5・6年
算数卒業論文に挑戦
〜小学校算数のまとめとして〜
兵庫県丹波市立久下小学校
小田 敏治
1.はじめに

  小学校の高学年になると,小数や分数の加減乗除や,割合や単位あたり量・平均といった複雑な概念が習得できる。これらの概念を用いることにより,子どもたちの生活を,学習した算数の考え方や技能で分析することが可能になる。更には算数の目を通して,生活を改めて見つめなおすこともできる。

 そこで本校では例年,卒業を前に「算数卒業論文」に取り組んでいる。また,高学年(5・6年)の授業を教科担任制で行っていることを生かし,5年生は割合の分野にしぼって論文に取り組ませ,次年度へのつながりにしている。以下,その概要をまとめた。

2.指導の手順

【5年生:生活の中の割合】

 割合の概念を用いて,身近な人々にアンケートをとり,整理し,考察を行う。
 昨年度は,総合的な学習で『食のひみつ』を追究したため,その調査と本論文とを兼ねて,指導を行った。

【6年生:生活と算数】

 第1時  6年間の算数を振り返って(ウェビングマップ)
 6年間,算数で学習したことを思い出せる限り出し合い,黒板にウェビングマップを作る


 第2時  『生活と算数』〜算数の力をつかって,生活を見よう

 (1)  論文で大切にすることを考える

 ・  オリジナル   (本やインターネットのみを参考にするのでなく,自分で調査・測定をし,自分で分析する。そして,自分の考えを主張する。)

 ・  自分の考えを主張   (算数の力で明らかすることを通して,環境や人権,福祉などの課題に触れながら,自分の考えをまとめる。)

 (2)  論文のまとめ方を考える

 ・  題を工夫する (読む人が興味を持つように)

 1)  課題設定

 2)  計算

 3)  計算の結論

 4)  算数の技:どんな算数の技を用いたか(割合や平均,グラフ,速さなど)

 5)  考察:課題に対しての自分の考え(主張)

 6)  ひとこと感想

 (3)  その他

 ・  昨年度までの久下小の先輩の研究を参考にし,更に発展させる。

 第3時  研究課題を設定する。
 教師が,児童一人ひとりに個人指導を行う。

 第4〜6時
   研究をまとめる。
 教師は児童の相談に応じる。

 第7時  発表会
 5年6年合同で,研究を発表しあう。

3.児童の研究例

『えんぴつで自然破壊!』(6年)

 (1)  課題

 鉛筆1本の長さは20cmです。しかし,最後までは使えないので,使う長さは15cmです。鉛筆を1回削るごとに1.2cm短くなります。
 1日に2回,芯を折っているとすると,6年間に何本の鉛筆をむだにしていることになりますか?

 (2)  計算

 1.2cm×2回=2.4cm
 2.4cm×365日=876cm
 876cm×6年間=5256cm
 5256cm÷15cm=350.4本

 (3)  計算の結果

 1日に2回,芯を折ると,6年間で約350本,むだにしていることになります。

 (4)  算数の技

 割合・乗除

 (5)  考察

 1日2回,鉛筆の芯を折っていると,これだけの資源をむだにしていることにつながります。1本60円だと,6年間で21000円,むだにしていることになります。もう少し工夫して使うように気をつけていきたいです。

 (6)  ひとこと

 自分が小学校で勉強している間に,こんなにもお金を使っていると初めて知りました。

『たった数分,出しっ放しにするだけで・・・!』(6年)


『おふろの水で少しでも節約!!』(6年)


『みんなは,インスタントラーメンに野菜を入れて食べてるか?』(5年:割合)

 (1)  調査内容

 ぼくは「食のひみつ」を学習して,インスタントラーメンだけを食べていると栄養がかたより,生活習慣病になるので,野菜を入れて食べるといいということが分かりました。
 そこで,「みんなはインスタントラーメンに野菜を入れて食べているか?」ということを78人に聞きました。

 (2)  結果

 「インスタントラーメンに野菜を入れて食べていますか?」

 1)  入れて食べている人(37人) 37人÷78人×100≒48%(47%)

 2)  時々入れて食べる人(30人) 30人÷78人×100≒38%

 3)  入れて食べない人 (11人) 11人÷78人×100≒14%

 (3)  調査を終えて

 結果を見て,80%以上の人が野菜を入れて食べたことがあるのにびっくりした。
 ぼくは,まだ野菜を入れて食べたことがありません。一度試してみようと思います。

4.おわりに

 本年度の取り組みは3学期に入ってからになる。本年度は6年の速さの学習時,パラリンピックの車椅子マラソンに子ども達の自転車リレーが挑戦した。予想以上のスピードに子ども達は感動していた。論文時には,学習したことをヒントに,新たな研究が生まれることを楽しみにしている。

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