面積図の理解を深めている。次時の ÷ の追究では,N児は面積図で答えを求めることができた。一方,面積図に抵抗を感じたK児は,N児のつぶやきを意識しながら,いったん計算のきまりで解いてから面積図に戻って追究をする姿が見られた。
5.おわりに
2年間続けて同じ場面で授業を行うことにより,教師の「分数のわり算」の教材観が深まったことが一番の成果であると思う。「面積図は難しい」という意見も多いが,児童の姿を見ていると,面積図は大変有効な手だてになることもわかった。 また,単元を通してグループ学習を取り入れることにより,納得するまで説明し合おうという態度が育ってきたことは大きな成果だったと思う。 子どもは,教師から学ぶのではなく,自ら学ぶ力を持っているということを実感することができた。 |