(1) | 細胞のデジカメ画像づくり
通常の顕微鏡による観察では,対象物のスケッチをして記録を残すが,1時間の授業時間の中ではじっくり時間をかけることができない場合が多い。そこでデジタルカメラを使って接眼レンズを通して直接撮影することにした。デジタルカメラの台数の制約もあって必修理科の授業では実現しにくいが,選択理科の時には2人に1台ぐらいは与えることが可能で,能率的に観察し記録を残すことができた。撮影したデータはコンピュータの画像処理ソフトを利用して整理させた。切り取り,拡大が容易でお気に入りの画像にして残すことができ,生徒には好感をもたせることができた。次の画像が処理例である。
観察材料 | デジカメ元画像 | トリミング処理後 |
ほおの粘膜細胞 |
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ムラサキツユクサの気孔 |
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タンポポのめしべと花粉 |
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(2) | 重力加速度の測定
1分野の「運動とエネルギー」の学習をした後,発展的教材として重力加速度の測定に取り組んだ。力がはたらく運動として教科書にある斜面上の運動の実験をし,あわせて記録タイマーを使って自由落下運動の実験もしている。力の合成・分解が削除されて高校へ移行したので,斜面上の物体にはたらく3つの力を示すことができないが,選択理科の時間ではおおまかに説明し,重力加速度の測定を次の2つの方法で実施した。式の意味には深くふれないようにした。
ア. | ボールの自由落下の落下時間の測定
校舎の2階と3階からボールを落下させ,ストップウォッチで時間を測定し,上式に代入して重力加速度を求めた。
[結果]
1) | 校舎の2階から落とすときの落下時間(=5.20m)
測 定 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 平 均 |
落下時間〔秒〕 | 1.03 | 0.92 | 1.02 | 0.99 |
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2) | 校舎の3階から落とすときの落下時間(=9.18m)
測 定 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 平 均 |
落下時間〔秒〕 | 1.24 | 1.36 | 1.27 | 1.29 |
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1),2)の測定結果の数値を使って重力加速度を求めると,それぞれの値は次のようになる。
1) | |
2) |
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イ. | 単振り子の往復運動の周期測定
[結果] (=1.344m)
回数 | 時間 〔秒〕 | 回数 | 時間〔秒〕 |
0 | 0 | 100 | 23.25 |
10 | 23.05 | 110 | 23.11 |
20 | 23.26 | 120 | 23.13 |
30 | 23.19 | 130 | 23.25 |
40 | 23.32 | 140 | 23.07 |
50 | 23.17 | 150 | 23.18 |
60 | 23.24 | 160 | 23.14 |
70 | 23.12 | 170 | 23.20 |
80 | 23.23 | 180 | 23.14 |
90 | 23.25 | 190 | 23.20 |
平 均 | : | 23.18秒 |
周期 | : | 2.318秒 |
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この測定結果の数値を使って重力加速度を求めると,次のようになる。
単振り子の周期測定は,10往復ごとに約23秒というゆったりした時間で誤差が少なく,かなり正確なの値が得られた。ボールの落下時間の測定のほうは,2階,3階からだと1秒程度の時間で着地するので,ボールを落とす生徒,ストップウォッチを押す生徒のタイミングが微妙な誤差を生んだようで,やや誤差の大きい結果となった。いずれの方法でも時間測定という簡単な方法でが測定できることがわかり,力がはたらく運動について理解を深めることができたように感じている。
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(3) | 課題研究レポート
生徒の探求心を養い,冒頭に述べたプロセスを体験させるために,実験方法から器具の準備,データの収集,整理,まとめまでを2〜3人のグループで行わせた。観察・実験のヒントとなるいくつかの例示を提供したが,生徒は個性的な発想で興味のある題材を決めて主体的にいきいきと実験に取り組んだ。ここに平成13年度に実施した課題研究のレポート集から抜粋したものを提示する。
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(4) | 今年度の選択理科の講座内容の紹介
今年度は次のような内容で「体験し,つくり,理解を深めよう!」を主題として,生徒の主体性や探究心を伸ばせるように工夫しながら,理科を楽しみ,興味・関心を高める講座にしようと計画している。
1 身のまわりの物質を理科的な観点で分析しよう。
(1) | ほかほかカイロの粉は何でできているか。また,温かくなるのはどんな原理を使っているか。 |
(2) | 紙おむつは何でできているか。また,水を吸収するのはどうしてだろうか。 |
(3) | お菓子袋などに入っている乾燥剤や脱酸素剤は何でできているか。また,どういう化学変化を使っているのだろうか。 |
2 いろいろなモデルをつくって,理解を深めよう。
(1) | 化石のレプリカ |
(2) | 地層・断層モデル |
(3) | 葉脈標本 |
(4) | 原子・分子模型,結晶模型 |
(5) | 雪の結晶づくり |
(6) | 急冷による火山岩の結晶モデル |
(7) | 前線モデル |
(8) | 雲の写真と垂直分布モデル |
(9) | 小球による大気圧モデル |
(10) | 簡易モーターづくり(フレミング左手の法則) |
など
3 いろいろなものを作って,理科の学習に役立てよう。
(1) | 野菜とオキシドールで酸素づくり |
(2) | 金属の合金で低融点の新金属づくり |
(3) | 光のあたり方の違いによる光合成量の比較 |
(4) | サツマイモを育てて,デンプンの研究 |
(5) | 空気の振動とドレミの音階づくり |
(6) | 果物の電池で回るモーター |
など
4 自分の興味・関心から見つけた不思議を課題として解決しよう。
※グループで実験方法,観察方法を計画し,まとめ,整理,発表まで行おう。
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