授業実践記録

掲示板を活用した授業実践
広島県東広島市立志和中学校教諭
間處 耕吉
●指導学年  第1学年「活きている地球 1章 大地が火をふく」

1.単元について

単元観
 本小単元である火山活動は,自然現象の中でも特にスケールの大きな活動の1つである。その火山活動にかかわる地下のマグマの存在と,その性質やエネルギーの大きさを学習することは,地球の内部の膨大なエネルギーの存在を理解するとともに,自分たちの生活している地球は単なる石の固まりではなく,内部に膨大なエネルギーをもつ「活きた星」であることを実感させ,自然に対する畏敬の念を育むことも期待できる。

生徒観
 ここ近年の日本では,大きな地震が頻繁に起き,甚大な被害を出すなど,テレビなどのメディアを通じてその映像を目にする機会は増えている。こうした背景から,生徒たちは地球内部の活動に対する興味・関心を,少なからず持っているものと思われる。また,火山活動は,そのスケールとエネルギーの大きさから,生徒に強い印象を与えることができるので,生徒の興味・関心を高め,学習意欲に結びつけやすいものと考えられる。

指導観
 これまで,本単元の学習は,その現象の規模の大きさからビデオを使用した一斉授業による指導が中心であった。本時もビデオを使用するが,各個人の興味・関心に基づいて自ら積極的に観察できるようにパソコンを活用し,自分の操作で自由に閲覧できるようにした。また,校内LANを活用して生徒たちが気づきを自由に書き込み,閲覧できる掲示板をCGIプログラムで作成した。これにより自らの気づきを文章で表現するとともに,他の生徒の意見を見ることでさらに認識を深めるという活動が生徒主体で行える。

2.指導計画

    活きている地球     ハワイが語る地球の不思議(1時間)
1.大地が火をふく(5時間)    本時1,2時間目
2.大地が語る(4時間)
3.大地がゆれる(4時間)
4.大地が変動する(2時間)
3.本時の展開

【本時の目標】
(1) 火山噴火の様子をパソコンを操作して,それぞれにあった進度で観察することで,火山の活動についての興味・関心を高め,本単元の学習意欲を高める。
(2) いろいろな火山の動画を観察し,気づいたことを文章で表現するとともに,他の生徒たちの意見を見ていく過程を通して,いろいろな火山の活動の特徴の相違点に気づかせ,火山の活動の違いがマグマの性質によることを理解させる。

【観点別評価規準】
(興味・関心・意欲・態度)
   火山活動に対する興味・関心をもち,意欲をもって観察する。
(観察の技能・表現)
   ビデオ観察を通して,いろいろな火山の噴火の特徴に気づき,パソコンを使って文章表現できる。
(火山活動についての知識・理解)
   自分の気づきを書くことと同時に他の人の意見を見るという活動を通じて,火山噴火の特徴を知る。

【準備物】
 パソコン教材(ビデオファイル,html・CGIファイル)

【学習の展開】
  学習活動 指導上の留意点(◆「努力を要する」情況の生徒◇「十分満足できる」情況の生徒) 形態
課題把握 【1時間目】
本時の学習内容・目標把握
ビデオを一通り流す
一斉
いろいろな火山の映像を観察して,それぞれの火山の噴火の特徴を知ろう
   
課題解決
ビデオ映像の観察
雲仙普賢岳・キラウェア山
アイスランド・セントヘレンズ山
桜島・大島三原山

個別
気づきや質問を掲示板に記入
はじめは個人の気づきや質問したいことをあれば質問を書き込ませる。
溶岩の流れ方や火山灰の量に注目するよう助言。
入力が難しい生徒には直接指導。
掲示板を読み返すことで,観察のポイントを確認させて,再度ビデオを観察させる。
新たな気づきがあれば,書き込ませる。
まとめ 【2時間目】
気づきを見ながら再度観察
  一斉
火山の様子の違いは,何によって起きているか理解する。
マグマと溶岩について説明
 
マグマの性質とみんなの気づきを見ながらそれぞれの火山を再度観察させる。
火山の噴出のしかたの違いがマグマの性質の違いによることを理解する。
個別
いろいろな火山の噴火のしかたの違いは何故起きるのか。
観察と説明から分かったことを発表する。
一斉
まとめ
生徒の発表した整理し,必要な説明を加えまとめとする。
 
本時の振り返り
本時を振り返り,自己評価を行う。
記入例を示す。
次時の予告
 


◆成果と課題について

 火山の活動の小単元の導入にあたる部分で,生徒の興味・関心をもたせ,意欲・態度を高めることが大切である。しかしながら具体的な実験などは困難なため,ビデオ教材を使った一斉授業が一般的である。ビデオ教材では関心を引きつけることはできても,個人個人が気づいたことを見直したいと思っていても,その要求には対応できず,ビデオを流して説明するだけの指導に終わってしまいがちである。ビデオ教材のそうした欠点を補い,顕微鏡観察のような個別観察ができるようにパソコンの教材を作製した。
 基本的な構成は操作しやすいようにホームページ形式とし,校内LANのイントラネット上で閲覧,操作できるようにしている。代表的な日本や世界の火山の噴火のようすを収めたビデオファイルを個別に分け,パソコン教室40台のパソコンから個別に閲覧,操作ができる。もちろん,各個人の操作で再生するため,止めたいところでとめたり,映像をもどしてみたりすることも自由である。
 これにより単に視聴するだけのビデオ教材が,観察できる材料と同じように扱うことができる。また,観察できるビデオ教材にあわせて,気づきも個別に書き込むことのできる掲示板をCGIプログラムで作製した。これは単なる気づきの記入だけでなく,他の生徒の意見も見ることができるようになるため,自分の気づきと他の人の気づきを比較し,相違点を見つけ,そこから再度観察をして理解を深めていくといった活動ができる。

 この授業は,本単元の導入部分であるため,生徒の火山活動に対する興味・関心を高め,本単元に対する学習意欲を高めることが主な目標である。これについてはビデオの個別観察という方法により十分な効果が得られたと思われる。あわせて,気づいたことを文章で表現するとともに,他の生徒たちの意見を見ていく過程を通して,いろいろな火山の活動の特徴の相違点に気づかせ,火山の活動の違いがマグマの性質によることを理解させるという目標についても,生徒の気づきや自己評価の内容からも効果的であったと思われる。

 課題はいろんな面で時間がかかることである。まず,全ての生徒がしっかりと記述するための時間が必要で,パソコンの操作の慣れていない生徒はどうしても入力に時間がかかる。5年前に始めた当時は1時間でまとめまで行っていたのであるが,こうした個別指導が必要な生徒へ対応するため,ここで紹介した指導案の通り2時間で計画するように変更した。全員が入力できるのを待っていると,時間をもてあそぶ生徒も出てくるため,時間配分や進め方をクラスによって変更する必要もでてくる。入力にかかる時間の個人差をできるだけ小さくするには,授業に入る前の時間に入力の練習を1時間とると効果的であるが,授業時間が余分にかかってしまうことになる。プログラムを作成するための時間も考えると,準備に必要な時間がかなり膨大になってしまうが,生徒からの評判もよく,理解を深めることのできる有意義な取り組みであった。

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