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理科

ヘスの法則を利用したMgの燃焼熱を求める生徒実験

岡山県立岡山一宮高等学校 教諭 安東 知之

1.はじめに

ヘスの法則を利用して反応熱を求める生徒実験としてよく取り上げられているものとして,塩酸と水酸化ナトリウムとの反応がある。一方マグネシウムの燃焼は,強い発光をともない,生徒にとって印象深いものである。今回マグネシウムの燃焼熱を実験データからヘスの法則を用いて求める生徒実験を紹介する。

2.実験概要

実験 マグネシウムの燃焼熱
[A] 塩酸と酸化マグネシウムとの反応熱の測定

準備

  • 器 具 電子天秤 サーモカップ(フタ付き) 温度計 メスシリンダー 薬さじ スターラー
  • 材 料 酸化マグネシウム 1.0mol/L塩酸
操作1
メスシリンダーで1.0mol/L塩酸100mLをはかり取り,サーモカップに入れ,温度〔℃〕を測る。
操作2
酸化マグネシウムを約0.800gはかり,その質量〔g〕を記録する。
操作3
操作2ではかり取った酸化マグネシウムを操作1のカップに入れ,スターラーで撹拌しながら,最高温度〔℃〕をはかる。
操作4
操作1~3をもう一度行い,データを記録する。

結果

1回目 2回目
塩酸の質量 100 g 100 g
酸化マグネシウムの質量
最初の水温
最高温度
温度差

[B] 塩酸とマグネシウムとの反応熱の測定

準備

  • 器 具 電子天秤 サーモカップ(フタ付き) 温度計 メスシリンダー 薬さじ スターラー
  • 材 料 粉末マグネシウム 1.0mol/L塩酸
操作1
メスシリンダーで1.0mol/L塩酸100mLをはかり取り,サーモカップに入れ,温度〔℃〕を測る。
操作2
マグネシウムの粉末を約0.500gはかり,その質量〔g〕を記録する。
操作3
操作2ではかり取ったマグネシウムを操作1のカップに入れ,スターラーで撹拌しながら,最高温度〔℃〕をはかる。
操作4
操作1~3をもう一度行い,データを記録する。

結果

1回目 2回目
塩酸の質量 100 g 100 g
マグネシウムの質量
最初の水温
最高温度
温度差

考察

[A]の結果により,溶液の比熱を4.2J/(g・K)として,塩酸と酸化マグネシウムとの反応熱を求める。

[B]の結果により,溶液の比熱を4.2J/(g・K)として,塩酸とマグネシウムとの反応熱を求める。

[A][B]の結果を用いて,ヘスの法則から下の熱化学方程式を完成させる。

3.実験プリントと結果

次に生徒用の実験プリントと実験結果の一例を紹介する。生徒実験では授業時間の都合上,実験 [A],[B]ともに計測は1回のみとした。

実験 マグネシウムの燃焼熱

目 的 ヘスの法則を用いてマグネシウムの燃焼熱を求める。

準備

器 具 □電子天秤 □サーモカップ □ふた □温度計 □メスシリンダー □薬さじ

材 料 □酸化マグネシウム □マグネシウム(粉末) □1.0mol/L塩酸

[A]塩酸と酸化マグネシウムとの反応熱の測定

操 作

  1. [1] メスシリンダーで1.0mol/L塩酸100mLをはかり取り,サーモカップに入れ,温度t〔℃〕をはかる。
  2. [2] 酸化マグネシウムを約0.800gはかり,その質量m〔g〕を有効数字3桁で記録する。
  3. [3] [2]ではかり取った酸化マグネシウムを操作[1]のカップに入れ,軽く揺らして撹拌しながら,最高温度t〔℃〕をはかる。

結 果

塩酸の質量(塩酸の密度1.00g/mLとする)               〔g〕 100 g
酸化マグネシウムの質量                    〔g〕 0.800 g
観① 最初の水温                        〔℃〕 24.3 ℃
観② 最高温度                         〔℃〕 29.8 ℃
温度差                         -t〔K〕 5.5 K

[B]塩酸とマグネシウムとの反応熱の測定

操 作

  1. [4] メスシリンダーで1.0mol/Lの塩酸100mLをはかり取り,別のサーモカップに入れ,温度t〔℃〕をはかる。
  2. [5] マグネシウムを約0.500gはかり,その質量m〔g〕を有効数字3桁で記録する。
  3. [6] [5]ではかり取ったマグネシウムを操作[4]のカップに入れ,軽く揺らして撹拌しながら,最高温度t〔℃〕をはかる。

結 果

塩酸の質量(塩酸の密度1.00g/mLとする)               〔g〕 100 g
マグネシウムの質量                      〔g〕 0.500 g
観① 最初の水温                        〔℃〕 24.1 ℃
観② 最高温度                         〔℃〕 44.3 ℃
温度差                         -t〔K〕 20.2 K

考 察

[A]の結果により,塩酸と酸化マグネシウムとの反応熱を求めてみる。
熱量〔J〕は,液体の質量〔g〕×液体の比熱〔J/(g・K)〕×温度変化〔K〕で表される。

(1) 溶液の比熱を4.2J/(g・K)とすれば発生した熱量は
(100+m)×4.2×(t-t)=( 2328 )J=( 2.33 )kJとなる。

(2) 酸化マグネシウム1molは( 40.3)gだからm〔g〕は(0.0200)molとなり,酸化マグネシウム1molが塩酸と反応するときの熱量は(116.5 )kJとなる。

(3) この反応を熱化学方程式で表すと

[B]の結果により,塩酸とマグネシウムとの反応熱を求めてみる。

(4) 溶液の比熱を4.2J/(g・K)とすれば発生した熱量は
(100+m)×4.2×(t-t)=( 8526 )J=( 8.53 )kJとなる。

(5) マグネシウム1molは( 24.3 )gだからm〔g〕は( 0.0206 )molとなり,マグネシウム1molが塩酸と反応するときの熱量は( 414.1 )kJとなる。

(6) この反応を熱化学方程式で表すと

(7) (5),(6)の結果を用いて,ヘスの法則から下の熱化学方程式を完成させなさい。下の図を参考にしなさい。

【参考】

感 想

4.おわりに

今回紹介した実験は,岡山県教育センターにおいて平成17年度高等学校理科研修講座で実施したものである。実際のところ実験を行ってみると,一般的な中和熱の測定に比べて実験結果にややばらつきが大きいことが問題点としてあげられる。しかし,前述したように,マグネシウムの燃焼は発光をともなう印象的な反応であり,その燃焼熱を求めるという点では,生徒にとって興味深いものである感じている。従来行っている中和熱の実験と併用しながら,生徒実験として取り入れていければと考えている。

5.参考文献,URL