以前からコンピュータによる教材の作成を行ってきた。2014年からはMathematicaを用いて教材を作成し,授業を行うと同時に,ホームページでの公開も開始した(教材数は現在100を超えている)。本稿ではこれらの実践報告をしたいと思う。
他のソフトで教材を作成することも可能である。Mathematicaを利用している理由は,マニュピュレート(グラフィックを動かしたり,文字を表示させたりできる)やスライドショーなどプレゼンテーションに役立つ機能が充実していること,世界中にユーザーがいるためDemonstration等が豊富なこと,日本語対応であること,工夫すれば何でも作成可能であること等があげられる。ユーザーが多いので,分らないことなどをインターネットで検索すれば,たいてい解決方法を見つけることができる。問題点は有料であること,プログラムを組むために習熟が必要であること等があげられる。
プロジェクタでグラフィックを黒板に直接投影すれば,直接チョークで書き込みなどもでき便利である。これにより説明に集中することができ,解説の時間を短縮することができた。グラフィックを動かしたり,文字や記号などを必要に応じて表示させるなどして,印象的なグラフィックにしたいと思っている。
以前は説明の際にワークシートなどを用意していたが,図を自分で書かせることも大切だと考え,最近は聞くことに集中させ,まとめをなるべく簡素に板書することにしている。数学の力は,実際に自分で考え,問題を解くことでつくものであるから,解説で浮いた時間を生徒が自分の頭を使う時間に充てられればと思っている。
余りが0になるまで割り算を繰り返すことで,最大公約数が求まることをステップを追って説明できるよう工夫した。教科書の説明の補助に導入時に用いた。
三角形の外心では,鈍角三角形の場合,三角形の外に外心が来ることなど,簡単に見せることができる。内接四角形においては,点Dを自由な位置に置くことができ,角度等も必要に応じて示すことができる。
y=sinxのグラフは単位円を用いて解説されるが,y=sin2xのグラフにおいても単位円を用いて解説している。角度xを表す動径が青,角度2xを表す動径が赤である。青が1周する間に赤は2周するため周期は半分になる。
のグラフについても単位円を用いて解説を行った。 グラフの周期や平行移動を納得させる為に有効であった。
問1 中心(1,2,3)で zx平面と接する球はどのような球か
問2 球(x-1)2+(y-1)2+(z-1)2=16とxy平面との共通部分はどのような図形か
等の問題は黒板に図を書くのが大変だが,プロジェクタで投影させて説明した。見る方向も自由に変えられるので空間の認識の弱い生徒にも理解が容易である。また,質問に来た生徒にもグラフィックを見せて指導した。問題によってはグラフィックをプリントにして配布するのも効果的だと思う。立体図形はタッチパネルを用いると本当に立体に触っているような感覚になることもある。
複素数の回転を3つのステップ(上の図では2つしか紹介できませんでした)に分けて説明した。図が込み入ってくるので黒板に投影することで,説明に集中することができた。複素数分野はグラフィックにすると興味深い内容が多い分野である。
区分がn=10の時は十分な説明ができるように必要に応じて,等の記号を入れることができる。右は,n=100の時の図だが,このような図を即座に示すことができるのもコンピュータを用いる強みである。
Jimdoというホームページ作成サービス(無料)と,FC2のサーバー(無料)を用いて,作成した教材を公開している。CDFプレーヤー(無料)をインストールすれば,Internet ExplorerでMathematicaで作成した教材を動かすことができ,ダウンロードして,動かすこともできる。ホームページの作成は,体系的な教材の整理に役立っている。教材の一部はYouTubeにもアップしている。
高校数学コンピュータ教材
https://kobayashika64.jimdo.com/
Wolfram CDF Player(無償)をインストールすれば利用できる。ホームページに入って「CDFファイル ダウンロード」からダウンロードする。2017.6.2までに作成したファイル(*.CDF)が全て「MATH」というフォルダに入っている。(下右図)。分野ごとにフォルダを作り検索しやすいよう工夫した。自分が授業をする手順で教材を作成しているので使いづらい物も含まれていると思うが参考にしてもらえれば嬉しい。
コンピュータ教材を授業に用いてみて,教えることの効率化に大いに効果があると思われる。特にステップ毎に説明を行う場合,動きを伴う場合に説明を行いやすい。
現在は,教科書の説明が中心であるが,より生徒の理解に結び付く教材やプレゼンテーション方法にもチャレンジしたい。生徒に教材作成させることも教材理解に役立つのではとも考えている。
インターネットの利用は作った教材の整理に役立つ他,訪問者があったり,ダウンロードされたりすることが励みになっている。YouTubeに関しては英語でサブタイトルを入れたものは外国からもアクセスされている。