筑後市の教育 〜教育原点回帰と志向〜
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福岡県筑後市教育委員会 |
はじめに
教育改革の流れの中,学習の原点を守りつつ,同時に変化する社会構造に適応する,いわば「不易と流行」をいかに両立させるか,という問題に出くわしている。今日は小中一貫校,二学期制,学校選択など次々と流行の教育が謳歌しているが,それはそれとして大切な志向である。
筑後市ではそうした流行よりも,頑なまでにも徹底した「基礎・基本」にもどる原点を守りつつ,不易にスタンスをおいての教育を注視している。時代おくれといわれても,そのことをやり通す一徹さも子どもの未来に責任を果たす気概かもしれない。
生きる力を簡単に言えば,確かな学力と豊かな心,健康・体力となるであろう。分かりやすく言えば,知・徳・体である。
筑後市では,その知・徳・体の3つに,人間関係をうまく取り入れた調和のとれた感性豊かな児童生徒の人間形成を図る。一言で言えば「生きぬく力」の育成を行なうことである。
この「生きぬく力」の育成のために,大きく3つのことに重点的に取り組んでいる。 「信頼される学校づくり」「確かな学力づくり」「豊かな心づくり」である。 これらの達成のために市内小中学校が総力をあげて努力している。そして,家庭や地域は,自身のもつ教育力を発揮し,学校を支える。教育委員会は,各種研修会や指導の充実を図るとともに,施設設備等の各種事業を推進していく。
1. 指導の重点
1 |
確かな学力をつけるために,やる気と学び方を育てる授業をします。 |
2 |
豊かな心を育てるために,道徳教育に力をいれます。 |
3 |
信頼される学校にするために,学校は特色を出し,学校を開きます。 |
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2. 取り組みの実際
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筑後市の学校 |
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小学校 |
羽犬塚小 松原小 古川小 水田小 下妻小 古島小 二川小 西牟田小 筑後小 筑後北小 11校 |
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中学校 |
羽犬塚中 筑後中 筑後北中 3校 |
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(1)確かな学力づくり・・・校内研も含め,日頃の取り組みを大事にします。
【筑後中学校】 |
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本年度の目標 |
先生の説明・指示・発問を集中して聴く生徒 |
中長期目標 |
「自分の考えを目的・相手・場面に応じて適切に話す」生徒 「自ら元気にあいさつし,すすんで交流する」生徒 |
重点課題の解決のため研究主題「自ら課題意識をもって,集中して聞こうとする生徒の育成〜『4つの聞き方スキル』を身に付ける指導を通して〜」を設定し,取り組んでいる。 |
聞き方スキル研究構想図 |
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全体構想(PDF:121KB) |
テーマ分析(PDF:151KB) |
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○ |
教科の目標,内容,教科学習の基礎となる「読み書き計算」の徹底を図っている例 |
ほとんどの小中学校で,週時程や日課表にスキル学習や補充学習を設定し,学習内容の習得徹底に努力している。
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【古川小学校】スキルアップタイム(スキル学習)の取り組み |
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スキル学習に取り組む児童 |
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○ |
諸事業
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基礎学力向上教員派遣 |
市独自に8名の基礎学力向上教員を採用し,中学校3校と35人以上の学級がある小学校5校に週4日の派遣を行なっている。
また,市独自に6名の学習障害担当加配を派遣している。
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教育研究所での教科指導の充実 |
筑後市教育研究所では毎年10数名の先生方を研究員として委嘱し,1年間の研究に取り組んでいる。 さらに,希望者を対象に,教科指導力向上講座を実施している。
平成19年度は,算数・数学科,国語科,社会科,道徳,生徒指導,低学年における発音指導の各講座を開設している。
また,教務主任を対象に,2年間の教育課程改善の課題研究を実施している。
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校内研修の充実 |
市独自の3年間の研究指定を行い,毎年2校ずつが発表を行なっている。
平成19年度の発表校
【松原小学校】 |
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自己表現力を育てる国語科学習指導 〜操作活動を重視した学習過程を通して〜
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【古島小学校】 |
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松原小学校高学年分科会の様子 |
