1.はじめに
火をつけたロウソクに集気びんをかぶせると,しばらくして炎が消える。炎が消えた後の空気には酸素が残っているのだろうか?
正解は,「酸素が残っている」のである。
「酸素が残っているのに燃えない」ということに生徒は驚く。そして,この驚きから「何%の酸素があれば燃えるのか?」という「問い」が生まれる。
本実践記録で紹介するのは,メスシリンダーと気体ボンベを用いて「燃えるのに必要な酸素の割合」を体験的に学ぶ手法である。(1時間扱い)
2.生徒の実態
生徒たちは,燃焼に酸素が必要なことや,有機物が燃焼すると二酸化炭素が発生することを知っている。しかし,炎が消えた後の空気に目を向けている生徒は少ないようだ。
これまで生徒に描かせた「燃焼の前後の空気の変化」のモデル図(n=1553)を分類したところ,「酸素が無くなった」と「酸素が残っている」がほぼ同数であった(長戸,2001など)。
3.燃焼後の空気に含まれる酸素の割合(約17%)
燃焼後の空気には約17%の酸素が残っている。つまり,「酸素が約4%減ると,ロウソクの炎は消える」。
小学校の教科書(H19年度版以降)にも同様の測定結果が示されている。しかし,燃焼後の酸素について詳しく学習した生徒は少ないように感じている。
4.授業の実際
(1) |
閉じた集気びんの中でロウソクを燃やすと,しばらくして炎が消える。 |
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ロウソクが消えた後の空気には酸素が残っているのだろうか? |
「なくなっている」・「残っている」・「わからない」などの声があがる。
「酸素がなくなっている」と考えている人は,「酸素が少しでもあれば燃える」と考えているのでしょうか? |
生徒はうなずく。 |
(2) |
メスシリンダー(100ml)に窒素95ml・酸素5mlを入れる。 |
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窒素95%・酸素5%の気体に火のついたロウソクを入れ,燃え続けるのか・消えるのか確かめてみましょう。 |
炎はすぐに消える。「あ,消えた」「なんで」「酸素があっても消えるんだ」といった声があがる。
空気の21%は酸素である。酸素5%で消えるということは,21%〜5%のどこかに「燃え続ける」から「消える」へと変わるポイントがあると考えられます。
「何%の酸素があれば燃えるのか?」を調べる実験方法を考えましょう。 |
「できるだけ効率よく,調べられる方法を考えるように」と指示する。生徒は,「21%と5%の中間である13%で燃えるかどうかについて調べる」方法や,「10%,15%,20%のように5%づつ酸素の割合を増やす」方法などを考えた。 |
(3) |
班ごとに準備・実験する。 |
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準備物(各班): |
気体ボンベ(窒素)・(酸素),水槽,メスシリンダー(100ml),ガラス板(又はアルミ板),燃焼さじ,ロウソク,マッチ |
生徒たちは,班ごとに自主的な探究活動を行った。
「燃え続ける」と「消える」の境目は,「16%〜18%」あたりである。1%程度の誤差はあったが,各班とも18%以上だと燃え続けるという結果を得た。 |
5.おわりに
実践は,1年生「身近な気体」の単元の導入として行った。生徒たちは,試行錯誤しながら「空気(酸素)」について調べ,「18%の酸素があれば燃える」ことを発見した。試行錯誤による発見は,生徒の興味を高めることにつながった。
また,「わずか4%の酸素しか燃焼に使われていない」ことに驚いていた生徒も多かった。さらに,燃焼によって発生する二酸化炭素の割合について言及する生徒も存在した。
本実践は,「地球環境が絶妙なバランスの上に成り立っている」ことや,「1%に満たない大気中の二酸化炭素の増加量が地球温暖化の一因となっている」ことなどに目を向けさせるきっかけにもなると考えている。
参考文献:『教科と総合の調和 支援のポイントはこれだ』(拙出,共著),明治図書,2001 |