(1) | 体験不足に関する危機管理
近年,子どもたちの直接体験の減少の程度は,目に余るものがある。例えば,「木に登る」ことや「生きた魚をつかむ」経験をある程度もつ子どもは,20%程度にすぎないといわれている。
今回一部改正された学校教育法でも,学校に,「……,社会奉仕体験活動,自然体験活動等の体験活動の充実に努めるものとするとともに,社会教育関係団体等の関係団体,関係機関との連携に十分配慮するものとする。」(第18条の2の関係)というように,体験活動の充実を求めている。今般の教育改革では,学習内容削減の是非などの問題に関心が集中しているが,子どもの直接体験不足も,学校経営を守る危機管理の一つと考えたい。そして,校区の池や河川に直接出向いての水環境調査など,地域の自然を観察・調査する体験学習等を重視したい。また,琵琶湖畔でのカヌー・ヨットやドラゴンボートによるスポーツ体験学習等も重視するよう図りたい。 |
(2) | 学力低下に関する危機管理
新学習指導要領のもとでの教科教育は,学校週5日制完全実施とともにスタートした。しかし一方では,新しい教育内容は,基礎的・基本的内容に厳選し3割近く削減され,学力低下につながるとの強い懸念と不安感が寄せられている。
学校を預かる校長にとって,この学力低下に対する警鐘は,突発的に発生する事故・事件とは性格を異にするが,学校の存続そのものを危うくする深刻な危機管理的事態と受け止めたい。そして,その危機回避に向けて教育活動を改めて見直し,保護者や地域社会から信頼される中で,安定した学校経営ができるよう努めたい。
学力低下に対する危機回避の方法としては,1時間の授業の中に体験的活動を組み込んで充実を図ること,「総合的な学習の時間」の学習のねらいの明確な説明を行うこと,学校あげての指導法の改善を行うことなどに取り組みたい。 |
(3) | 人的管理に関する危機管理
授業が成立しない,子どもの掌握ができない,保護者とのコミュニケーションが図れず苦情が殺到するなどの指導力不足教員への対処のしかた等,いわゆる「教職員の人的管理」も,これからの学校経営では,もっとも危機意識をもって臨まなければならない課題の一つである。
指導力不足教員については,今回の法改正でその対処を示し,各都道府県教育委員会は,それを受けて具現化に向けて努力している。また,体罰,セクハラなどの教育への奉仕者たるにふさわしくない行為に対しても,徹底した未然防止の管理体制を確立しておきたい。言葉の暴力も教員の品性ともかかわる問題でもあり,適切に対処したい。 |
(4) | 情報管理に関する危機管理
これまでの学校教育での情報管理は,教育情報の多くが子どものプライバシーに関するものが多く,その保護を重視する立場から,情報開示には慎重な対応であったといえる。しかし,今回の「小・中学校設置基準」の公布(平成14年3月)では,その大きな柱の一つとして「学校運営の自己点検および評価と情報の積極的提供」をあげている。また,知る権利を前提とした公文書公開制度の趣旨からも,今後は,「知る権利」との関係で,保護者や地域社会に対して学校が果たすべき「説明責任」として,具体的な教育情報をどこまで開示するかが問われている。
これからの学校は,日頃の情報公開が危機管理に直結することを認識して,日々の学校経営に万全の体制のもとで当たりたいものである。特に,プライバシー重視に依拠して,公開すべき情報さえ開示せず,学校は閉鎖的との批判を受けることのないようにしたい。 |