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地震により大きな被害を出した「兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)」は,発生から早7年を経過したが,その時の恐怖と驚きの体験は今だ記憶に新しい。 最大の変位を示した平林地区の野島断層 | 大阪南部に住んでいる筆者の近辺でも屋根瓦がずり落ちたり壁に亀裂が入り,食器が散乱して割れるなどの被害があった。ところが昨年度本校(岸和田市)で1年生を対象に地震の授業をしたときは,生徒が小学1年生のときの体験であり,大震災の記憶が薄れかけてきていた。当時のビデオ映像や地震関係の書籍を見せたり,わたし自身が撮った写真を見せて,体験を思い起こさせるようにした。その中で,最大変位の平林地区の断層地形モデルを使った授業を行ったので紹介する。
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○ | 3年前,大阪の地学教師グループで毎年行っている研究発表会で何か話せる内容がないかと模索していたとき,大阪教育センターの教育資料「兵庫県南部地震」のあるページが目にとまった。そこには,野島断層が通る北淡町平林地区で,震災の起こる5年も前に発行された地質図「明石」に活断層の存在が明らかにされており,約2万年前の段丘面の右ずれから平均変位速度が,鉛直方向に約0.5m/千年,右ずれ方向に約1m/千年と見積もられていたことが書かれてあった。地震後のトレンチ調査で,野島断層は約2千年前に動いたことも明らかになり,今回の2mに達するずれの量が,以前に見積もられていた平均変位速度と調和的なことが分かった。この事実は教材として大変興味深いことなので,「野島断層の段丘面のずれ」の図を直接立体化してみたら,生徒に提示して説明しやすいのではないかと思い立った。 |
○ | 当初は,そのページに載っていた地図を拡大コピーし,2枚の厚紙に貼り付けて制作した。今回は,タック面のついた5mm厚の発泡ポリスチレンボードが見つかったので,5.4 mmが等高線間隔の10m に一致するように図を拡大し(およそB4強),実際の起伏に近い立体化を目指した。以下に紹介するので,制作過程を写真で追って見ていただきたい。
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1) 2枚の地図を貼りつけ |
2) 1つおきに切り取る |
3) 交互に接着していく |
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4) ほぼ立体が完成 |
5) 断層と周辺を補強する |
6) 着色し、切り離す |
◆ | 授業での活用:通常の授業では制作作業はできないので,段丘面のずれが描かれた地図と,変位量に関するデーターを空欄にしたものと,逆断層や横ずれ断層の図をプリントして配布した。時間に余裕があるときは,段丘面の着色作業や厚紙に貼って断層位置で切り離して横ずれを実感させた。段丘面のずれが描かれた地図をそのまま立体化した地形モデルを提示して興味を引き,段丘崖の存在や南東側(山側)の上昇,段丘面の右横ずれ,河川の断層による屈曲,などを観察させるようにした。活断層でずれていった方向をモデルを使って確認させ,2万年で20m右へずれ10m上昇したことから千年あたりの変位量を計算させた。そして,教科書の写真(p.108)から,今回の地震の変位が2千年間のひずみの蓄積の結果動いたことと調和的であることを実感させた。
※ | 今回の地震で海側と山側の地盤がどのように移動したのか,モデルを実際にを実際に動かして説明する。 (現れた地震断層の計測資料と写真を使って。) |
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