課題研究理科の指導


自ら進んで実験・観察に取り組む態度を養う単元末課題実験
石川県中学校理科教諭
1.はじめに

 本校は,市の研究開発校に指定され,研究主題【『意欲的に学ぶ生徒の育成』〜基礎・基本の定着をめざす授業づくり〜】に取り組んでいる。「教科書の内容すべてが基礎・基本」であるが,理科部会ではその中でも特に,「目的意識を持って,実験・観察などを行い,科学的に調べることができる能力を身につけること」を基礎・基本の重点とした。具体的には,次の4点に取り組んだ。

(1) 目的意識を持つために,導入時に課題を明確にする。

(2) 課題を解決するために,実験・観察の技能を身につけさせる。

(3) 基本的な用語を確実に理解させる。

(4) 科学的に調べる能力をのばすため,課題実験に取り組ませる。

 ここでは,(4)の取り組み(1年生の単元末課題研究)について報告する。

2.指導計画

 課題実験は,各単元の内容を確認したり,学習内容を深化させたりすること,また,科学的思考力,問題解決力を身につけさせることを目標に取り組んだ。配当時間は3時間で,実験と結果のまとめに2時間,発表に1時間を割り振った。「光・音・力」単元の学習指導案を以下に示す。



理 科 学 習 指 導 案

1.小単元名 「光・音・力」課題実験

2.目標    課題実験に興味を持ち,与えられた課題の中から1つを選択して積極的に取り組もうとする。
(観点1)

プリントや教科書をもとに実験の手順を考え,実験結果が予想できるようにする。
(観点2,3,4)

班員と協力して,正確に効率よく実験・観察を行うことができるようにする。
〈基礎・基本〉(観点3)

実験・観察の結果を考察し,報告書にまとめることができるようにする。
〈基礎・基本〉(観点2,3,4)

3.指導にあたって

 (1) 教材観
 単元末のゆとりの時間を使い,課題実験を行う。理科では,教科書に出ている事物・現象をきちんと捉え,基本用語を理解することの他に,「実験・観察を正確に効率よく行うことができること」,「実験・観察の結果を考察し,表現すること」も基礎・基本と捉えている。課題実験でこの2つの力を身につけさせたいと考える。
 課題実験は今回で2回目になる。1回目は,「植物」単元,実施時間は2時間,原則2人(3人も可)でのグループ実験,結果はレポートで提出させた。今回は,グループでの発表がどの程度できるか確かめ,発表する力を伸ばしていきたい。

 (2) 生徒観
 全体的に落ち着いて学習に取り組むことができる。実験・観察にも積極的に取り組もうとする。しかし,なぜそうなるかを考えたり,実験手順を考え結果をレポートにまとめたりする力が弱いように思う。このような力を伸ばすように指導していかなければならない。
 また,今回は2人(または3人)での取り組みのため,グループによって実験手順の把握やレポート作成の場面でかなりの差が生じると考えられる。とまどっている生徒にきめ細かな支援が必要である。

4.指導計画 (総時数:3時間)

 [第1次] 「光・音・力」課題実験 ……2時間

 [第2次] 課題実験結果の発表 ……1時間

5.学習過程
配時学 習 活 動教師の支援(◇)と評価(◎)


課題実験についての話を聞き,学習内容を確認する。

グループに分かれ,課題1〜7の中から実験を選択する。
プリントを配布し,本時の課題を全員に意識させる。







    課題を選択し,実験に取り組もう。    
実験手順を確認し,報告書に記入する。

実験準備をする。

実験を行い,データを記録し,考察する。
机間巡視し,必要に応じてアドバイスをする。

積極的に取り組んでいるか。
〈観察〉(観点1)


実験の手順を考え,表現することができているか。
〈レポート〉(観点2,3)

グループごとに実験器具が正しく準備できたかを確認し,取りかかりの遅れているグループを重点的に支援する。

残り時間を意識し,実験が完了できるように助言する。

実験準備や実験操作が適切であるか。
〈観察〉(観点3)



後始末をする。

実験について話し合い,まとめる。
机間巡視し,必要に応じてアドバイスをする。

積極的に取り組んでいるか。
〈観察〉(観点1)



実物投影装置でプリントを投影し,実験結果を発表する。

他のグループの発表を聞き,交流を行う。
プリントがうまく投影できているかを確認する。

わかりやすく発表できているか。
〈観察〉(観点3)

レポート(実験結果,考察)がうまくまとめられているか。
〈観察〉(観点3)



3.実験プリント

○実験プリントの概要
 ・実験課題は,次の7つの課題から選択
  → いずれも簡単に実験できる課題である。ただし,実験のやり方については詳しく書かずに,プリントの実験の手引きと教科書だけをたよりに,自分たちで考えさせるようにした。

 1. 全身を鏡に映すには

 5. ばねののびとおもりの重さ  
 2. カメラ型凸レンズを作ろう    

 6. 空気の重さを測る
 3. 音の速さを測ろう

 7. 大気圧を体験しよう
 4. 笛を作ってみよう 

 ・グル−プ実験(1グループ2人)
 ・実験報告書は1人ずつ作成
 ・報告書に入れる項目
   1. 実験名 2. 実験方法   3. 用意するもの   4. 実験結果の予想  
   5. 実験結果   6. 考察(感想,反省を含む)
 ・発表会(1グループ2分程度)
  →発表は,作成したA4サイズの報告書を直接,実物投影装置で投影して行った。

〈資料1〉 「光・音・力」単元末課題実験 実験プリント


4.実験結果と今後の課題

 それぞれの課題実験については,簡単な手引きしかなかったが,生徒はお互いに話を交わしながら,いろいろと工夫をして実験を行っていた。机間巡視を行って実験方法のアドバイス,考察する上でのヒントを与えることも大変有効であった。考察もしっかり書けている生徒が多く,科学的に調べる能力がついてきたように思える。
 また,生徒の感想や授業のようすから,この課題実験は,生徒にとって驚きや楽しさのある充実したものであったようである。今回は,教師が示した課題の中からテーマを選んで実験を行った。最初はこのような形態から始めたほうが,取り組みやすいのではないかと考える。
 発表会では,自信を持って大きな声で話す生徒もいたが,発表に慣れていない生徒も多かった。今後もこのような機会を増やして表現力を身につけさせたい。
 最後に,生徒が作成した実験報告書のいくつかを例示しておく(資料2〜4)。

〈資料2〉 「大気圧を体験しよう」実験報告書

 

〈資料3〉 「全身を鏡に映すには」実験報告書

 

〈資料4〉 「笛を作ってみよう」実験報告書

 


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