10月のページでは三角形の重心について次のことを知った。
三角形の重心の定理は,直観的に考えると数学以前に明らかである
重心の定理は,数学では数学の立場で証明され,力学では力学の立場で説明される
力学の立場では,三角形の重心は三角形(板)の重心というよりは3点の重心である
つまり,三角形には質量はなく,3点に同じ質量が分布していると考えるのが自然である
今月のページでは,重心の定理の発展問題を考えよう。
これまでは,三角形の各頂点に同じ重さのおもりをぶらさげたのであった。
ちがう重さのおもりをぶらさげると,どんなことになるだろうか。
これまでと同様に,三角形には重さがないものとする。
次の例で考えよう。重さのない三角形△ABCの頂点A,B,Cにそれぞれ2kg,4kg,5kgのおもりがぶら下がっているとする。
この三角形の力学的重心をGとし,AG,BG,CGの延長が対辺と交わる点をそれぞれD,E,Fとする。
この釣り合いの場面をモービルの釣り合いにおきかえると,次の3つの場合が考えられる。
棒BCの両端にかかる重さが4kg,5kgだから, BD':D'C=5:4
棒ADの両端にかかる重さが2kg,9kgだから, AG:GD=9:2
同様のことが次の場面から導かれる。
AF':F'B=4:2 CG:GF=6:5
いままでに分かったことを別の形で整理してみよう。
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三角形の頂点の位置に2kg,4kg,5kgの質量が分布している
三角形内のどこかに力学的重心がある
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各頂点から重心に向けて線を引き対辺まで延長する
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質量4の点と質量5の点を結ぶ辺は5:4に分けられる
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他の辺も同様に分けられる
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(質量4)+(質量5)の点Hに着目すると,図の線分は9:2に分けられる
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同様に残りのすべての線分の比が決まる
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上の図がいうなれば完成図なのであるが,この図の見方について説明しておこう。
図中の,,は質量分布を表している。
,,は辺の両端の質量の和である。
やは,同一直線上にある線分の比を表している。長さを表しているわけではない、じっさい,図中のと書かれた線分の長さは同じではない。
の頂点から見通せる位置にあってしかも遠いほうの線分がである。
と,との関係も同様である。
各頂点と重心を結ぶ線分につける数は次のように足し算で求められる。
以上のことを次の図にまとめる。
これまでにどんなストーリーを展開してきたか,この図を見て理解してもらいたい。
この図は次のようにも表される。
これらの図に名前をつけたい。次の定理にちなんでこれらをチェバ図と呼ぶことにする。
チェバの定理 △ABCの内部に1点Gがあり,線分AG,BG,CGの延長が対辺と交わる点をそれぞれD,E,Fとするとき,次の公式が成り立つ。
チェバ図を見ればこの公式は明らかである。じっさい,
となるからである。
この定理を示すには,次の3つの方法がある。
座標を使った証明
幾何学的証明
力学による説明
これまで話したのは最後の方法である。数学的な証明はここではしない。
上の公式は次のように覚えるとよい。昔の先生の知恵である。
頂点Aを出発して三角形の周上の点を,左回りに一周するように,次の呪文を唱えながら,訪問する。
頂点 |
分点 |
分点 |
頂点 |
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頂点 |
分点 |
分点 |
頂点 |
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頂点 |
分点 |
分点 |
頂点 |
A |
F |
F |
B |
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B |
D |
D |
C |
|
C |
E |
E |
A |
チェバ図を使って問題を解いてみよう。
問1 下の図でAF:FB=3:4,AE:EC=5:6のとき,
BD;DC= : ,AG:GD= :
(考え方) FBとECのウェイトを同じにする。
答 BD:DC=9:10,AG:GD=19:12
問2 下の図でAF:FB=3:4,AG:GD=11:6のとき,
BD;DC= : ,BG:GE= :
(考え方)
答 BD;DC=13:9,BG:GE=25:9
類題 三角形△ABCの内部に点Gがある。線分AG,BG,CGの延長と対辺の交点をそれぞれD,E,Fとする。ここでは,次の6つの比が考えられる。
AF:FB. BD:DC, CE:EA
AG:GD. BG:GE, CG:GF
このうち,2つの比がわかれば,他の4つの比がわかる。
次の各場合において,残りの4つの線分の比を求めよ。
(1) AF:FB= : ,BD:DC= :
(2) BD:DC= : ,BG:GE= :
(3) CF:FA= : ,AF:FB= :
(4) BG:GE= : ,CG:GF= :
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