授業実践記録

1年「身のまわりの生物を観察しよう」〜みんなが操作できる顕微鏡実習をめざして〜
中学校理科教諭
1.はじめに

  春,初々しい新入生が期待に胸をふくらませ中学校生活を始めます。最近,小学校でも理科を専門に教えられる先生も多くなり,また地域でも子ども科学教室などが開かれ,高度な実験・観察を経験している子どもも多くなってきました。そこで今回,中学一年生で行われる顕微鏡観察の実験で自分なりに今までの経験や先輩の先生方から教えていただいた事を参考に改善点・改良点を紹介したいと思います。

2.準備した物

 
1
校庭生物地図作成
 
学校の地図
校庭に自生している植物の写真・数種類を10セット(図1)
 
2
顕微鏡実習
 
プランクトン類
  ゾウリムシ,ミドリムシ,ボルボックス,アオミドロ等
自作スライドガラス(図2)
顕微鏡×20
双眼実体顕微鏡×10
ルーペ×10
 
図1   図2
 
  自作スライドガラスの制作
  準備物 ビニールパッチ,スライドガラス,油性マジック
  作り方
 
1
ビニールパッチに適当な色を油性マジックで塗る。(図3)
 
2
ビニールパッチをスライドガラスに貼る。(図4)
 
図3   図4
 
  自作スライドガラスの利点
 
従来のホールスライドガラスを使用すると,動く微生物などは水平方向だけでなく垂直方向にも移動するので,子どもにとっては視野に入っている間のピントが合いにくい。改良した方は厚みが一定なのでゾウリムシなど比較的大きな生物はほぼ水平方向の移動だけになるので一度ピントを合わせると視野に入っている間はピントが合っていて観察しやすい。(図5)
 
普通のスライドガラスを利用するので安価に制作できる。
 
スライドガラスに貼り付けるシールの色を変えることにより,一度の顕微鏡観察で何種類もの試料を観察しても,どれがどれか間違うことが少なくなる。
 
図5
 
 
  簡単な微生物の飼育法
  ゾウリムシ
 
キリンの生茶※1をミネラルウォーター※2で3倍に薄め,その中へ生米1〜2粒を入れ,軽くふたをのせ※3常温で放置する。気温にもよりますが春の時期なら1〜2週間ですごい数のゾウリムシが発生します。その後,別の容器に生茶を薄めたも のを用意して密集状態を解消させ※4,飼育する。
 
 
  ミドリムシ・ボルボックス
 
ミネラルウォーター(ボルビック※5)に1000倍程度薄くなるようにハイポネックスの原液を加え,微生物をその中へ入れ,ふたを軽く閉め,日の当たる場所に放置する。
 
 
 
※1 ペットボトルで市販されている「お茶」をいろいろ試しましたが,キリンの生茶が一番適しています。
 
※2 水道水を使うと,殺菌消毒に使われている塩素などにより微生物が生きられない事があるので,ここでは市販されているミネラルウォーターを使用する。
 
※3 ゾウリムシは呼吸するので,密栓してしまうと死んでしまう。
 
※4 長期間飼育を考えているならば密度を下げると長期間飼育できる。
 
※5 いろいろなミネラルウォーターを試してみましたが,ボルビックが一番適しています。

3.授業展開例(36人学級を想定→1班9名)

 
事前にルーペ・顕微鏡の使い方,観察の仕方を指導しておく。
 
クラスを4つに分割する。
 
次の学習展開を1時間ずつで各グループで順番にまわる。

ルーペ・生物地図
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
準備物を用意する(ルーペ,校庭図,観察カード,筆記用具)
わからないことがあれば教科書P3〜5を参考にするよう指導する
 
校庭に出て学校生物地図作成
他の先生に様子を見てもらう
 
観察カードを作る
   
教室に戻り,プリント整理し,提出
 
正しいスケッチができているか(技能)

双眼実体顕微鏡の操作・観察
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
準備物を用意する(双眼実体顕微鏡,タンポポ等,観察カード,筆記用具)
わからないことがあれば教科書P3〜10を参考にするよう指導する
 
顕微鏡を用意して観察・スケッチをする
 
顕微鏡を工夫して使っているか(創意工夫・技術)
片づけをし,観察カードを提出する
 
正しいスケッチができているか(技術・表現)

顕微鏡の操作・観察(植物)
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
準備物を用意する(顕微鏡,アオミドロ等,観察カード,筆記用具)
わからないことがあれば教科書P3〜10を参考にするよう指導する
 
顕微鏡を用意して観察・スケッチをする
 
顕微鏡を工夫して使っているか(創意工夫・技術)
片づけをし,観察カードを提出する
 
正しいスケッチができているか(技術・表現)

顕微鏡の操作・観察(動物)
学習内容・学習活動 指導上の留意点 評価の視点
準備物を用意する(顕微鏡,ゾウリムシ等,観察カード,筆記用具)
わからないことがあれば教科書P3〜10を参考にするよう指導する
 
顕微鏡を用意して観察・スケッチをする
 
顕微鏡を工夫して使っているか(創意工夫・技術)
片づけをし,観察カードを提出する
 
正しいスケッチができているか(技術・表現)


4.最後に

 今回の授業展開例は「全ての生徒がそれぞれの実験操作を経験する」事を主眼においたものである。屋外での活動と実験室での活動が同時並行になるので,他の先生の協力が無ければできないこともたしかである。幸い,本校では協力体制が整っているので実施できた。子どもたちは「自分一人で実験・観察ができた」という喜びと達成感を得て,意欲的に理科に取り組む生徒が少しは増えたように感じている。

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