本校では,論理・表現Ⅰを週2時間で展開しています。大学附属校であるため大学受験を目指した授業を展開しておりませんが,大学進学後の英語による研究活動等を考慮し,生徒たちが確かな文法力・表現力を身に着けるべく指導しております。
ここでは,啓林館の『Vision Quest English Logic and Expression Ⅰ Advanced』の授業実践を報告致します。
基本的には,①文法事項の確認→②教科書Try it outの実施→③ペアワーク,という流れです。
①では,教科書の例文も用いますが,a)生徒たちが学校生活で使うかもしれない,あるいは,日常生活で目にするかもしれない状況を表現させるようにしています。時折,b)英語使用者として私が言いそうなことも表現させています。
a)の例としては,以下のものが挙げられます。
Unit 9 分詞(使役動詞have/get),部活でけがをしてしまった生徒を想定
→「私は肋骨(ribs)をレントゲン検査し(X-ray)てもらった」を作文
I had[got] my ribs X-rayed.
b)の例としては,以下を扱いました。
Unit 10 関係詞(複合関係副詞),私の好きな場所を伝えたい
→「ロンドンを訪れる時はいつでも私はリージェントストリートを歩く」を作文
Whenever I visit London, I walk along Regent Street.
a),b)ともにもっとリアルな内容を表現させていますが,ここではマイルドなものを紹介させていただきました。
②では基本的に教科書に沿って行いますので,ここでは割愛いたします。
③は毎時間行うようにしています。トピックを与えてブレインストーミング・メモ書きをさせます。所要時間は一連の作業を15分から20分を想定しています。
トピックはVision QuestのTry it outやUse itで使えそうなものがあればそれを取り出したり,あるいは,それを改変して設定したりすることもあれば,こちらで全く新しいものを作成する場合もあります。
形態は,①ペアワークで自分のことを伝える,②相手の言うことを聞き取ってメモをとる,③ターゲットの文法事項を用いてそれぞれのことを文章でまとめる,というものです。③については,自分のことは文章に加えず,相手のことのみをまとめ,それについて自分の考え・コメントを書く,という作業にする場合もあります。また,ペアワークではなく,個人の作業としてライティングのみの場合もあります。
図1: ワークシートの一部(ライティングのみ)
図2:ワークシートの一部
(自分のことと相手のことをまとめるパターン)
文章例もこちらで提示して,取り組みやすくするように心がけています。慣れてきたら,文章例は提示しません。
次に,時間の許す限り音声指導を行っています。Vision Quest Ⅰ Advancedでは,各LessonのLogic & ExpressionがModel Conversationで始まっています。こちらを利用して,英語のリズムを中心に,音声指導を行っています。図1が授業で扱ったスライド例となります。赤色の箇所が強勢をもつ音節を表しています。
図3:音声(リズム)指導のスライド(Lesson 7-1)
English as a Lingua Francaの立場にたつJennifer Jenkinsが提唱したLingua Franca Core(Jenkins, 2000)ではstress timing(強勢拍リズム)やweak forms(弱形)は重要視されていません。しかし,生徒たちが英語でコミュニケーションをとる相手はノンネイティブ・スピーカーだけではなくネイティブ・スピーカーも含まれることから,これらをなるべく意識して音読するように指導しています。また,connected speech(連続音声)の要素も意識することで,英語のリズムをより実現しやすいようにも指導しています。
また,文法項目によっては,他よりもさらに強調する場合があります。たとえば,
Unit 3 現在完了:I have just heard the news. (p.36)のhaveを弱く読む
Unit 5 助動詞:She can play the piano. (p.44)のcanと否定文She can’t play the piano.の
can’tの音声的な差異を意識して音読
Unit 5 助動詞:He must have had a good rest. (p.48)をスムーズに読むにはどうするか
i) haveの/h/が脱落 ii) hadとaで連結 iii) goodの/d/が脱落など
Unit 10 関係詞(関係代名詞who):I met a woman who spoke French well. (p.96)
関係代名詞whoは弱く読む
というような点が例として挙げられます。
以上の授業実践報告から,Vision Quest Ⅰ Advancedを十分に使いこなせているわけではないことがお分かりになるかもしれませんが,本教科書のいいところを活用しつつ自分なりにtailorしています。また,まだまだ改善途中であることも否めませんが,お読みいただきました方々の一助になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。