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(2)豊かな心を育む・・・道徳教育の充実をめざします。
○ |
道徳教育の充実
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平成18年度から3年間で市内の全教員が受講する道徳研修会を実施し,道徳教育の理解,道徳の時間の指導力向上を目指している。 |
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道徳教育をテーマに研究に取り組む学校
【下妻小学校】 |
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あるがままの自分を見つめ,あるべき自分を見つける子どもを育てる道徳学習指導 〜自分の思いを表現する活動の工夫を通して〜 |
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下妻小道徳授業研究の様子 |
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○ |
様々な体験活動
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児童生徒の体験活動の充実を図るために様々な体験活動が実施されている。
【二川小学校】 絣体験に取り組む児童 |
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(3)信頼される学校
○ |
ちっご教育の日・・・地域・家庭と学校の連携・協力を推進するため「ちっご教育の日」を設定し,各校区で学習公開や教育後援会等を実施している。 |
例 【古川小学校】大相撲の古川場所での力士との交流。
3. まとめ
全国学力調査では,AB問題ともに,全国及び県の平均を上まっている。
また,学習状況では宿題をする子や「数学の勉強を大切」と考える生徒も全国及び県を上まわっている。
子どもに関わり,学力を徹底して付けようとする教師の努力と,受け止める児童・生徒の姿が認められる。また,そのことにより学校への信頼も高まっている。
(参考) |
平成19年度全国学力・学習状況調査 |
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小 学 校 |
中 学 校 |
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国語A |
国語B |
算数A |
算数B |
国語A |
国語B |
数学A |
数学B |
全 国 |
81.7 |
62.0 |
82.1 |
63.6 |
81.6 |
72.0 |
71.9 |
60.6 |
福岡県 |
81.1 |
60.0 |
81.1 |
61.4 |
81.1 |
71.0 |
70.8 |
58.8 |
筑後市 |
84.4 |
64.0 |
88.8 |
66.4 |
85.7 |
76.0 |
78.9 |
65.9 |
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学習状況調査から(中学校) |
家で学校の宿題をしますか |
数学の勉強は大切だと思いますか |
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している |
どちらかといえばしている
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あまりしていない |
全くしていない |
全 国 |
55.6 |
24.6 |
13.4 |
6.2 |
福岡県 |
52.9 |
25.5 |
14.1 |
7.5 |
筑後市 |
69.6 |
20.3 |
7.0 |
3.2 |
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当てはまる |
どちらかといえば当てはまる |
どちらかといえば当てはまらない |
当てはまらない |
全 国 |
43.0 |
35.6 |
13.9 |
6.0 |
福岡県 |
44.9 |
34.5 |
13.2 |
6.1 |
筑後市 |
52.9 |
32.0 |
11.0 |
2.0 |
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学校には難問が山積しており,それも時間とともに深刻になっている。これらの一つ一つに取り組み,解決していくために求められるのは,教師一人一人の資質能力の向上である。
教師のあり方として第一には,これからの教育には学校教育をめぐる諸問題に教師自らが主体的に取り組み,日々の教科指導,生徒指導等に地道に着実に実践しつつ,そのさらなる創造的なあり方を模索することを通じて自らの力量を高めていくことが求められる。
第二には,教育は人と人とのかかわりあいにおいて成立するもので,変化する社会であればあるほど教育の原点に立ち返る姿勢が求められる。
第三には,目まぐるしく時代が移り変わる時に,教育を志向する教師が何よりも必要とするのは「発想の転換」である。
第四には子ども一人一人が得手や個(コア)をもって生涯ライフスタイルにかかわりあう個の確立を図るスペシャリストの道への道程が教育となり,教師が子ども一人一人の長所に応じて,その指導,援助をいかに果たすかが必要になってくる。
「教育は人なり」といわれるように,教育は何よりも,その担い手である教師の資質にかかってくる。「人間愛,教育愛を根底にした豊かな人間性」,そして的確な判断に基づく先見性,説得力など社会の変化や時代の進展に対応するための資質を教師は備えていくことが今後の教育のあり方として期待される。
これからの数年間は,教育改革が進む中で,過去を凝視し,現在を確認し,未来に向けて悔いの残らない21世紀の教育の理念を実現するために,教育に携わるすべての教師の正念場になることは必至である。
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