1.はじめに
地層の学習では,自然の路頭を実際に観察することが堆積岩や地層の広がりなどを学習する上で大変重要な方法だと考えるが,身近に観察に最適な路頭がない場合には,学校事情や教育課程などの諸問題のため現実的には難しい。そこで地層の学習を行うにあたって,たびたび紹介されることもある寒天による地層の不整合モデルを使用し,柱状図の作成などから,地層の広がりなどを学習する計画をたてた。またこの学習を通して,『個の学びを強化する学習形態の工夫』について考えてみた。本文の実践については,以前に実施したものを,再検討したものである。
2.単元
単元『活きている地球』 2章『大地は語る』 4『地層を調べてみよう』
3.教材観
小学5年では『流水のはたらき』について地面を流れる水や川の様子を観察し,流れる水には,土地を浸食したり,石や土などを運搬したり,堆積させたりする働きがあることや雨の降り方によって,流れる水の速さや水の量が変わり,増水により土地の様子が大きく変化する場合があることを学ぶ。
また小学6年では土地やその中に含まれるものを観察し,土地のつくりや土地のでき方を調べ,土地のつくりと変化について学ぶ。
そこで中学1年では小学校での学習を振り返りながら,野外観察などを行い,観察記録を基に,地層のでき方を考察し,重なり方や広がりについての規則性を見いだすとともに,地層とその中の化石を手がかりとして過去の環境と地質年代を推定することが学習の柱となる。
4.指導のねらい
5.単元のねらい
(1) |
柱状図作成という技術の習得。 |
(2) |
作成された柱状図から,寒天による地層の不整合モデルの内部のようすを立体的に想像できる。 |
(3) |
寒天による地層の不整合モデルの内部のようすを想像することにより,自然の地下の地層の広がりを想像できる。 |
6.教材の作成
(1) |
寒天による地層モデル |
水槽に色つきの寒天を数層に分けて固める。水槽のまわりには覆いを施し,内部は見えないようにする。 |
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(2) |
地層の立体モデル |
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7.本時の展開
(1) |
小学校での学習の確認
小学校での学習を振り返りながらワークシート1−1にキーワードを記入 させる。 |
(2) |
本時の実験内容・目的の確認
本時の実験内容・目的について確認し,ワークシート1−2に記入させる。 |
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(3) |
ボーリングポイントの決定
より少ないボーリングポイントで地下の様子を予想するためには,何カ所を調べれば良いのか,自分の考えをワークシート2の右欄に記入し,班での交流でボーリングポ イントの数及び地点の合意を行い,ワークシート2−1に記入する。また ボーリング地点については,住所のように【東西南北・条・丁目】形式で 表示するものとする。 |
(4) |
ボーリング調査
寒天による地層の不整合モデルに,ストローを使いボーリング調査を行う。 |
(5) |
柱状図の作成
ワークシート3−1にボーリング調査の結果を柱状図として表す。 |
(6) |
内部の様子の予想
ワークシート2の右欄に柱状図から予想される寒天による地層の内部の様子を記入し,班での交流を行い,合意した内容をワークシート2−2に記入する。また口頭による発表内容の準備を行う。 |
(7) |
発表会
各班の意見を聞き,自班の結果と比較しながら,内部の不整合の様子に気付き,再調査への意欲を喚起できるよう支援する。 |
(8) |
ボーリング地点の再検討・再ボーリング調査
ボーリング地点の再検討を行い,ワークシート2−3に記入する。また再ボーリング調査を行い,柱状図を作成する。 |
(9) |
地層の立体モデルの作成
柱状図から,地層の立体モデル(注:9.参考資料参照)を作成し,他班への取材をワークシート3−2に記入する。 |
(10) |
全体の合意へ
寒天による地層の不整合モデルの水槽の覆いをはずし,内部のようすを観察する。また,本時の学習についてのまとめを行い,ワークシート1−3に記入させる。また次時への学習課題について確認し,ワークシート1−4に記入する。 |
8.今後の課題
(1) |
学習の流れや個人の意見の移り変わりを十分に反映できるワークシートのレイアウトを考えていきたい。 |
(2) |
小班,全体での交流の際,他を納得させる表現の工夫や,自己の意見との融合は継続的な訓練で培われるものであり,指導計画の中で意欲的に取り入れる必要がある。 |
9.参考資料
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地層の立体モデルについて
本HP授業実践記録の中の2002年4月『新たに開発した自信関係の立体モデル』前大阪府岸和田市立野村中学校 濱塚 博先生の実践を参考にさせて頂きました。 |
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