授業実践記録

体細胞分裂のいくつもの段階を多くの生徒が観察するにはどうすればよいか
石川県金沢市立小将町中学校
濱高 大一

1.はじめに

 体細胞分裂を観察するには,教科書ではタマネギの種子から発芽した根,または,2〜3cmにのびたタマネギの根を使用して観察を行っている。ところが,タマネギの種子は店頭などに置いていない時期があること,スーパーなどで販売されているタマネギは根が生えないように処理されているものがあること,タマネギの根は一人一人が観察処理するには数が不足するなどの理由からなかなか実験に用いるのには乗り越えなければならないハードルが多い。そこで,単子葉類の根がよいとの先輩からのアドバイスを受け,万能ネギや九条ネギ(単子葉類ではないが,オオバやサラダ菜,ゴマも試した)などの種子から発芽した根を使って試してみた。


2.体細胞分裂があまり観察できない

 1であげた種子を使えば,容易に発芽させることができ,さらにたくさんの個体を使うことができる。教科書どおり,塩酸で処理する方法も希塩酸を1滴落としたり,60℃に温めた塩酸に浸す方法などを試してみた。その結果,使用する根は,発芽後のネギの種子としては太目の九条ネギがよいこと,時期や気候にもよるが発芽後2,3日で種子から少し緑色の子葉が見え始めたころからがよい感じであった。しかしながら,体細胞分裂中の細胞が意外と少なかったり,根の先端が塩酸処理によりやわらかく,くずれやすかったり,いつの間にか無くなっているなどの課題が生じた。大人でこれである。生徒が観察を行うとなると,体細胞分裂を観察できる生徒はかなり少なくなる事が予想された。


3.生徒の実態

 体細胞分裂中の細胞を見つけるには,かなりの根気が必要である。はじめは,「我こそは」と意気込むがそのうち見つからない時間が続くと集中力が途切れ始める。見つけることができない原因としては,

1 見えているのに見つからない(気づかない)
2 細胞分裂が盛んに行われている部分がわかっていない
3 見つける力がつくまでに時間がかかる
4 2の方法で行った場合に核がつぶれて伸びたような状態になったものを染色体と勘違いしてしまう

などのことが,実際の授業の様子から見られる。


4.実験方法の改善

 2,3で生じた課題をいかに解決するかが,テーマに掲げた目標の達成にかかってくる。3の12は事前の授業でかなり解決できる。観察を行う前にしっかりと,体細胞分裂が盛んに行われている部分やその部分の細胞の大きさ,観察することを念頭において体細胞分裂でどのような細胞がみられるかを学習しておく。実験方法については,いくつかの文献やインターネットで情報を検索し,それらの資料を基に,自分の目の前にいる生徒のことを考え,自分なりにアレンジを加えて観察を行ってみた。

(準備)
観察5日ほど前から,毎日種まきを行う。(当日にコンディションのよいものを選んで使用するため)
種まきは,バットなどにキッチンタオルでを敷き,種が少し浸るぐらいの水をいれ種をまく。(ろ紙でもよいが大きいものは準備がちょっと面倒なので,キッチンタオルがおすすめです)それをなるべく光が当たらないようにする(発芽促進のため)。
1mol/l塩酸を酢酸オルセインを1:9の割合で混合して,解離・染色液をつくる。

(実験方法)
1 解離・染色液をビーカーにとり,15分間発芽した種子ごと浸す
2 種子をさっと水に浸し,塩酸をすすぐ。(このとき,根の先端部分だけが赤く染色されており,生徒たちは驚く)
3 使用する種子ごとスライドガラスの上に置き,カミソリで赤く染まった根の先端と染色されない部分を少し残して切りはなす
4 染色されている部分をふくんでいるほうを残し,あとは取り去る。
5 4に酢酸オルセインを1,2滴落とし,3分間2次染色を行う。(1次染色では染色が弱いため)
6 カバーガラスをかぶせ,その上にろ紙を置き,上から親指で押しつぶす。
7 顕微鏡で観察し記録する。

 さらに,2時限の観察時間を設ける事で,体細胞分裂中の細胞を見つけるコツもつかめ,33が解決できた。



5.生徒の反応善

 方法は難しくないので,生徒は一生懸命取り組んでいた。赤く染まった根の先端を興味深く見ていた。観察の段階に入ると,はじめはなかなか体細胞分裂中の細胞を見つけることができないが,しばらくすると次々と見つけはじめた。その数やさまざまな段階を観察する事ができ,うれしそうな顔で観察している姿が印象的だった。クラス全員とはいかなかったが,80%以上の生徒が自分で作成したプレパラートで観察することができた。また,自分の作成したプレパラートで観察できなかった生徒も,同じグループの生徒のプレパラートを使用して観察することができた。

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