1.はじめに
本校では学級担任に担任外の指導者を加えた集団指導体制による少人数学習を毎学期1単元ずつ実施している。少人数学習においては,子どもたちをグループに分ける際の分け方が1つのポイントである。大きくは,均質・等質に分ける,習熟度別に分ける,の2つの分け方が考えられるが,学習内容によっては興味・関心別,課題別などのグループ形成も考えられる。本校でも様々な試みを行っているが,3年生では学級を解体して3組の子どもたちを均質・等質の5グループに分けて5人の指導者がどのグループも同様の学習を実践するようにしている。これは,3年生という発達段階からいまだ習熟度もさほど大きく開いておらず,幅広い意見を引き出すことが可能な均質・等質グループを形成する方が有効だと判断したためである。これにより学級では35人程度で行っている算数科学習が20人程度のグループで行うことになる。
2学期に同様の形態(少人数学習)で実践した「かくれた数はいくつ」の単元終了後の子どもたちの自己評価,アンケートの結果は以下のようになっている。
2.研究の視点
前述の自己評価,アンケートの結果や感想からは,子どもたちが少人数学習に好印象を感じているものの,絵や線分図をかいて問題を解決することにはまだ不十分であると認識していたことがわかった。つまり,楽しく学習はできていたが十分な理解を得るまでには少し課題を残していたのである。そこで,3学期に実践するに当たっては,ややもすると形式的な習熟を重視した指導が目立つ「かけ算の筆算(2)」の単元を取り上げて,「子どもたちの理解が進む楽しい算数の授業づくり」をテーマに以下の2点を研究の視点とすることにした。
○理解を深める算数的活動の模索
○評価を指導に生かす学習の構築
3.授業の実践
○単元の指導概要 (6時間取り扱い)
時 | 学習活動 | 算 数 的 活 動 |
1 |
買い物の場面をイメージして,(2位数)×(2位数)の式に表す。 |
【情景図を活用しての問題づくり】
「りんごを5個買うと85×5で・・」
「みかんを30個買うとどんな式かなぁ?」
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2 | 25×20の計算の仕方を考える。 |
【思考を助ける作図】
「25×2×10と考えて」
「25×10×2と考えて」
「25×4×5と考えて」
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3 | 既習事項から25×24の筆算の仕方を考える。 | 【筆算の仕方の自由思考】
「こんな筆算も考えられるぞ」
「20個と4個に分けて」
「4個で100円だから」
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4 | (2位数)×(2位数)の筆算の仕方を理解する。 | 【子ども同士で筆算の仕方を説明する】
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5 | 筆算の間違いを見つけてその原因を考える。 | 【間違いの原因を手紙にかく】
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6 | (2位数)×(2位数)の筆算を確実に行う。 | まとめと練習 単元終了後の自己評価 |
○評価について
毎時間の評価規準(ABC)を明確にして,すべての子どもたちの実態を正確につかみ,次時の学習計画を見直したり,必要であれば学級担任に連絡して,朝学習の時間等を活用して復習を実施したりした。また,毎時間の子どもたちによる自己評価(振り返り)も次時の学習計画作成の一助とした。
4.終わりに
単元終了後の子どもたちの自己評価,アンケートの結果は以下のようになっている。
上記の結果からは目立って理解が進んだというよい変容は残念ながら見られなかった。また,教師側からの評価からも上位と下位に2極化して分かれた結果が見られた。子どもたちにとっては,特に(2位数)×(何十)の計算になる筆算2段目の計算方法の習熟に最後まで課題が残っていたようである。今後はこうした子どもたちのつまずきをあらかじめ予測し,つまずきが見られた際に柔軟に対応できるようにすることが必要だと考えられる。また,単元の途中からの習熟度グループの編成も選択肢の一つとなり得るのではないかと思われた。
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