5年
メダカいっぱいの金津にしよう   
〜教育機器・器具を使用した観察の工夫〜    
石川県河北郡宇ノ気町立金津小学校

1.はじめに

 5年生の理科では,「魚のたん生と成長」の単元でメダカを扱っている。最近では,金津校下でもメダカが減り,探し出すのもむずかしい状況である。ましてやたまごを育てることは不可能に近いと感じていた。教室には6年前から育てているメダカはいるが,昨年からはたまごがかえらないという状況が続いていた。業者から購入することも考えたが,子どもたちから「絶対いるから探しに行こう。」と言われ,メダカ探検隊をつくり探しに行くことにした。近所のおばさんや田んぼで働いている人から情報を集め,12匹のメダカをつかまえることができた。「メダカいっぱいの金津にしよう」と子どもたちがめあてを作り育てていくことにした。うまくいけば増やして放流しようとも話し合った。
 子どもたちの目の輝きからやる気を感じたので,できるだけ本物の姿を見て肌で感じる授業にしようと単元を計画していった。

2.体験活動を重視した単元計画

 メダカを探しに校下探検をする。
 調べたいこと知りたいことをまとめ,ビオトープ見学に行く。
 教育機器・器具を使って観察をする。
 メダカのえさになる水中生物(ミジンコ)をつかみに学校田に行く。
 メダカの放流

3.教育機器・器具を使っての観察

 ☆使用したもの

 ・顕微鏡・シャーレ・スポイト・解剖顕微鏡・実物投影機・テレビ・ビデオ
 ・デジタルカメラ

 ※メダカをつかまえてきた翌日にたまごを生んだので,シャーレに移し毎日観察できるようにした。たまごの入ったシャーレを解剖顕微鏡の上に置き,実物投影機をセットしてテレビ画面で見ることができるようにした。デジタルカメラは児童がいつでも撮影できるようにし,撮ったものは毎日印刷して掲示していった。

4.たまごの変化(児童がデジタルカメラで撮影したもの)


1日目

あわのようなものが見える。もしかしてうまく受精しているかもしれないね。


4日目

たまごのまわりに毛のようなものがついているのがはっきり分かりますね。


8日目

とうとう体がはっきりしてきました。目が2つはっきりと確認できますね。


9日目

体もはっきり分かるようになりました。背骨ができているのが分かります。心臓らしきものも見えますね。


11日目

ときどきくるくる動くようになってきました。赤くなっているところが心臓ですね。後何日でかえるだろう。


13日目

目も体もはっきり分かるようになってきました。くるくる動く姿もとてもかわいいです。


14日目

模様もはっきりしてきました。あと2・3日のうちに誕生するでしょう。どんなふうに誕生するんだろうね。


15日目

今日からずっとテレビ画面にメダカをうつして,いつ誕生しても見ることができようにしました。


15日目 メダカ誕生

とうとうメダカが誕生しました。これがその決定的瞬間です。


誕生したメダカの赤ちゃん

目がくりくりでとてもかわいいですよ。


赤いえさを食べたら,おなかも赤くなりました。元気に育っています。

5.3年生に教えてあげた

 ビデオにうつるメダカのたまごを見ながら,3年生の質問に答えました。

→ビデオ メダカの誕生(QuickTime Movie:1.01MB)
注)このファイルはmov形式で保存されています。再生にはQuickTime Movie等のソフトウェアが必要です。再生がうまくいかない場合は、リンクを右クリックし、インターネットエクスプローラの場合は「対象をファイルに保存」を、ネットスケープの場合は「リンクを名前を付けて保存」をクリックし、ダウンロード後お試し下さい

6.児童の感想

7.実践を振り返って

 メダカがたまごを生んでから,毎日解剖顕微鏡をのぞきながら子どもたちと観察をしてきた。デジカメもうまく撮影できるようになり,楽しそうにレンズをのぞきこんでいた。誕生する2日前から24時間ビデオ撮影をして,決定的瞬間もたくさん見ることができた。すぐ生まれるもの・時間がかかるもの・頭から出るもの・尾から出るもの・うまく出られなくて途中で死んでしまうもの様々であった。ビデオを見ながら,「あと少し,頑張れ。」「よいしょ。よいしょ。」とみんなで声をかけながら応援していた。誕生した瞬間には,「やったぁー。」という声が教室に響いた。また,その日の昼に実際に誕生する瞬間を目にした児童もいて,掃除はそっちのけでテレビ画面に見入っていた。

 子どもたちは,すべてのたまごからメダカが誕生するものだと思っていたようだが,受精していないものも含めて,半分くらいが死んでいった。もがきながらもとうとう抜け出すことのできなかったメダカをどう感じ取ったのか。自然の厳しさを目の当たりにしたようだ。

 誕生したメダカは,30匹くらいであったがなかなか大きくならずに死んでいくものも多く,1ヶ月後には7匹になり,今水槽で元気にしているのはたったの3匹である。かわいい名前をみんなで付けて,同居しているエビとなかよくするメダカを毎日見ながら楽しんでいる。結局放流はしなかった。

 児童にとっては,誕生の瞬間を見ることができたのが一番の驚き・喜びであったと同時に,自然の厳しさ,命の尊さを感じ取った子も数多くいた。これからも自然の本当の姿を児童と共に見ていきたい。



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