全学年
自然の豊かさを楽しみながら進める自然保護活動        
茨城県古河市立大和田小学校
鈴木 ゆみ子

1.はじめに

 前任校である古河市立古河第七小学校は,渡良瀬川と利根川の合流地点の近くに位置しています。

 その合流点渡良瀬遊水地は,本州一の湿原です。この渡良瀬遊水地を起点にした学習活動は,地域の教育資源の活用として意義あるものと考えています。

 なぜなら,渡良瀬水系の上流足尾山を含めた学習活動には,田中正造に関わる歴史的学習,自然の宝庫である遊水地の自然観察学習,特産物や人々のくらしに関わる郷土学習等内容に深まりや広がりの可能性を含んだ学習活動が展開できます。

 以上の理由から,表題にあるような構えで活動を続け,今年度で6年目を迎えています。


2.活動のきっかけ

 自然保護への関心の高まり, シードバンクの学習 「お宝発見」の実施

 生されつつある渡良瀬遊水池の全景

 自然の宝庫であった遊水地が足尾銅山の鉱毒で汚染されてしまったという歴史がある。
 全児童で学校ビオトープづくり

 渡良瀬遊水地からトラックで運ばれた土を厚手のビニールシートの上で,手足で踏み固めながらトンボの目玉(ふたつの円)に形作った。
 5月のビオトープ

 はじめに芽を出したのが「葦(ヨシ)」で,これは渡良瀬遊水地に群生している植物であり,地域の特産品「ヨシズ」の材料でもある。
 ミズアオイの開花

 30〜40年前の種からの開花であることが,東京大学の生物研究室の調査で明らかにされた。

 この花の開花によって,学校中の自然保護への関心が一気に高まった。


3.具体的活動

 かつて自然の宝庫であった渡良瀬遊水地を守る,上流にある「足尾に緑を」の活動

 活動の方針

 上流に位置足尾山は,足尾銅山の鉱毒により,山は未だに岩山で植林が必要な状態である。

 また,植林と共に,急斜面には,土砂が流れ落ちないような土壌保護も合わせて必要である。

 そこで,下流にいる私たちがでできる活動を模索しながら,自然保護活動の一歩を踏み出した。


3.具体的実践

 遊水地に群生している「葦」を刈り取る高学年児童

 背丈の2倍ほどあるヨシを刈り取り束ねる作業は,大がかりなので,NOP渡良瀬未来基金の方々の協力によって実践している。
 チームワークよく声を掛け合ってヨシ編みをする中学年児童

 刈り取った葦を編んで,古河の特産品でもある「ヨシズ」をつくっている。

 毎年,足尾山の土壌保護のために送り続けている。
 足尾のどんぐりを苗木に育てている低学年児童

 足尾付近の山で拾ってきたコナラやミズナラなどのドングリを学校で育てる里親制度を実施している。
 苗木に水やりをする委員会活動の児童

 苗木は,3〜4年間ほど学校で育てるので,年々増えていく鉢を委員会活動で管理するようにしている。
 苗木とヨシズの活用

 ヨシズは急斜面に貼り付ける。雑草よけをし,苗木に太陽が当たるようにしたり,植林のために盛った土が流れ落ちないように保護するために活用している。
 渡良瀬の上流の松木沢ダムと足尾の山々

 交通費用が捻出できる年にはNPOに依頼しているドングリ拾い,植樹の活動を現地で行っている。

 山の険しさ,足尾銅山の足跡などを見学し,自然保護活動の意義を再認識する場にしている。


4.自然からのおくりもの

 癒しの場になっている学校ビオトープ(トンボ池)

 渡良瀬遊水池のミニバン版が身近にあるので,児童達は,昆虫を追いかけたり,散策したして,自然にふれる機会を日常的に持てる
 感動的な一瞬に出会える

 学校ビオトープで育ったヤゴの羽化の瞬間を理科の時間にみんなで観察したものである。
 みんなでつくる掲示板

 学校ビオトープで見つけた生き物をスケッチしたり,渡良瀬遊水地に生息している生き物を作品にしたりしたものを自由に掲示し,作る楽しさ,見る楽しさを味わっている。
 願いや思いを込めた作品

 花を飾る木製フラワーボックスの図柄は児童達の発想やデザインによるものである。

 トンボ池とトンボ,ミズアオイに関する作品が多い。児童達の意識の中に浸透していると言えるかも知れない。


5.おわりに

 環境問題は,今,切実な問題になっている。文化的生活の見直し,規制など具体的方策も必要ではあるが,学校教育の場では,まず自然の豊かさを感じ取ることで,心の豊かさが得られるような活動が必要ではないかと考えています。

 小さな一歩でも継続できる活動が望ましいと思います。植樹した児童が,50年後に足尾を訪れ,緑豊かな山々を眺めながら,この一連の活動を思い出してくれたら本望です。

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