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科学的思考力・表現力を育成するための支援のあり方 |
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小学校教諭 | ||
学習指導要領の改訂により,理科の4観点の評価項目の中の「科学的思考」が「科学的思考・表現」に変わり,ますます言語活動が重視されることになった。
科学的な知識は最終的には「ことば」で表現され,思考するときも「ことば」で行われる。実際に観察したことや実験結果から思ったことや考えたことをいろいろな表現方法でまず表出することが科学的思考につながると考えられる。
授業の展開において子どもにイメージを書かせることは多い。先行研究においても描画法をはじめ,多くの実践が行われている。イメージを書くことで,ぼんやりした考えがはっきりしたり,さらに思考を深めたりすることができると考える。
そこで,思考力と表現力を視点とした子ども達の変容とその要因を考えてみたい。
5年生の「もののとけ方」の単元で,学習前に「とける」ということをどのようにとらえているのかを知るためにイメージマップを書かせた。
「とける」という言葉を中心にして書かせるのだが,図―1のように学習前はなかなか書けない。「とける」といってもその子によって生活経験や素朴概念が違っている。そこで,一人で書いたあとに,グループで話し合いながらイメージマップをまとめさせるとそれぞれの素朴概念が出てきておもしろい。図―2は,同じ児童の学習後のイメージマップである。学習したことがいかされ,言葉の結びつきがはっきりしており,その理由も明確であった。
図―1 学習前 | 図―2 学習後 |
イメージマップをいつでも使えるものではないと思うが,学習課題を絞りたいときや,一人ひとりのイメージが多岐にわたるようなときには有効であると考える。
また,言葉の結びつきなどから,評価としてもみることができた。
食塩の粒の色を問うと「白色」と自信を持って答える。しかし,実際に観察すると1粒は中が半透明でさいころのような形に子ども達は驚く。今までの概念が変わることはこれから思考していく上でとても大切だと思われる。
そこで,溶質が水に溶けていく様子をじっくりと観察させるために右の写真のように透明なアクリルパイプを使って変化の様子を見せることにした。長さ50cm,内径3.5cmで,水を400ml入れると水位は45cmになり,食塩を10g入れると水位が約0.5p上がる。
このパイプを使って観察・実験をさせると,落ちる粒の速さを測ったり,落とす量を変えたり,見る場所を変えたりといろいろな工夫をしていた。
事実をしっかりと見ないと,疑問や予想との違いなどがはっきりとしてこない。ということは,事実をしっかりと見せるための教材教具の工夫や観察実験の視点が明確でないといけないということになる。子ども達が今まで当たり前だと思っていたことが事実を見ることで変容させることはとても大切になると思われる。
目に見えない現象を考えるときには,イメージを書くことでぼんやりした考えがはっきりしたり,お互いの考えを理解したりできる。そこで,イメージ図を書かせることが多い。イメージを表しているから,正解というものはなく,自由に表現させるようにしている。
下記の図は,ホウ酸の温度によるとけ方の違いをイメージ図で表したものである。
温度を上げた時や温度が下がって結晶が析出したときの様子を表そうとしている。
イメージマップやイメージ図は,思考する上では有効なツールだと思われる。しかし,必要感がなければ子ども達も書くことができないし,書き方も分からないと急には書けない。つまり,継続してイメージを表現することにより,実験結果において自分の考えに即した考察をすることができることは明らかであった。イメージを表現することで子ども達は自分自身の考えを意識することができるし,他の子ども達との話し合いの中でも活用することができるとともに,考えを振り返ることもできた。
発達段階に応じて,また,どの単元でどのように書かせていくか,これからも研究していきたい。