1.はじめに
「ヒョウタン」と聞くと,だれもが胴のくびれた形を思いうかべることでしょう。ウリ科ユウガオ属,原産地は西アフリカの植物で栽培の歴史は古く世界各地の遺跡から果皮や種が出土してます。ところが実際に栽培した経験がある人は案外少ないようです。
4年生ではこれまでのヘチマのかわりに,ヒョウタンの種をまき,季節とともに植物はどのように成長するかを観察し調べる学習に取り組みます。
学習に取り掛かろうとしたとき,ニュース係の子どもが新聞で,校区にお住まいの村田富雄さんが,福岡県筑後市で開かれた第26回全日本愛瓢会展示会で大きさと形を競う部門で1位(胴回り130センチ)の総理大臣賞を受賞された記事を紹介しました。
そこで,村田さんにヒョウタンを育てる学習をすることを相談したところ,何度も学校まで足を運んでお話やアドバイスをしていただくこととなりました。
理科だけでは授業時数が不足するので,仕上げと加工は総合的な学習で取り組むことにしました。
2.授業の実際
(1) | 説明会
子どもたちに,学習のゴールをはっきりとつかませるためにガイダンスとして村田さんにお話をしていただきました。
ひょうたんを作る楽しみや苦労,工夫など直接聞くことができた貴重な時間となりました。見事な作品の数々を見て,子どもたちのやる気と期待とがぐんぐん大きくなっていきました。 |
(2) | 土つくり
堆肥や腐葉土,石灰をいれて30センチほどの深さまで耕しました。
また病害防除,害虫駆除のために定植の前に駆除薬を混合しておきました。 |
(3) | 種まき,育苗
4月上旬にポットにたねをまきました。2週間ほどして発芽しました。
催芽効果をねらって,種まき前にたねを水に漬けておくことは,ヒョウタンの場合逆効果になって発芽が極端に遅れてしまうのだそうです。 |
定植 |
(4) | 棚つくり,わき芽つみ
発芽から1ヶ月が経過し,本場が3枚の頃に植付けをしました。茎が伸びて棚に届くまでの間に出てくるわき芽はすべて除去したほうがいいそうです。 |
(5) | 開花,果実の成長
6月になってついに白い花が咲きました。夕方から一夜の花を咲かせます。もちろん雄花と雌花があります。
村田さんから,花が少ないのは日当たりが十分ではないからではないかとアドバイスがありました。
これまでヘチマを植えていた教材園に,ひょうたんを植えたのですが近くに電柱くらいのアメリカフウの木があるのです。急遽,枝を職員作業で切りましたが後の祭りです。
次年度からは,植える場所を変えたほうがいいとのことでした。 |
つぼみ |
(6) | 害虫防除,果実の保持
カメムシが葉や果実に穴をあけます。子どもたちと毎日見つけては退治していましたが村田さんが,休日に子どもたちがいない頃を見計らって薬を散布してくださいました。 |
(7) | 収穫
待ちに待った収穫です。十分に熟していないと種を出す途中で崩れてしまいます。
かわいい千成やちょっと大きい宝来,不思議な形のオニ棒ができました。 |
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実 |
(8) | タネだし
電気ドリルに木工用の刃を取り付けて穴をあけます。水につけておいて表皮と内部を腐らせます。においがもれないようにふたつきの容器に2週間ほど浸して屋外に置きました。ヒョウタンが浮かないように重しで押さえこみます。
ホースで水を流しながら,針金を使って中身をかき出します。この時,ゴムの手袋をしておかないと後で後悔することになります。 |
水洗い |
(9) | 乾燥
水を切った後,家庭科室の物干しとロープで干しました。近くまで来るとまだあのにおいがしました。においが残ったのは仕上げの水漬けが十分でなかったからだそうです |
作品 |
(10) | 仕上げ
乾いたヒョウタンに,工作用のペイントで思い思いの色を塗ってみました。マラカスにした子や動物の作りものにチャレンジした子もいて,子どもたちの自由な発想にこちらが驚かされました。
出来上がった作品は,校内文化祭だけでなく校区のコミュニティセンターの文化祭にも展示することが出来ました。 |
3.終わりに
地域の名人:村田さんのおかげで色々な品種にチャレンジしたり,ヒョウタンを加工して作品に仕上げるところまで学習を広げることができました。
猛烈なにおいも,今となってはいい思い出ですが,なんと酵素で中身を溶かして,匂いがほとんどでない便利な薬品もあるそうです。
春から夏,秋にかけて季節を追って園芸,秋から冬にかけては工芸と1粒の種から楽しみが広がる,食べられないけどおもしろい植物,それがヒョウタンです。
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