高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
理科

ビニール袋を二酸化炭素でいっぱいにしよう
~主体的に量的関係を理解しよう~

兵庫県立兵庫高等学校 大澤 哲

1.はじめに

高校に入学して化学を本格的に学んでいくうえで,化学反応式の意味や物質量(モル)の概念を理解することは非常に重要である。通常の実験では,決まった量の薬品を用いて生成した物質の質量を測定し,実際に起こった反応を化学反応式で表すことでモルの概念を理解させ,量的な関係が成り立つことを理解させることが多い。しかしながら,与えられた薬品や決まった量での実験では,機械的に計算することが目的になってしまう傾向がある。そこで,身近な気体である二酸化炭素を発生させてビニール袋をいっぱいにしようという課題を設定し,使用する薬品やその量,必要な実験器具や実験方法など,そのほとんど全てを生徒自らで考えさせ,物質量の概念を理解することで量的な関係を活用できることに気づかせることを目的にして,生徒が主体的に考えて実践する実験を行った。

2.授業の進め方

時間の許す限り同様の手順を繰り返し,より正確な実験を追及する。

※ 実験方法および用意した薬品・実験器具
6.0mol/L塩酸,炭酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,二股試験管を準備し,それ以外の実験器具等は各班で決める

3.1回目の実験

実施班(8班)中,6班は塩酸と炭酸カルシウム,2班は炭酸水素ナトリウムの加熱により,1回目の実験を行う。

<一般的な実験手順>

4.問題点および改善策の考察

班で問題点を指摘して改善策を探り,より正確に実験する方法を考える。

<主な問題点および改善策>

限られた時間(今回は2時間)内で実験を繰り返し,多い班で4回実験を行うことができた。

5.生徒のレポートより(考察および感想)

6.おわりに

本授業は本校総合科学類型の学校設定科目「創造応用Ⅰ」において,2年生の理系選択者24名で行った。 "主体性とコミュニケーション能力を養う"という科目の目的に沿って,器具の使用方法など最低限の説明は行ったものの,教科書等は一切持ち込まずほとんど全て自分たちの知識と経験のみで実施した(4月に実施)。設定された課題は非常にシンプルであったが,各グループで議論と失敗を繰り返し,最善の方法を求めてのチャレンジであった。上記の感想にもあるように,使用する薬品の種類や量,実験器具や装置を自分たちで考えることが非常に新鮮でかつ,やりがいを感じたようで,苦手意識のあったモルの計算や量的な関係についても,課題を成し遂げるために主体的に考える姿勢が見られた。このような簡単なグループ実験を通じ,授業で学んだ知識とコミュニケーション能力を生かして,主体的に自然科学の諸問題を探究していく生徒を育成していきたいと考える。