2年
子どもにとって,リアリティ(意味)のある算数学習を願って
〜乗法の概念(基準量)×(いくつ分)につながる同数累加〜
長野県 N小学校

1.はじめに

 子どもにとって,リアリティ(意味)のある算数学習を願い,次の視点から題材を考えてみました。

(1)
子どもの身のまわり(社会)とのつながり
(2)
子どもなりの数理
(3)
数学的な見方・考え方の高まり


2.題材が生まれるまで

 ヒツジと共に生活している子どもたちは,冬のえさ不足を心配していました。ヒツジには,1日2kgの乾草が必要です。そこで,ヒツジが12月に食べるえさの量の見通しをもつために,「1日2kgで31日分のえさの量は何kgなのか」を求めることにしました。

3.教師の見通しと願い



4.実際の授業

【学習問題】  1日2kgで31日分のえさの量は,何kgなのだろうか

<<子どもたちの考え>>
<<考え1>>
12月は31日。
1日2kg食べる。
だから
  31+2=33
 
<<考え2>>
1日2kgだから,2個ずつ31日まで足していく。
だから,62
 
<<考え3>>
31が2個あったから,
 31+31=62
子どもたちの考え方は3通り。答えは,33kgと62kgに分かれました。Mさんは,31+31と考えて,62日か62kgか迷ってます。
Mさんの考え
こたえが62日か62kgか分かりません

(1)1日2kgで31日分のえさの量は,62kgでいいのかな。kgと日にちが両方あるよ。

【学習課題】
1日2kgで31日分のえさの量を31+2と考えてよいのだろうか
【教師の支援】
 以前学習した,「りんごが2こあり,女の子が3人いました。合わせていくつでしょう」という文章問題
《子どもたちの意識の流れ》
*Mさんの意識の流れ
【学習課題】
1日2kgで31日分のえさの量は,62kgなのだろうか
【教師の支援】

「1日2kgの31日分」をカレンダーで表したYさんの図
Aさん
 
R君
 
S君

 62kgと求められましたが,ここで新たな問題が起こってきました。「答えは,みんな62kgだけれど,
S君だけ考え方が違うよ」「どれも本当に,(単位は)62kgなのかな」確かめることにしました。

(2)2kgを31回足すことは,全部2kgを足しているから62kgでいいんだね。

【学習課題】
2+2+2+…+2(31回足す)で求めた62は,62kgなのだろうか
【教師の支援】
2+2+2+…+2(31回足す)の2には,全部kgがついているというSさんの考え
《子どもたちの意識の流れ》
*Mさんの意識の流れ

(3)横に足したら31kg。縦に足したら2kg。31+31もできて,2を31こ足すこともできるんだね。

【学習課題】
31+31で求めた62は,62kgなのだろうか
【教師の支援】
《子どもたちの意識の流れ》
*Mさんの意識の流れ
【学習課題】
31+31の式で,31は,31kgと考えることができるのだろうか
【教師の支援】
「1日2kgで5日分のえさ」を表す,ブロック
「1日2kgで5日分のえさ」をブロックで説明するMさん
@ A B C D


5.おわりに 〜子どものリアリティに立脚するために大切に考えていきたいこと〜

子どもたちが,生活の中で,「〜を求めたい」,「〜を知りたい」というように,算数につながる願いが生まれてくる場の醸成。さらに,学んだ算数を生かしていく場の醸成
子どもたちが解決しようとしている問題の中に内包されている価値は何か。また,目の前にいる子どもたちに,出合わせたい価値は何か。その価値を見極める教師の多様な教材観。
操作活動や表現から,子どもなりの数理を読みとる教師の子どもを見る眼や,子どもの思考過程に謙虚に寄り添う教師の姿勢。

前へ

次へ
閉じる