6年
「子どもの問いを引き出す問題提示の工夫」     
〜6年生「体積」の指導〜              
福岡県鞍手郡若宮町立吉川小学校
塩田 昌伸
1.児童の実態

 子どもたちはこれまでに,長さ,かさ,重さ,面積の学習を通して,測定の意味や普遍単位の必要性をつかんでいる。かさについては,ldlmlの単位を用いて水などのかさを測定したり,意味をとらえたりしてきている。また,本学年では直方体や立方体を構成したり面や辺の関係から考察したりして,立体の概念を理解してきている。

 立体の大きさ比べの方法としては,「見た目で」「各辺の長さの和で」「一部の面の面積で」「縦×横×高さで」が挙げられていた。立体の求積公式を使っている児童についても,基準とする立方体の「幾つ分」として立体の大きさを考えているとは言えない。

2.教材観

 本単元は,直方体や立方体の大きさ(体積)も,長さや重さ,面積と同様に単位の大きさを決めるとその幾つ分として数値化できることに気づかせ,体積の単位と意味をとらえさせることをねらいとしている。そして,既習事項とのかかわりで,体積の意味を広めたり,学習したことを生活の中に活用する力を育てたりするものである。

 本単元の学習にあたっては,「直接比較→間接比較→任意単位→普遍単位」という流れによる量についての比較の仕方と単位の必要性,手際よい単位の数え方,図形の合成や分解,整数や小数の四則計算,といったこれまでの学び方や考え方,知識・技能が必要となる。そして,それらを本単元での問題解決に機能させ,新しい数理を生み出してねらいにせまっていくこととなる。

 このような本単元を学習することは,普遍単位による量の測定についての理解を一層深めるとともに,量感を育み,算数の日常生活での有用性に気づかせる上で意義深い。

3.問題提示の工夫

 本時の指導にあたっては,まず,大小比較が容易な立体からかさ比べに入り,見た目では比較しにくい立体へと順を追うことで,「どうしたら比べられるのだろう」という問いを発生させる。

 調べる段階では,面積の学習で数値化して大小を比較したことに着目し解決することが望まれるが,実物を用いた具体的操作や多様な考え方の交流を通して問いを連続させ,空間的な広がりをもつ量(体積)のとらえかたをつかませたい。そして,普遍単位による量の測定についての理解を深めたい。

4.授業の実際(本時1/10)

教師の働きかけ児童の反応
 赤の直方体と黄の直方体ではどちらが大きいでしょう。
 黄が大きいです。ちょうど重なる面があるのでそこを下にして置くと,黄がはみだすからです。
 赤の直方体と緑の立方体ではどうですか。
 緑が大きいです。これも重なる面があるのでそこを下にして置くと,緑がはみだすからです。
 ぴったりと重なる面があると,どちらがはみだすかで簡単に大きさ比べができるんですね。(ぴったり重なるを強調)
 
 では,黄と緑ではどうですか。
 一様にとまどいの表情
 きびしい。
 なぜきびしいのかな。
 ぴったり重なる面がどこにもない。
 見た目でどちらが大きいと思う?
 ほぼ半数ずつの挙手
 今日の学習ではっきりさせることはどんなことでしょう。
 どちらが大きいか。
 その調べ方。
「どれだけ」を加えめあてを確認する

立体のかさの比べ方を考え,どちらがどれだけ大きいかをはっきりさせよう。

 全員に実物大の立体(木製)を配り,自己解決に入る

 子どもたちは実物を重ねたり線を引いたりしながら,プリントに自分の考えを書き込んでいった。一人一人の考え方を把握したり,質問に応じたりしながら机間指導を行い,必要に応じて1pマス目の入った立体や実際に切ることができる立体(吸水スポンジ),一辺が1pの直方体を渡して自己解決を支援した。


T めあてにそって発表してもらいます。


 かさのことを「体積」といい,体積は一辺が1pの立方体が何個分あるかで はかります。体積はcm3という単位で表します。だから,いが3個分大きいということは,3cm3大きいと言えますね。

 この後,実際に1cm3の立方体24個と27個を使って問題と同じ立体を構成させた。


5.指導の成果と課題

 (成果)

  ○

 導入時に,大きさ比べを容易なものから難しいものへと問題を提示したことは,できることとまだできないことが明らかになるとともに,「何とか明らかにしたい」という子どもたちの追究意欲を高める上で有効であった。

  ○

 一人一人に実物大の木製立体を与えたことは,24cm3や27cm3という体積を「これくらいなのか」と実際の量感を伴って体得させることにつながった。

  ○

 必要に応じて「マス目の入った立体」「実際に切ることができる立体」を使わせたことは,子どもの考えを具体化し自己解決を促す上で有効であった。

 (課題)

  ○

 面積の学習を想起させてから立体のかさ比べに進んだが,「基準とするものの幾つ分」として考えた子は少なかった。数量の測定の基本となるこの考え方を,全ての領域で常に意識して日常の指導を行うことが大切である。



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