1.理科学習について
(1) | 理科学習で大切にしていること
本単元で対象とする「ものがとける現象」は,子どもたちにとってあまりにも日常的な現象であり,一人一人個人差はあれど実際に様々な場面で物を溶かした生活や学習の経験から,溶解に関する概念が形成されています。
そこで本単元では,子どもの溶解に関する既有の概念を「均一性」や「保存性」などの科学的な見方や考え方へと変容させていくことをねらいとしました。
しかし,授業を通して子どもの既有の概念を科学概念へ変容させることは,容易に行えるものではありません。
そこで,下の3つのポイントを意識して,理科の授業を考え実践しました。
3ポイント
1) | 自分のイメージの明確化 |
2) | 多様なイメージの意識化 |
3) | 自分のイメージ変容の自覚化 |
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(2) | 3ポイントの説明
1) 自分のイメージの明確化
人間の思考には,これまでの生活や学習の経験則をもとにした自分の見方や考え方から,対象を無意識的に都合よくとらえていく傾向があります。
そこで,子どもに自分自身の自然事象に対する見方や考え方とその理由を意識的にとらえさせたいと考えました。
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2) 多様なイメージの意識化
子どもが自分自身の自然事象に対する見方や考え方を明らかにしても,それだけではよさや問題点をとらえることはできません。
そこで,自分自身の自然事象に対する見方や考え方を吟味・修正するための評価情報を得させたいと考えました。
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3) 自分のイメージ変容の自覚化
授業において科学的な見方や考え方は重視しますが,それだけでは子どもたちに自分の見方や考え方を変容させていく理科学習の楽しさを実感させることはできません。
そこで,既有の見方や考え方の変容過程を自覚させたいと考えました。 |
1)の自分のとらえ方をもとに2)の自他のとらえ方のずれが見つけることができ,逆に2)の友達のとらえ方から1)の自分のとらえ方がより明らかにできるので,1)2)に順序はないと考えています。
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2.理科学習の実際 「 5年 もののとけかた 」
この単元では,3ポイントをもとに以下の工夫を行いました。
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1) 自分のイメージの明確化
【 イメージ図 】
子どもたちに自分の頭の中に描いている水溶液中の溶質を○などの簡単な記号を使って表出させ,必要に応じて,文章記述させました。
このことによって,自分のイメージを文章ではうまく表出できない子どもに対しての保障や十分に表現できない部分についての補足ができました。
【 円筒型透明アクリル 】
これまでに,水中に入れた塩や砂糖などをかき混ぜながら,ものを溶かす経験をした子どもは多いが,ものが溶ける現象を意識的に観察した経験をもつ子どもはほとんどいません。
そこで,円筒型透明アクリルを使って観察させることにしました。
このことによって,上から入れた塩やグラニュー糖の粒が底に達するまでの間に,次第に角が取れ小さくなっていく様子が観察できました。
[ 材料 ]
○ | 円筒型透明アクリル・・・長さ(1m)×円筒の直径(9mm) |
○ | ゴム栓(01号) |
○ | プラスチック用ボンド |
○ | 鉄製スタンド |
○ | 塩やグラニュー糖 |
[ 方法 ]
1) | プラスチック用ボンドをつけたゴム栓を円筒型透明アクリルの底から押し込む。 |
2) | アクリル筒をスタンドに装着した後,水を注ぎ入れる。 | 3) | アクリル筒の中に塩やグラニュー糖を少しずつ入れながら観察する。 |
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2) 多様なイメージの意識化
【 丸磁石 】
円筒型透明アクリルを使って塩やグラニュ ー糖の溶ける様子を繰り返し観察させた後,水溶液中の目に見えない溶質のイメージを丸磁石で黒板上に表現させました。
このことによって,溶質に対する互いのイメージのずれが視覚的にとらえやすく,また,ずれが明確になることで話し合いの焦点化が図れました。
[ 材料 ]
○ | 丸磁石・・・教室で日常頻繁に使用されているカラー磁石 |
○ | 色画用紙 |
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【 学習プリント 】
各段階(予想段階・実験前の話し合い段階,実験・観察段階,まとめの話し合い段階)での溶質に対するイメージ図やその理由などをかき込める学習プリントを使用しました。
このことによって,子どもが単元を通しての溶解に対する自分のイメージ変容を改めてとらえ直せました。
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