1.はじめに
本校は,生徒数591名,クラス数が1年5クラス,2年5クラス,3年5クラス,特殊3クラスの中規模校である。学校の周辺は繁華街と住宅街である。
(1) 本校の選択授業
2年生では,[週1時間で4教科10コース],3年生では,[週2時間で4教科10コース],内訳は,音楽・美術・体育・技術家庭の4教科8コース,国語・社会・数学・理科で各2コースとなっている。
(2) 理科の選択授業
「プランクトン実験コース」は,第2理科室(2F)で定員25名,「理科実験コース」は,第1理科室(1F)で定員25名である。
本校では,選択の授業を実践してから今年でちょうど4年目になり,理科は毎年2つのコースを開いている。幸いなことに理科室が2つあり,理科を選択する生徒が毎年20〜25名でちょうどよい人数である。川崎市の中学校では普通,理科室は1つであり,2つの理科室を備えている学校はまれである。また,本校は1クラスに38〜40名の生徒がおり,理科室はほとんど満員状態である。
今回は,「プランクトン実験コース」の実践を紹介したい。
2.学習内容と実験道具
(1) 学習内容
1) | プランクトンを顕微鏡で見てスケッチをする。 |
* | 生きたミジンコを観察させるのがポイントである。→ミジンコの心臓を生徒が見つけると,「オー」という歓声が起きる。 |
2) | 淡水のプランクトンを飼育し,1年間観察する。 |
3) | 海のプランクトンを顕微鏡を見てスケッチをする。 |
* | 淡水と海のプランクトンの違いを認識させたい。 |
4) | メダカにミジンコを捕食させ,そのようすを観察させる。 |
5) | できれば近くの池へプランクトン採集に行きたい。 |
(2) 実験道具
1) 1人で1台の生物顕微鏡と1台の双眼実体顕微鏡を使用する。
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顕微鏡 左が生物顕微鏡,右が双眼実体顕微鏡 *生物顕微鏡 マリスMic-Wオリンパス,双眼実体顕微鏡 マリスVE-21,20-7390 |
2) スライドガラスは,プランクトン観察用のスライドガラスを使用する。
3) スポイト,ガーゼ,スライドガラスは,個人で所有する。
4) | 水槽 600×400×300 を用意し,ミジンコ属(Daphnia sp.)を手に入れて,下の図のように飼育する。 |
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*ガラスの蓋をする。底に砂利を敷く。 |
水 槽 |
ミジンコ 水野 壽彦「日本淡水プランクトン図鑑」保育社より |
生徒のスケッチ |
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5) プランクトンネット
3.授業の流れ
(1) | 各自が顕微鏡をロッカーから取り出し,生物顕微鏡と双眼実体顕微鏡を用意する。 |
(2) | スポイトを使って水槽から生きたミジンコをとり,スライドガラスに入れる。 |
(3) | はじめに,双眼実体顕微鏡でミジンコ全体の形と動きを観察する。 |
(4) | 次に,スライドガラスにカバーガラスをし,生物顕微鏡で細かいところを観察する。特に,脈打つ心臓を観察すると生徒は感動する。また,卵を持っているミジンコもいる。 ミジンコはほとんどが雌で,単為生殖で増える。 |
(5) | ミジンコが動いて観察しにくいときには,アルコールを1滴たらしてミジンコの動きを止める。 |
(6) | ケント紙にH4の鉛筆でスケッチを行う。 |
4.生徒の反応・変容と評価,まとめ
(1) 生徒の反応
1) | 生徒のほとんどは自分で道具を用意し,ミジンコを観察している。 |
2) | 生徒の質問は,心臓とミジンコの背中にある卵に集中する。 |
3) | 心臓の動きと卵の存在で,小さな生き物にも命があることを生徒は実感するようである。 |
4) | スケッチは授業を重ねるにつれ,徐々にうまくなってきている。 |
5) | はじめは興味を示さなかった生徒も,次第に顕微鏡を見はじめ,ミジンコ以外に髪の毛,皮膚,つめを顕微鏡で観察しはじめた。 |
| 顕微鏡で観察 |
(2) 評 価
毎時間,スケッチにA〜Cの評価をつける。スケッチは次回の授業時間に返却するので,生徒は自分の評価を知ることができる。また 関心・意欲の評価は,授業中に教師が巡回しながら,生徒本人に「今日のOO君はAだよ」などと知らせていく。
今後は,いろいろなプランクトンを見せるために標本をあちこちから手に入れる必要がある。
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