4年
発展的な考え方を育てる算数指導            
〜少人数指導における発展コースの学習を通して〜               
山形県新庄市立新庄小学校
三浦 和彦
1.はじめに

  現在,学習指導要領のねらいである「生きる力」の育成,とりわけその知の要素である「確かな学力」の育成が求められている。そのためには,個々の子どもの実態に応じたきめ細かな指導を行う必要がある。「発展的な考え方」は,「確かな学力」の一つであり,より既習の学習を深めたり,広げたりするために,不可欠な力である。

 本実践は,「発展的な考え方」を育てるために,少人数指導の発展コースにおいて取り組んだ実践である。

2.実践にあたって

 (1)  単元名 第4学年「三角形と角」

 (2)  教材観

 第4学年における「三角形」の学習は,辺の長さに着目して三角形を分類しながら,二等辺三角形や正三角形などの図形を理解させる。「角」の学習は,「直角」の概念を理解させる第3学年の学習をもとに,回転角(量)として角を理解させ,更に,三角形の角の特徴を理解させていく。

 発展コースにおける本実践は,二等辺三角形と正三角形が同じ仲間であり,正三角形が二等辺三角形の特別な形であることを理解させていく。また,直角二等辺三角形も取り上げ,それが,二等辺三角形の特別な形であることを取り扱う。

 (3)  指導形態

 「習熟度別指導」の形態で実践する。子どもの学力に応じた4つの学団を編制する。習熟度別指導を行うことによって,等質集団に対して指導ができるので,学級集団に比べ,学力の個人差が小さく,きめ細かな指導が行いやすい。

 どんどんコース(発展コース)

 (30人以下のクラス)
 じっくりコース(コース)

 (20人以下のクラス)
 がっちりコース(標準コース)(1)

 (30人以下のクラス)
 がっちりコース(標準コース)(2)

 (30人以下のクラス)

3.発展コースの実践

 (1)  三角形をつくる【1/15時間目】

 三角形を分類し,その特徴をつかませるために,いろいろな形の三角形をつくった。その際,コース毎に異なる素材を使った。

〈どんどんコース〉

ジオボードで作った三角形を,辺の長さに着目して分類した。


〈がっちりコース〉

ストローで作った三角形を,ペアで話し合いながら,分類した。

〈じっくりコース〉

ストローで作った三角形を同じ長さのストローの数を数えさせながら,分類した。

 ジオボードを用いることで,正三角形が二等辺三角形の仲間であり,二等辺三角形を垂直線上に伸した形が正三角形になることに気付かせやすい。


 分類する際に,ストローを用いた他のコースのように,辺の長さをもとにした分類に気付きにくいので,より思考を伴いながら,活動することができた。

 (2)  三角形を分類する【2/15時間目】

 導入で,2つの三角形を提示し,次のような発問した。




2つの三角形は,同じ仲間ですか。

 子どもたちは,2つの図形に直角があることに気付き,出された2つの三角形は同じ仲間であるという考えがほとんどであった。長さに着目して違う仲間だという考えが出てこなかった。それで,長さに着目した見方ができないまま,三角形の分類に入った。
 長さに着目した見方が出てこなかったのは,2つの図形に直角が入っていたからである。長さに着目した考えを出させるためには,以下のような図形を提示すればよかったと思っている。


 次に,以下のような6つの三角形を提示し,分類させた。


 自力解決時に,長さを測り始め,長さに着目して分類し始めた子どもがいた。それで,活動の途中に,その子どもにどんな考えで分類しているかを発表させた。そして,「長さ」をもとに分類する方法もあることに気付かせ,自力解決を再開させた。

6つの三角形を分類していき,2の図形は正三角形で,二等辺三角形の仲間であること,6の図形は,二等辺三角形でもあり,直角三角形でもある直角二等辺三角形であることに気付かせた。

 (3)  三角形を分類する【7/15時間目】

 二等辺三角形を垂線で切った2つの三角形を提示し,次のような発問をした。


2つの三角形は,同じ仲間ですか。



 多くの子どもたちが,対応する2つの辺や角が等しく見えることを発表した。そこで,同じ形かどうかを重ねて確かめた。
 そして,垂線で切った1つの三角形がもとの直角三角形の「ちょうど半分」になっていることから,次のような課題を設定した。



ちょうど半分になる三角形を見つけよう。

 次に,以下のような5つの三角形を提示し,「ちょうど半分」になる三角形かどうかを,直接折ったり,辺の長さや角の大きさで調べさせた。


 1235がちょうど半分になることを確かめた後,5の正三角形と2の二等辺三角形が同じ仲間かどうか発問した。すると,5は,ちょうど半分になる方向が3方向あるから違う仲間だと発表した子どもがいた。

 同じ仲間かどうかを話し合わせたが,なかなか結論がつかなかった。本時の終末に正三角形が,二等辺三角形と仲間だけれども,特別な図形であることを確認した。

 本時の授業では,ちょうど半分になっていること,つまり合同な三角形になるかどうか調べる活動を通して,二等辺三角形や正三角形の角の特徴に気付かせることができた。

4.終わりに

 「三角形と角」の学習で,『正三角形と二等辺三角形が同じ仲間』であることに気付かせるために,ジオボードを教材として用いたり,二等辺三角形を発展させて,『直角二等辺三角形』をとらえさせたりした。また,『合同な三角形の条件』を考えさせながら,三角形の角の特徴をとらえさせてきた。発展コースにおける今回の実践は,子どもの実態と教材の内容が合っており,三角形についての見方や考え方を広げることができた。

 習熟度別指導においては,等質集団と言えども,子どもの実態にも個人差がある。したがって,コースの実態に即した教材の選択をしていかなければならない。また,今後は,図形の指導のねらいの一つである「図形の感覚を豊かにする」ための実践も考えていかなければならない。

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