2年
単位の必要性を体験的に理解する学習          
単元名 長さ(1)              
山形大学教育学部附属小学校
鈴木 修
1.はじめに 〜「長さ」の学習を構成するにあたって〜

 2年生の「長さ」の学習は,子どもたちが生活の中で出会う様々な量に対する見方・考え方の基盤を育てるために重要である。ここでは,1学年の学習で経験した長さの直接比較や間接比較,任意単位による測定などをふまえて,子どもたちに次のような力を身につけさせたいと考えた。

 そこで,これらのねらいを達成させるための学習構成と支援のポイントを次のように設定して指導を行うことにした。

 (1) 子どもたちに,長さを正確に表そうとする意欲や共通の単位を用いて比べる必要感をもたせることができるような算数的活動を設定する。

 (2)

 子どもたちが,「○○の△個分」などのように,具体的な操作にもとづいた言葉で長さを表していくことができるように,個別に支援する。

 (3)

 「かんたん」「わかりやすい」「よいところを取り入れる」などといった視点をもたせながら考えを比べ合わせ,共通の単位を用いる必要性に気づくことができるようにする。


2.算数的活動の工夫

   ☆「長さの短い方が勝ち」になる「カエルのおはじきゲーム」
 縦90p×横60pの塩化ビニル製の板の上部に,下図のようなシートを貼り,おはじきをはじくスタートポイントを決め,ゲーム板にする。


 おはじきを,カエルに届けるプレゼントに見立て,スタートポイントよりおはじきを1回だけはじいて,池の中央にいるカエルの近くに届ける。


 おはじきの止まった場所に印を付け,一番近い子から順位を決めていく。


 池の中に入ったり,シートを飛び越えてしまったりしたときには,もう一度やり直す。


 このゲームには,子どもたち同士の記録(長さ)にそれほど大きな差が出ないという特徴がある。場合によっては,わずか数oの違いが順位に影響する。そのため,友だちの長さとのわずかな違いにもこだわって記録を比べ合う活動が可能となり,共通の単位を用いる必要感や「はした」の長さを表す必要感をもたせることができる。また,この活動を通して,2点間を直線で結んだときの長さが最も短い長さとなることについても気づかせることができると考えた。

3.単元計画

  
(10時間扱い)

学 習 活 動指 導 の ポ イ ン ト
カエルのおはじきゲームをしよう
(1時間)
 ゲームを通して,子どもたちに課題をつかませるとともに,以下の2つの要素について理解させる。
(1)2点間を結ぶ直線が最も短い長さとなること。
(2)任意単位のいくつ分かで,長さを数値化して表すこと。
みんなと比べることができるように,自分の記録を表そう
(5時間)
 グループごとの任意単位では限界があることにに気づかせ,誰でも用いることができる共通の単位の必要性やよさを理解させる。
 もとになる単位を等分すると,より細かい単位をつくることができるということに気づかせる。
 普遍単位(p,o)について理解させる。
 ものさしの使い方・目盛りの読み方を理解し,正確に長さを測ることができるようにする。
長さの合計や違いを求めよう
(2時間)
 長さの場合でもたし算やひき算を用いることができるということを理解させる。
 1p=10oという関係をとらえ,単位換算も取り入れながら長さの和や差を求めることができるようにする。
いろいろな長さをはかろう
(2時間)
 身近なものの長さや自分たちの身体を使って表す長さを,ものさしを用いて正確に測定することができるようにする。


4.授業の実際

 (1) 任意の単位からグループ→クラス共通の単位へ

グループの記録表をつくろう。
(2教時目)

親指と人差し指を使って,指の開き具合で調べる。
↓
 指はすぐ動いてしまうので,あまり正しく比べられない。
持っていた鉛筆をゲーム板にあてて調べる。
↓
 長さが足りなくなるときがある。
 同じ長さの鉛筆がない。
同じ長さのものをつなげて調べる。
(乾電池,クリップ,方眼紙のマス目,数え棒)
↓
 測りやすい。また,「△こ分」という個数で長さを表すことができるので,ちがいがわかりやすい。

 子どもたちは,グループ内で試行錯誤しながら,同じ長さのものをつなげて測定する方法のよさに気づくことができた。

ゲームの結果を,クラス全員で比べよう。
(3教時目)

 それぞれのグループで自分たちの記録を表したものを一覧表にして提示すると,子どもたちは,他のグループの友だちと長さを比べることができる場合とできない場合があることに気がついた。


 何の長さをもとにして測定するか,ということに対して,子どもたちはそれぞれの根拠を明らかにしながら自分たちの考えを発表していた。その上で,このゲームの場面では方眼紙のマス目がいちばん適しているということにまとまった。

 (2)

 共通の単位を等分して,より細かい単位をつくる

はしたの長さは,どのように表すとよいのだろう?
(4教時目)

 方眼紙のマス目を用いて長さを表す際に,はしたの長さが出た場合の表し方が問題になった。「マス目何個分」で順位表をつくってみると,最も短い長さだったところに,K児とA児の2人が「マス目5つ分とちょっと」で並んだ。


 方眼紙のマス目を10等分することは子どもたちには困難だったので,あらかじめ目盛りを書き込んであるものを使って測定させた。K児とA児は,どちらも「大きいマス目5つと小さい目盛り1つ」で,同記録のチャンピオンになった。他の子どもたちも,自分の記録をさらに詳しく表すことができ,クラスで結果を比べ合うことができるようになった。

5.おわりに 〜単位の考え方をさらに広げる子どもたち〜

 こうした学習を通して,子どもたちに普遍単位のpとoを知らせた。昔の人々が様々な共通単位を用いてきたという歴史的背景や,単位が統一されないと不都合が生じるという必要性から普遍単位が生まれたことを知らせると,子どもたちは,ゲームを通して自分たちが体験したことと重ね合わせながら理解することができた。

 単元の最後には,ものさしで身の回りのものの長さを測る活動を設定した。この活動の中で,子どもたちは十進位取り法にもとづく単位の考え方をさらに広げていくことができた。

「ものさしの目印は,ちょうど10pのかたまりのところについているよ。」
「黒板の長さは,何百pにもなってしまうから,100pのかたまりもあるといいよ。」
といった声も聞かれた。

 こうした子どもたちのものの見方・考え方は,これからの学習や生活の中で,必ず生かされるものであると考える。

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